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実務者が解説する、社員研修・社員教育における「投資対効果測定」「学習内容定着」「能力開発体系構築」の方法


はじめに -3つの課題-

 本稿が想定する主たる対象読者は、企業内研修の企画・立案・運営の責任者および担当者の方です。内容は、タイトルに掲げた通り、企業内で実施する様々な研修教育プログラムの投資対効果の測定方法、実施した研修教育の学習内容をいかに社員に定着させるのか、そして自社の実勢にあわせた能力開発体系の構築方法について、社員研修・社員教育の実務者の立場から方法を解説するものです。

 「投資対効果」「学習内容定着」「体系構築」―――状況にもよりますが、これらの言葉を社内の利害関係者から聞く度(あるいは聞かされる度)、人事部門の、特に社内の能力開発施策について日々健闘されておられるビジネスパーソンの皆様の中には、少なからず複雑な思いを抱かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?内心、次のようなことを反芻したことはありませんか?

 「人への投資は設備・機械と異なり、投資対効果なんてものは検収不能だし、絶対測定できないな。予算の範囲で、毎年決まったプログラムを実行するに尽きるでしょう。また研修というものはその場限りで、結局、しばらくすると忘れてしまう類のものでしょう。時々、時勢に合わせた新しいテーマの研修をやって、社員を刺激するようなことも必要かもしれませんが。」

 筆者は、能力開発という仕事は、経営者・経営層が中長期的に取り組むべき、経営戦略上、大変価値のある「経営の仕事」と考えます。しかし残念ながら中には、「人的資本」という概念が喧伝される今日においてなお、短期的な事業戦略執行のための人的補填施策(しかしこれもいよいよ、隘路に陥りつつある)のみに終始し、経営者・経営層の大局的な関与が希薄である場合があります。

 筆者は経営管理の観点から、上述の問題に対して、次の3つの課題があると考えます。

課題1. 実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきなのか不明である。

課題2. 社員に対して投資実行した研修教育プログラムの学習内容を、果たしてどのように定着させるのか不明である。

課題3. そもそも、自社の能力開発施策(要注意:形式的な階層別の能力開発体系の構築と、その惰性的ループの循環を決してゴールとしない!)への投資計画および実行を、どのように考えるべきか不明である。

 
3つの課題を分類すると、

*課題1. 課題2. は、既に起こっている、または起こった自社の能力開発の
 問題に対する課題

*課題3. は、現在進行系かつ未来に発生する自社の能力開発の
 問題に対する課題

と捉え直すこともできるかと思います。
 
まず課題1. 課題2.の対処法について解説し、その後、課題3. の対処法について順に述べることとします。
 
 本稿の内容が、真摯なビジネスパーソン各位の、日々の実務の一助となれば幸いです。

注)本稿では、社員研修や社員教育の文脈で、ビジネスパーソンの能力開発を意味して、実務上しばしば混交して活用される「人材開発」「人材(人財)育成」という用語は、特段の事情がない場合用いません。「能力開発」という言葉に統一して述べるものとします。また「能力」という言葉には、通常様々な意味・意図が包含されますが、本稿では、「ビジネスパーソンが、自身の後天的な努力によってその強化・向上・洗練が可能である、ビジネスシーンにおいて必要となる、または必要とされる一連の力」についてのみ、「能力」という用語で表すものとします。


第一章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法の全体像:研修教育プログラムの投資対効果測定方法の計算式

                               投資対効果測定方法の計算式

 全体像を、上記の計算式のとおり掲示します。この数式を活用する意義は、自社の社員を1時間拘束するだけの価値がその研修教育プログラムにあるのか、という観点から、投資対効果を測定することにあります。

*解説:
 計算式の、左項から解説を行います。はじめに分子の「投入研修費用」とは、ある一つの研修教育プログラムを実施する際に生じる費用のことです。具体的には、研修教育事業をサービスとして提供する、社外の法人・組織・教育機関等(以下総称して、「コンテンツベンダー」と呼称します。またコンテンツベンダーが提供する一連の研修教育プログラムを、「コンテンツ」と呼称します)に支払う対価のことです。主として講師手配料金や、コンテンツの企画および提供料金が該当する、という考え方で構いません。
 
「投入研修費用」に、以下の項目の費用を含めるべきかどうかについて回答します。
・コンテンツベンダーが派遣する講師や他アシスタント等の旅費交通費
  ⇒全て含める
・研修教育プログラムを実施する会場手配料金(自社以外の場所で実施する 
 場合)
  ⇒全て含める
・上記以外の経費(例:接待交際費)
  ⇒含めない
 
 判断基準として、コンテンツそのものの本質と、コンテンツを受講する者に与える効果との直接的関連性が認められるのか否か、という視点で判断を行います。付言しますと、例えば講師を接待・慰労する費用は、講師を歓待することで、講師によるコンテンツ提供の際に何らかの間接的効果を期待することは可能かもしれませんが、コンテンツを受講する者との直接的関連性という点では、曖昧です。

 事例1. 社外コンテンツベンダーを利用した場合:
コンテンツベンダーから入手した見積書や請求書に、例えば次のような摘要・費用記載があるとします。
・研修費用:330,000円
・講師交通費用:11,000円
この場合、「投入研修費用」は、計341,000円(税込み)となります。

 続いて、分子の「投入研修費用(または社内講師の1時間あたり人件費×研修時間(h))」について解説します。これはコンテンツベンダーを活用せず、自社所属の社員等が講師を務める形式の、社内完結型の社員研修・社員教育の場合に参照します。計算手順について、説明します。

 事例2. 社内講師を活用した場合:
例えば月収300,000円の社員が、1名で、計3時間の研修講師を務めるものとします。またこの社員は、一日の勤務時間が8時間、一週間の勤務日数は5日間(1か月は4週間とします)勤務する社員です。
 この場合、「社内講師の1時間あたり人件費」の算出方法ですが、300,000円÷160h/1か月=1,875円となります。続いて、計3時間の「研修時間(h)」を担当したので、1,875円×3時間=5,625円となり、すなわち「投入研修費用(または社内講師の1時間あたり人件費×研修時間(h))」は、5,625円として扱います。

 分子の最後の項目の「研修目的達成率」について、説明します。詳しい算出方法については後程解説しますが、所定の方法を用いて、研修に参加した者の研修教育プログラム受講に関連して発揮したパフォーマンスを、100点満点でスケールします。さらに「研修目的」を達成した参加者を、100点満点中60点以上を獲得した者、と定義します。そして、「研修参加者」の人数が計20名、60点以上を獲得した者の人数が18名であった場合、「研修目的達成率」は、18÷20=0.9 (90%)となります。

 既出の事例1. と2. について、「研修目的達成率」を適用すると、分子の数値は最終的に、

事例1. 社外コンテンツベンダーを利用した場合:

341,000円×0.9=306,900円

となります。

事例2. 社内講師を活用した場合:

5,625円×0.9=5,062.5円、切り捨て処理をし、5,062円

となります。

 なお、1.「研修教育プログラムの全ての学習プロセスに参加した人」と、2.「当初研修教育プログラムに参加する意向を表明していたものの、業務都合や体調不良等で参加できなかった人」は、区別して扱います。さらに、
3.「幾つかの日程で構成される研修教育プログラムのうち、ある日程の学習プロセスのみに参加をし、残りの日程の学習プロセスへの参加が叶わなかった人」がいる場合があります。

 上記を整理すると、
1.「研修教育プログラムの全ての学習プロセスに参加した人」=「研修参加 
    者」

2.「当初研修教育プログラムに参加する意向を表明していたものの、業務都
       合や体調不良等で全ての学習プロセスに参加できなかった人」=「研修
  欠席者」

3.「幾つかの日程で構成される研修教育プログラムのうち、ある日程の学習
       プロセスのみに参加をし、残りの日程の学習プロセスへの参加が叶わな
       かった人」=「研修受講者」

 となります。

 不等号で表すと、「研修参加者」>「研修受講者」>「研修欠席者」、という関係性になります。

 ちなみに、3.「幾つかの日程で構成される研修教育プログラムのうち、ある日程の学習プロセスのみに参加をし、残りの日程の学習プロセスへの参加が叶わなかった人」をなぜ「研修受講者」と呼称するのかという理由ですが、先述した「研修目的達成率」を算出する仕組みとの関連性があります。
 研修実施の前後に、「事前課題」「事後課題」という課題を、研修参加予定者全員に課すのですが、意欲的な社員であった場合、「事前課題」を作成し提出し終えている、という場合があります。この場合、当該社員の「事前課題」についても、他の「研修参加者」「事前課題」と等しく、所定の方法で評価し点数を与えることになりますが、このような社員を一律に「研修欠席者」と同様に扱うことは平等ではありません。それゆえ、「研修受講者」「研修欠席者」というように、分けて扱います。

 分母の検討を行います。「研修時間(h)」は、事例2. で挙げた3時間とします。また「研修参加者数」も事例2. で挙げた20名とします。計算すると、3時間×20名=60時間となります。
 分母が表す意味は、研修教育プログラムが拘束したトータル時間です。これに対して、分子の表す意味は、「研修受講者」に投資した結果、最終的に投資した意義があった金額、になります。

 では最後に、分子÷分母の計算を実行します。

事例1. 社外コンテンツベンダーを利用した場合:

306,900円÷60=5,115円

となります。

事例2. 社内講師を活用した場合:

5062円÷60=84.3円、切り捨て処理をし、84円

となります。

 これらの計算結果と、右項の「自社所属社員の平均年収ベース1時間あたり人件費」を比較します。

 「自社所属社員の平均年収ベース1時間あたり人件費」の計算方法について解説します。(社員の勤務時間等の条件については、事例2. の事例を踏襲します)例えば自社所属社員の平均年収が600万円の場合、600万円÷(8時間(一日の勤務時間)×5日(一週間の勤務日)×4週間(1か月)×12か月)=600万円÷1,920時間=3,125円となります。

 左項右項の場合、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値があったものとして測定します。

 左項<右項の場合、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値がなかったものとして測定します。

事例1. と事例2. の計算結果について整理をすると、

事例1. 社外コンテンツベンダーを利用した場合:

5,115円>3,125円となり、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値があったものとして扱います。

事例2. 社内講師を活用した場合:

 84円<3,125円となり、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値がなかったものとして扱います。

 以上の結果から、次期・次年度に向けて、実施した研修教育プログラムの見直しとブラッシュアップを検討しますが、上述の二つの事例から、どのようなことが考察できるでしょうか?

 事例1. については、「研修参加者」の1時間あたりの人件費を基準に考えると、対約160%以上の価値が、投資・実行した研修教育プログラムにあったことが分かります。ただし、対200%以上までには至っておりませんので、分子の「研修目的達成率」を上げる施策を考えたり、分母の「研修参加者数」を抑制する(=一人ひとりに、より密度の濃い研修教育プログラムを届けるという観点)施策を考えたり、などが検討事項として挙げられます。

 事例2. については、「研修参加者」の1時間あたりの人件費を基準に考えると、対約3%以下の価値しか、投資・実行した研修教育プログラムになかったことが分かります。
 要因は何でしょうか?分子の「研修目的達成率」は事例1. と同じであったことを考えると、残念ながら社内講師の、講師としての経験・力量不足の可能性、さらにそれと連動する形で、「研修時間(h)」が冗長であった可能性(※3時間の研修教育プログラムの展開は、経験豊富なプロ講師でも大変!) があります。さらに分母の「研修参加者数」が多すぎたことで、研修教育プログラムの価値が希薄化したこと、などが要因として挙げることができます。

 事例2. の見直しとブラッシュアップのための計算シミュレーションを行います。下記のとおり、研修教育プログラム設計の際の、一部の条件を変更します。

 *社内講師:月収300,000円の社員 ⇒ 月収600,000円の先輩社員
 *研修時間(h):計3時間 ⇒ 計1時間
 *研修参加者数:計20名 ⇒ 計1名
 *研修目的達成率:0.9 ⇒ 0.95

他の条件に変更はないものとして計算すると、

 「社内講師の1時間あたり人件費」は600,000円÷160h/1か月=3,750円となります。計1時間の「研修時間(h)」を担当したので、3,750円×1時間=3,750円となり、「投入研修費用(または社内講師の1時間あたり人件費×研修時間(h))」は、3,750円として扱います。「研修目的達成率」は0.95です。3,750円×0.95=3,562.5円、切り捨て処理をし、3,562円、これが分子になります。

 分母の検討を行います。「研修時間(h)」は、1時間とします。また「研修参加者数」は1名とします。計算すると、1時間×1名=1時間となります。

 分子÷分母の計算を実行します。3,562÷1=3,562円となります。計算結果について整理すると、3,562円>3,125円となり、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値があったものとして扱うことが可能になります。

 あくまで筆者の見解になりますが、社内講師を活用した研修教育プログラムの実施にあたっては、十分な事前検討が必要です。ライブ型の研修は特に、オンサイト・オフサイトの別を問わず、「投資対効果」だけでなく、「学習内容定着」という観点からも、慎重に企画を行う必要があるものと認識します。
 
 さて次章より、これまで解説してきた研修教育プログラムの投資対効果測定方法の計算式を適用する上で、理解しておくべき各ステップについて、解説します。


第二章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法 Step1. 研修教育プログラムの研修目的を決める

 実施する研修教育プログラムの、「研修目的」を定めます。「研修目的」を定める意義は、第一に、研修教育プログラムを受講することで、会社・組織が受講者に期待することを明確にすることにあります。第二に、受講者にとっては、自分がなぜこの研修教育プログラムに参加するのか、本人自身の学習ニーズとの照合を、事前に行ってもらう意義もあります。では「研修目的」は、どのように打ち出すとよいでしょうか?
 
 「研修目的」の表現方法として、三つの方向性があります。
 第一に、プログラムの内容が、概念的または抽象的理解を要請するもので構成され、受講者間の討議やワークを軸にした研修教育プログラムの場合です。例えば、「マネジメント」「リーダーシップ」などのテーマが該当します。
 第二に、プログラムの内容が、何らかの知識習得を主題とするもので構成され、講師の説明による座学形式を軸とした研修教育プログラムの場合です。例えば、「財務・会計」「法務」などのテーマが該当します。
 第三に、プログラムの内容が、日々の業務効率の向上や、ビジネスマナーの洗練を要請するもので構成され、講師による実演と、それに基づく受講者の演習を軸とした研修教育プログラムの場合です。例えば、「スプレッドシート操作の時短術」「対顧客電話応対品質向上」などのテーマが該当します。
 
 第一に掲げた類型の研修教育プログラムの場合は、次のように「研修目的」を定めます。
ケース)対象者:課長職に就任して4年未満の社員
    テーマ:基礎的なマネジメント力の強化を企図する
⇒「課長職に求められるマネジメント力発揮の方法について理解を深める」
⇒「新任課長職に求められるマネジメントという行為について理解を深める」など
 
 第二に掲げた類型の研修教育プログラムの場合は、次のように「研修目的」を定めます。
ケース)対象者:課長職に就任して4年未満の社員
    テーマ:財務三表に関する基礎理解力の強化を企図する
⇒「課長職に求められる財務三表の見方について理解を深める」
⇒「新任課長職として財務三表の仕組みと関連性について理解を深める」など
 
 第三に掲げた類型の研修教育プログラムの場合は、次のように「研修目的」を定めます。
ケース)対象者:新卒で入社後、2年目以上4年目未満の一般社員
    テーマ:顧客との電話応対時の適切なコミュニケーション力の強化  
        を企図する
⇒「実務者が実践すべき電話応対の方法について理解を深める」
⇒「実務者として電話による顧客対応の際に留意すべき事柄について理解を深める」など

 上記に掲げた「研修目的」の文言中、特に着目していただきたい点は、「○○について理解を深める」という表現を採用していることです。このように表現する意図は、「研修目的達成率」を計算する過程で、「研修目的」を達成するための「研修目標」とは、所定の方法によって、100点満点で受講者の研修成果をスケールした結果、60点以上の点数を獲得すること、という仕組みにしているためです。
 
 一方、企画・立案する研修教育プログラムの性質に応じて、より具体的に、当該プログラムの「研修目的」を設定することも可能です。例えば、「対顧客電話応対品質向上」がテーマの研修教育プログラムであれば、「本研修を受講することで、顧客との電話応対時の適切なコミュニケーションが可能になる」などとします。ただしこのように、「研修目的」を掲示する場合、受講者への負荷がかなり大きくなることは、自明の理です。この場合、当該受講者の所属職場(特に上司・上長!)からの十分なフォロー・支援が必須になりますし、受講者が自身で取り組む「事前課題」「事後課題」にかける労力も、それ相応のものになるでしょう。
 
 あくまで社内の能力開発ニーズに基づく「研修目的」の設定を重視し、過度に受講者に負荷がかかる「研修目的」の策定を行わないようにしましょう。


第三章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法 Step2. 研修目的の達成水準を、所定の基準で周知する

 Step1. で定めた研修教育プログラムの「研修目的」の達成水準を、次のとおり定めます。

*◎80点以上…研修目的を十分に達成できた。
*○70点以上80点未満…研修目的を十分に達成できた。
*△60点以上70点未満…研修目的をなんとか達成できた。
*☓60点未満…研修目的を達成したとは言いがたい。

 そして「研修目標」は、「上記の評価方法に基づき、60点以上の成果を収める」として一律に定め、社内展開を行うようにします。
 ここで、なぜ「研修目的」の達成水準を、60点以上と60点未満の二つの区分だけでなく、計4つの区分に分けているのかについて説明します。この意図は、課題2. 『社員に対して投資実行した研修教育プログラムの学習内容を、果たしてどのように定着させるべきか』の対処法と関連します。

 人口に膾炙するH. エビングハウスの理論にあるように、私たち人は、記憶したはずの物事の内容を、次第に忘却するものです。そこで筆者は、ある物事の内容の記憶が完了した後、一定期間経過後のタイミングで、改めて当該内容の再記憶化の作業を行う必要があると考えます。それも一度きりの再記憶化ではなく、複数回の再記憶化の作業を実行します。
 ある研修教育プログラムを受講した後、概ね6か月から8か月間の期間内で、計8回に分けて再記憶化の作業である「学習内容定着」支援を実施します。詳しくは後述しますが、

*☓60点未満の点数しか獲得できなかった人:プログラム受講後2日後
*△60点以上70点未満の人:プログラム受講後3日後
*○70点以上80点未満の人:プログラム受講後4日後
*◎80点以上の人:プログラム受講後5日後

 のタイミングでそれぞれ、第一回目の再記憶化の作業を実施します。4つの点数区分に分けている意図は、点数をどれだけ獲得できたのか、という「研修目的」の達成水準の差違に応じて、各「研修参加者」が、今般実施の研修教育プログラムの内容について、どれだけ初期の記憶定着を行うことができたのか、そして獲得点数の低い区分の人から、早々に再記憶化の「学習内容定着」支援を行っていく必要があるものとして、設計してあります。

 まとめると、「研修参加者」全員が、「研修目的」の達成水準に差違(=研修教育プログラムの学習内容に対する初期の記憶定着の差違)があれど、再記憶化の作業は必ず必要である、ということです。

 念のため、絶対に混同してはいけないポイントは、研修教育プログラムの恒常的洗練・峻別のための投資対効果測定を行う上で、「研修目的」達成者(=「研修目標」である60点以上の成果を収めることができた人)と「研修目的」未達成者(=「研修目標」である60点以上の成果を収めることができなかった人)を分けて考える必要がありますが、「研修目的」未達成者(=「研修目標」である60点以上の成果を収めることができなかった人)に対する再記憶化の「学習内容定着」支援は、「研修目的」達成者(=「研修目標」である60点以上の成果を収めることができた人)と同様に実施する、ということです。


第四章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法 Step3. 参加人数を決める

 Step2. で、「研修目的」の達成水準、ならびに「研修目標」は「60点以上の成果を収める」こととする旨、説明しました。続いて、研修教育プログラムに参加する「研修参加者数」を確定させていきます。社内募集の方法は、組織によって様々な手段が採用可能かと思いますが、社内で何らかのコミュニケーションツールを使って、一斉に案内を行うことが通常かと考えます。
 
 ちなみに筆者は、組織が誘導する要素が介在することは多少あったとしても、社員の自発的な自由選択制による研修教育プログラムへの参加という方法が、一番望ましい形式であると考えます。そこで、社内募集、という方法に言及していますが、一方研修教育プログラムの性質によっては、事務局であらかじめ「研修参加者」を決め打ちして実行する、ということも当然受容されるものと考えます。

 さて「研修参加者数」については、先述の通り、投資対効果測定を計算する上で、重要な指標の一つとなります。「投入研修費用」に比して、あまりにも過度な「研修参加者数」を予定すると、最終の投資対効果測定の際に、投資対効果がなかった研修教育プログラムとして判断せざるを得なくなることが多いです。(=一人ひとりに、より密度の濃い研修教育プログラムを届けるという観点)

 社外コンテンツベンダーを活用する場合、または社内講師を活用する場合のいずれの研修教育プログラム企画・立案の場合においても、「研修参加者数」が何人になるのか、事前に十分な計算シミュレーションを行った上で、社内募集を行うようにします。

 上記の事情に鑑み、「研修参加者」を募集する際は、企画・立案する研修教育プログラムの、

 *対象者・対象層
 *学習内容
 *外部コンテンツベンダーを活用する場合は、その名称および担当講師名
 *社内講師を活用する場合は、
   社内講師の所属および氏名(可能であれば明示する)
 *研修教育プログラムの実施予定日
 *その他連絡事項

 を必ず明確にして、社内展開を行うようにします。

 なお実務的な観点に立つと、Step2. で解説をしました、

 *「研修目的」
 *「研修目的」の達成水準
 *「研修目標」

 の各項目についても、このタイミングで同時に社内通知をすることで、研修教育プログラムへの参加を検討する社内関係者を混乱させるリスクが減ります。

 さらに「研修目標」は「60点以上の成果を収める」ことでしたが、あわせて「評価方法」についても記載して、案内を行うようにします。「評価方法」は、大きく分類すると、

 *1. 研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中の
       パフォーマンス
 *2. 研修事前課題・研修事後課題の内容等
 *3. 研修教育プログラム終了後に実施する研修参加者間の匿名性
               360度相互評価
 *4. 研修教育プログラム終了後に実施するアンケート結果
      (研修参加者自身による理解の度合いの自己評価)

 の計4つからなります。

 これに対して、各「評価方法」の点数割合を、全部で100点になるように、評価配点を次のとおり併記します。

 *1. 研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中の
       パフォーマンス:40点
 *2. 研修事前課題・研修事後課題の内容等:40点
 *3. 研修教育プログラム終了後に実施する研修参加者間の匿名性
               360度相互評価:10点
 *4. 研修教育プログラム終了後に実施するアンケート結果
      (研修参加者自身による理解の度合いの自己評価):10点

 上記のとおり明示することで、研修参加を検討する上で、自身が取り組むべきこと、自身への負荷がどれだけかかるのかについて、判断材料として参照可能になります。また公明正大な「評価方法」を研修教育プログラムの実施に先立ち前もって掲示することで、事務局との信頼関係構築にも寄与します。

 次章では、各「評価方法」について解説します。


第五章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法 Step4. 研修参加者の研修目的達成点を測定する

 「研修参加者」が最終的に獲得した点数を、「研修目的達成点」とします。「研修目的達成点」は100点が満点です。以下、計4つの「評価方法」を説明し、「研修目的達成点」の算出方法を理解します。

 第一に、「評価方法」の一つ目の項目である、

 *1. 研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中の
     パフォーマンス:40点

 について説明します。この「評価方法」は、次の3つの小項目から構成されます。

  *1-1. 研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中の
      パフォーマンス(発言内容):20点

  *1-2. 研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中の
      パフォーマンス(発言回数):10点

  *1-3. 研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中の
      パフォーマンス(受講態度):10点

*1-1. 発言内容について

 「研修参加者」の発言内容は、加点方式で評価を行います。加点は一人につき最大20点までとし、加点要領は、次のとおりです。

 *他の研修参加者の内容理解を促進する内容:+7点/回
 *他の研修参加者に新しい知見・知識を与える内容:+5点/回
 *上記以外の感想・意見:+3点/回

 研修講師は各「研修参加者」の発言内容を上記の要領に従って、加点処理をします。

*1-2. 発言回数について

 「研修参加者」の発言回数は、発言回数に応じて評価を行います。講師の指名、「研修参加者」の自主的な発言による回数の別を問いません。評価要領は、次のとおりです。

 *8回以上:+10点
 *6-7回:+8点
 *4-5回:+6点
 *2-3回:+4点
 *1回:+2点
 *0回:0点

 
 研修講師は各「研修参加者」の発言回数を上記の要領に従って、評価をします。

*1-3. 受講態度について

 「研修参加者」の受講態度は、減点方式で評価を行います。減点要領は、次のとおりです。

 *研修中に居眠りをした:-4点/回
 *研修中に研修講師ならびに他の研修参加者に
   反協力的な態度を示した:-4点/回
 *遅刻(どれくらいの時間、遅刻したのかを問わない):-2点
 *早退(どれくらいの時間経過後に早退したのかを問わない):-2点
 
 研修講師は各「研修参加者」の受講態度を上記の要領に従って、最大-10点の減点処理をします。特段減点要素がなければ、10点を付与します。

 第二に、「評価方法」の二つ目の項目である、

 *2. 研修事前課題・研修事後課題の内容等:40点

 について説明します。この「評価方法」は、次の6つの小項目から構成されます。

  *2-1. 研修事前課題を提出期限内に講師または事務局まで
                    提出したか:5点

  *2-2. 研修事前課題の文字数・分量:5点

  *2-3. 研修事前課題の内容:10点

  *2-4. 研修事後課題を提出期限内に講師または事務局まで
                    提出したか:5点

  *2-5. 研修事後課題の文字数・分量:5点

  *2-6. 研修事後課題の内容:10点

*解説:
 「事前課題」「事後課題」の意義

 研修教育プログラム実施の前後に「事前課題」「事後課題」「研修参加者」に課す意義とは、果たして何でしょうか?

社内の研修参加者:
 「研修を受講するだけでも大変なのに、なぜ『事前課題』『事後課題』に 
  取り組む必要があるのか分からない。」

研修参加者各位の上長・上司:
 「研修当日の拘束は認めるが、原則部下たちには通常業務に優先して従事
  してもらいたい。余計な仕事を与えないでくれ。」

 など、それぞれの立場から、社内クレーム?を提言する人もいるかもしれません。それでも「事前課題」「事後課題」を、各研修教育プログラムに取り入れる合理的な意義として、

 *「事前課題」:学習準備の喚起による投資対効果の最大化を図るため
 *「事後課題」:自己効力感の喚起による学習内容の定着促進を図るため

 と、回答可能です。

 「事前課題」「事後課題」の性質について詳述すると、第一に「事前課題」に取り組む意義として、「研修参加者」に対する学習準備の喚起、ということが言えます。学習準備の喚起とは、研修実施日までに、研修教育プログラムに関連する知見・知識を事前に調査し、予習を行うことを促すことです。これにより、「研修参加者」自身の、研修教育プログラムに対する興味・関心の度合いを向上させ、学習に対する前向きなマインドセットを醸成し、もって投資対効果の最大化を図ることが可能になります。(=「研修目的達成率」の上昇への貢献)

 第二に「事後課題」に取り組む意義として、研修実施後の、「研修参加者」の自己効力感の喚起、ということが言えます。自己効力感とは、研修実施日に学習した内容について自分なりに理解が深まった結果、実際業務への適用・応用について自信を持つ状態を指します。研修実施後に、研修教育プログラムの学習内容に関連する「事後課題」に取り組み、復習を行いつつ、今後の自身の実際業務への適用・応用可能性を省察することで、学習内容の定着促進を図ることが可能になります。

 以上のように社内関係者に対して、「事前課題」「事後課題」に取り組む合理的な意義について説明を行い、理解を得るようにしましょう。

*2-1. 事前課題を提出期限内に提出したか
 
 「事前課題」の提出期限を設けます。提出期限内に提出した場合、5点を付与します。提出期限を過ぎて提出した場合、または提出がなかった場合、0点とします。
 ちなみに「事前課題」の提出期限等のスケジュールの定め方ですが、「研修参加者」による「事前課題」の作成、「研修参加者」から事務局および研修講師へ「事前課題」の提出、研修講師による「事前課題」の内容確認、および「事前課題」の採点スケジュールを勘案すると、次のように予定するとよいでしょう。
 
*事務局による「事前課題」の社内通知のタイミング…研修実施日の3週間前
*事務局または研修講師への「事前課題」の提出期限…研修実施日の1週間前
 
 このように計画すると、「研修参加者」「事前課題」に取り組むことのできる期間は、約2週間となりますが、研修教育プログラムの内容によっては、「事前課題」のボリュームが比較的多くなったり、難易度が高くなったりする場合があります。その場合、事務局による「事前課題」の社内通知のタイミングは、研修実施日の4週間前とし、「研修参加者」の負担を軽減するようにします。
 
 なお後述しますが、「事後課題」の社内通知のタイミングとの一貫性を確保するために、「事前課題」を研修実施日の3週間前に社内通知をした場合は、研修実施後の「事後課題」の社内展開時の提出期限も、3週間後とします。同様に、「事前課題」を研修実施日の4週間前に社内通知をした場合は、研修実施後の「事後課題」の社内展開時の提出期限も、4週間後とします。

 この意図は、研修教育プログラムは、研修実施日当日の学習のみをもって終了するものではなく、「事前課題」「事後課題」への一貫した取り組みを通して完成されるというメッセージを打ち出すことにあります。そして「事前課題」「事後課題」は同列で重要なものである、ということを、事務局が「研修参加者」に示すことにつながります。もし「事前課題」「事後課題」の二つの課題に取り組む期間に差違があると、「研修参加者」の中には、例えば、「事前課題」のみに重点的に取り組み、「事後課題」は簡単な感想文の提出の意識で大丈夫だろう、というような、誤解を抱く人も生じる可能性があります。
 
*2-2. 研修事前課題の文字数・分量
 
 「事前課題」の文字数・分量に応じて、所定の点数を付与します。評価要領は下記のとおりです。

 *350字以上:+5点
 *300字以上350字未満:+4点
 *250字以上300字未満:+3点
 *200字以上250字未満:+2点
 *200字未満:+1点
 
*2-3. 研修事前課題の内容
 
 「事前課題」の内容に応じて、所定の点数を付与します。加点は一人につき最大10点までとし、加点要領は、次のとおりです。
 
 *自分なりに何かを調査したと認められる内容:+5点
 *自分の言葉で、研修に臨むにあたっての心構えを表明したと
   認められる内容:+3点
 *上記以外の感想・意見:+2点

 
 なお*2-4. から*2-6. の「事後課題」の評価方法に関する内容については、これまで述べてきた「事前課題」の評価方法に関する内容を、「事後課題」に適用したほぼ同じ内容になりますが、念のため、下記に順を追って解説します。
 
*2-4. 事後課題を提出期限内に提出したか
 
 「事後課題」の提出期限を設けます。提出期限内に提出した場合、5点を付与します。提出期限を過ぎて提出した場合、または提出がなかった場合、0点とします。
 
*2-5. 研修事後課題の文字数・分量
 
 「事後課題」の文字数・分量に応じて、所定の点数を付与します。評価要領は下記のとおりです。
 
 *350字以上:+5点
 *300字以上350字未満:+4点
 *250字以上300字未満:+3点
 *200字以上250字未満:+2点
 *200字未満:+1点

 
*2-6. 研修事後課題の内容
 
 「事後課題」の内容に応じて、所定の点数を付与します。加点は一人につき最大10点までとし、加点要領は、次のとおりです。
 
 *研修で何を学び、何を習得したのか、自分なりの学びの痕跡が認められ
   る内容:+5点
 *今後業務に臨むにあたって研修内容をどのように活かすのか、自分の言
   葉で表明したと認められる内容:+3点
 *上記以外の感想・意見:+2点

 
 以上、6つの小項目で構成される、*2. 研修事前課題・研修事後課題の内容等について解説を行いました。

 第三に、「評価方法」の三つ目の項目である、

 *3. 研修教育プログラム終了後に実施する研修参加者間の匿名性360度相
    互評価:10点

 について説明します。皆さんは、360度評価という言葉を耳にすると、どのような場面を思い浮かべるでしょうか?人事評価・人事考課の場面での、多面評価の機会を想起される方が多いのではないでしょうか?研修実施後に、「研修参加者」に対して行う360度相互評価の意義とは、「研修参加者」間で、お互いの研修中のパフォーマンスを評価し合うことにより、学習プロセスにおける健全な競争を促し、切磋琢磨を行ってもらうことを企図します。なお匿名性による360度相互評価、という形式にしている理由として、「研修参加者」間の公平かつ公正な相互評価の機会を担保すること、事務局として、HRデータの適切な取り扱いにコミットする、という事情をふまえた経緯があります。ではどのようにして、匿名性の360度相互評価を実施すると良いのか、解説します。

 まず、360度相互評価の範囲について定めます。範囲の定め方として、大別すると二つの方法があります。

 *研修教育プログラムに参加した「研修参加者」全員の間で、360度相互 
  評価を実施する方法

 *研修教育プログラム実施の際、「研修参加者」は幾つかのグループに分
  かれて研修に参加した。同一グループ内のメンバー間で、360度相互評 
  価を実施する方法

 それぞれ、範囲の定め方を検討する上で特徴があります。

  *研修教育プログラムに参加した「研修参加者」全員の間で、360度相互
   評価を実施する方法

 については、「研修参加者数」が多くなりすぎると、「研修参加者」にとって、研修実施後の相互評価が困難になる可能性が高いです。というのは、自分以外の「研修参加者」の顔・名前と、該当する「研修参加者」の研修中の発言内容等が一致せず、相互評価ができない、という現象が発生し得るためです。

 一方、

 *研修教育プログラム実施の際、「研修参加者」は幾つかのグループに分 
  かれて研修に参加した。同一グループ内のメンバー間で、360度相互評
  価を実施する方法

 についてですが、研修に先立ってグループ分けを行う際、あまりにも、あるグループ内の「研修参加者」間のバラツキ(注:ここでいうバラツキとは、各「研修参加者」の研修教育プログラムの学習内容に対する潜在的・顕在的な理解の深めやすさ、親和性の度合いという観点での差違、として把握します)がありすぎると、研修中、「研修参加者」によっては、パフォーマンスが発揮しづらくなるだけでなく、研修実施後の360度相互評価に与える影響も大きくなる可能性があります。

 敷衍しますと、例えば一つのグループあたり4名、というグループ分けを行う際、4名のメンバーのうち3人が、これまでのキャリア等から、顕在的に実施する研修教育プログラムの学習内容に親和性があり、理解を深めやすい「研修参加者」である場合、残りの1名の「研修参加者」にとっては、自身が他のメンバーから獲得する相互評価点の高低ということを考える上で、不利な立場になる可能性が高いということです。
 「事前課題」にも一生懸命取り組み、やる気満々で研修当日を迎えたにも関わらず、同じグループのメンバーが皆自分よりすごそうだ、という状況になった場合、研修当日にあえて消極的になって手を抜く、というように、萎縮させてしまうこともあり得ます。
 
 筆者の経験上、

 *研修教育プログラムに参加した「研修参加者」全員の間で、360度相互 
  評価を実施する方法

 による場合は、最少10名から、最大15名までとするのが妥当と考えます。この数字は、R. ダンバーが提唱するダンバー数の法則にも解を見出すことができそうですが、「研修参加者数」が10名を下回ってくると、そもそも全員の間で、360度相互評価を実施する意義があるのか、ということになりますし、一方、15名を超えてくると、先に述べたとおり、「あの発言、あのワークのリードは、一体誰がしたのだっけ?」というような、混同が生じる可能性が高くなります。

 また、

 *研修教育プログラム実施の際、「研修参加者」は幾つかのグループに分
  かれて研修に参加した。同一グループ内のメンバー間で、360度相互評
  価を実施する方法

 で展開する場合は、一つのグループあたりの「研修参加者数」は、最少4名から、最大6名までとするのが妥当と考えます。先述したように、グループ分けの際のメンバー人選は慎重に行いつつ、このように人数設定の目安を設ける理由として、研修教育プログラムの性質に応じて、同一グループの中で「研修参加者」をさらに二つの班に分けてワークを行わせたり、議論を行わせたりすることが、多々あるからです。望ましいのは、同一グループの中での「研修参加者」間の応答が、特定の者の間で終始せず、まんべんなく実施される状態です。

 さて研修中の「研修参加者」のパフォーマンス内容に応じて、各「研修参加者」に360度相互評価を実施してもらいます。順位に応じて所定の点数を付与しますが、評価要領は下記のとおりです。

 *研修中のパフォーマンスが一位であった者:+10点
 *研修中のパフォーマンスが二位であった者:+8点
 *研修中のパフォーマンスが三位であった者:+6点
 *研修中のパフォーマンスが四位(五位以下も同じ)であった者:+4点

 なお上記の結論を導くために、

 *研修教育プログラムに参加した「研修参加者」全員の間で、360度相互
  評価を実施する方法

 *研修教育プログラム実施の際、「研修参加者」は幾つかのグループに分
  かれて研修に参加した。同一グループ内のメンバー間で、360度相互評
  価を実施する方法

 のいずれの方法を採用する場合でも、順位を確定させるプロセスが必要です。なるべく同位獲得点者が生じないように、下記の要領でアンケートを実施し、集計します。

 例)一つのグループあたりの「研修参加者数」を4人とした研修教育プロ
   グラム
   「一班用(匿名性):研修中のパフォーマンス(講義中の発言内容およ
    び各ワークへの取り組み姿勢)が高かったと考えるメンバーの順番
    をご教示ください。」
     *研修参加者Aさん
     *研修参加者Bさん
     *研修参加者Cさん
     *研修参加者Dさん

 注1. 任意のwebアンケートフォーム作成プログラムを用いて、研修教育プ
   ログラムごとに作成し、社内展開することをお薦めします。

 注2. 氏名の欄を押下することで、順位を入れ替えることができるアンケー
   トフォームを使用します。

 注3. 自身の氏名も含めて、順位を入れ替えてもらうようにします。

 注4. 匿名性であることを担保するために、アンケートフォームの回答欄に
   は、氏名欄を設けないようにします。このことは「研修参加者」と事
   務局間の信頼関係の醸成を考える上で、とても重要な仕掛けになりま
   す。

 さて360度相互評価を実施した際、筆者は同位獲得点者が生じないことが望ましいと考えますが、各「研修参加者」にお願いをして実施をする360度相互評価という建前上、アンケートへの回答を強制することは絶対にできません。それゆえ、未回答者が生じるリスクは事前に織り込んで、本スキームを設計する必要があります。

 そこで穏当であるのは、第四章で解説した研修教育プログラムの社内展開を行うタイミングなどで、本章で説明した内容とあわせて、次のように360度相互評価の評価方法について、前もって説明しておくことです。

 360度相互評価の評価方法:

 *研修中のパフォーマンスが一位であった者:+10点
 *研修中のパフォーマンスが二位であった者:+8点
 *研修中のパフォーマンスが三位であった者:+6点
 *研修中のパフォーマンスが四位(五位以下も同じ)であった者:+4点

 ※360度相互評価へ未回答の者の点数については、他「研修参加者」の評
  価の有無に関わらず、一律に+2点を加点するものとする。

 上記の通り明記しておくことで、各「研修参加者」の360度相互評価アンケート回答へのインセンティブにつながります。繰り返しになりますが、研修実施後に、「研修参加者」に対して行う360度相互評価の意義とは、「研修参加者」間で、お互いの研修中のパフォーマンスを評価し合うことで、学習プロセスにおける健全な競争を促し、切磋琢磨を行ってもらうことです。

 第四に、「評価方法」の四つ目の項目である、

 *4. 研修教育プログラム終了後に実施するアンケート結果:10点
  (研修参加者自身による理解の度合いの自己評価)
 
 について説明します。三つ目の「評価方法」の項目である360度相互評価を実施する際に、アンケートを実施すると述べましたが、研修教育プログラム終了後に実施するアンケート(研修参加者自身による理解の度合いの自己評価)は、360度相互評価とは異なるアンケートフォームを作成し、実施するようにします。

 さて「研修参加者」自身による理解の度合いの自己評価とは、「研修参加者」自身の持ち点、という位置付けでもあります。すなわち100点満点中10点については、自己点検のために与えられた点数である、という表現も可能かと思います。

 筆者がこれまで携わった実務経験に基づくと、「研修参加者」は比較的客観的に、自己評価を行う傾向にあると認識しています。決して適当に浅慮で、10点または0点に振り切るような自己評価を行う方はほとんどなく、参加した研修教育プログラムの学習内容に照らして、理解度を冷静に自己点検する方が多くなる傾向です。もちろん研修にもよりますが、毎回8点から4点の間がボリュームゾーン、という印象です。

 では具体的にどのようにアンケートフォームを作成するとよいでしょうか?下記の要領でアンケートを実施し、集計します。

 「理解度(自己評価)_研修受講を通じて、あなたなりに理解を深めることができた内容について、点数による自己評価とあわせて、自由に述べてください。(文字数・分量・形式は問いません)」

 注1. 任意のwebアンケートフォーム作成プログラムを用いて、研修教育プ
   ログラムごとに作成し、社内展開することをお薦めします。

 注2. まず定性データ(文字情報)を入力してもらう理由として、研修教育
   プログラムの学習内容のうち、「研修参加者」が具体的にどの部分に
   対する理解を深めることができたのかを明確にするためです。それに
   基づく、点数評価を行ってもらう、という流れになります。

 注3. 点数による自己評価については、例えば、”0, 2, 4, 6, 8, 10”のような選 
   択式フォームをあわせて作成し、回答してもらうようにします。筆者
   は、「研修参加者」の利便性(あまり選択肢が多いと、かえって混乱
   するという人の特性に基づきます)を考慮して、”0, 2, 4, 6, 8, 10”とい
   うフォームを採用していますが、”0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10”という形
   式にしても構いません。
 
 注4. アンケートフォームの回答欄には、必ず氏名欄を設けます。

*解説:
 研修事後アンケートで調査する事項とは?

 これまで研修教育プログラム実施後に、360度相互評価と、「研修参加者」自身による理解の度合いの自己評価を測定するために、アンケートを実施する旨、解説しました。それではその他に、研修事後アンケートで調査すべき事項とは何でしょうか?下記11個の事項を必ず調査するようにします。

*研修講師の声量:10点満点
*研修講師の言葉遣い:10点満点
*研修講師の時間管理:10点満点
*研修講師の質疑応答のオープンネス:10点満点
*研修講師の非独善性:10点満点
*研修教育プログラムの分量:10点満点
*研修教育プログラムの難易度:10点満点
*研修教育プログラムの実務性:10点満点
*研修教育プログラムのクラスチェンジ(部門内昇進・降格)の際の有効性:
  10点満点
*研修教育プログラムのロールチェンジ(部門異動)の際の有効性:10点満点
*満足度:10点満点

 これらの調査は、各「研修参加者」の平均値をもって、最終集計を行うようにします。さて上記の調査項目は、どれも「研修目的達成率」を測定することと直接関係はありませんが、二つの重要な意義があります。それは第一に、社外コンテンツベンダーに対するフィードバック資料になるということ、第二に、社内の利害関係者に対するフィードバック資料として活用が可能であるということです。いずれの場合も、フィードバック資料としての価値の所在は、研修教育プログラムを企画・立案、実行した事務局からの、「研修参加者」以外に対する利害関係者(社外・社内ともに)へのけん制効果が期待できるという点にあります。
 
 具体的に説明します。第一に、社外コンテンツベンダーに対するけん制効果という観点では、「貴所は研修講師の品質を確保できているか?」「貴所の研修教育プログラムの設計は適切か?」といった発注元としてのメッセージを、営業担当者に発信することが可能です。第二に、社内利害関係者に対するけん制効果という観点では、当社の能力開発事業は、社外の相応のコンテンツベンダーに発注をし、適切に運営・管理がなされているというメッセージを、発信することが可能です。

 ところで、しばしば社外コンテンツベンダーの営業担当者から、研修終了後に、品質向上のため事後アンケートを実施したいので協力して欲しいと、要請が入ることがあります。読者の皆様の中にも、そのような応対を行った方がいらっしゃるかと思いますが、これはほとんどの場合、目的不明のアンケート実施に協力することに終始する場合が多いです。
 
 例えば、「満足度」のみの調査を行って、各「研修参加者」からの評価が高い数値が出たとします。これをもって今般研修の投資対効果があった、と宣伝される社外コンテンツベンダーの営業担当者には驚いたことがあります。

 また別の事例としては、研修講師と研修教育プログラムに対する評価項目があるものの、回答欄はあらかじめ、「研修講師に対する」または、「プログラムに対する」とあるだけで、具体的に、研修講師の何に対する評価なのか、またはプログラムの何に対する評価なのか、評価対象が漠然としたアンケート回答を要求されるケースもありました。研修講師に対して評価すべき項目は、声量が適切であったのかどうか、言葉遣いが適切であったのかどうか、または時間管理が適切であったのかどうかなど、多岐にわたるべきです。同時に、プログラムに対して評価すべき項目は、分量が適切であったのかどうか、難易度が適切であったのかどうか、または実務的な内容であったのかどうかなど、やはり多面的な評価がなされるべきと考えます。
 
 その他、筆者がこれまである意味興味深く感じたアンケートフォームの設問事例として、「資料に対する」という評価項目を設けておられたコンテンツベンダーの事例があります。筆者個人の認識ですが、「資料」というのはあくまで研修教育プログラムのコンテンツを構成する一要素という見解です。堂々と、「資料に対する」という項目をあえて設けておられるのは、「研修参加者」の学習内容の理解を促進する、本来研修に登壇する講師が直接作成に携わるべき「教材」や「テキスト」というものは、単なる「資料」という認識にすぎない、という当該コンテンツベンダーの社風、または「資料」作成者は「資料」作成のみを専任業務として行うよう組織される機能別組織の、組織体制に起因する所が大きいのでは、という印象を受けました。

 もちろん、呼称の方法が「資料」であれ、「教材」または「テキスト」であれ、コンテンツを構成するこれら「学習媒体」(本稿では以降、研修教育プログラムのコンテンツを構成する、「研修参加者」の学習内容の理解を促進する「資料」「教材」「テキスト」「e-learningシステム」等を総称して、「学習媒体」という表現に統一して呼称します)が「研修参加者」に与える効果は大きいものです。「学習内容定着」方法の解説を行う際に、これら「学習媒体」の果たす役割について、改めて説明することとします。

 以上、「研修参加者」が最終的に獲得した「研修目的達成点」を算出する際には、計4つの「評価方法」に基づき計算することについて、解説を行いました。


第六章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法 Step5. 研修目的達成率を算出する

 本章では、「研修目的達成率」の計算方法について説明します。第一章でも簡単に述べましたが、「研修目的達成率」の計算方法は、以下の要領になります。

 第五章で、「研修参加者」の研修教育プログラム受講に関連して発揮したパフォーマンスを、4つの「評価方法」に基づき、100点満点の「研修目的達成点」としてスケールする方法を解説しました。
 さて、「研修目的」を達成した参加者を、100点満点中60点以上を獲得した者、「研修目的達成者」として定義します。これについては、「研修目的」の達成水準に関する考え方とあわせて、第三章で解説しました。
 では事例として、「研修参加者」の人数が計20名、60点以上を獲得した者の人数が、最終的に18名であったものとします。この場合、「研修目的達成率」は、18÷20=0.9 (90%)となります。
 参考までに、第一章で解説したように、「研修受講者」の扱いをどうすべきか、という論点があります。これについては、筆者が関与した実例を基に、下記のとおり詳述します。

ケース)
 研修教育プログラムは二日間で構成されるものであるところ、Aさんは一日間のみの参加であった。なお一日目の研修に先立ち、「事前課題」は期限内に事務局に提出している。二日間ともに、一つのグループあたりの「研修参加者数」は4人(メンバー固定)という構成で展開された。上記を、ふまえて、Aさんの「研修目的達成点」は以下のとおりとなった。

*1-1.
研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中のパフォーマンス(発言内容):計8点
 点数内訳)
 *他の研修参加者に新しい知見・知識を与える内容:+5点/回
 *上記以外の感想・意見:+3点/回
*1-2.
研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中のパフォーマンス(発言回数):計4点
 点数内訳)
 *2-3回:+4点
*1-3.
研修講師による研修参加者の研修教育プログラム実施中のパフォーマンス(受講態度):計10点
 点数内訳)
 減点要素なし

*2-1.
研修事前課題を提出期限内に講師または事務局まで提出したか:5点
 点数内訳)
 期限内に提出があった:+5点
*2-2.
研修事前課題の文字数・分量:4点
 点数内訳)
 *300字以上350字未満:+4点
*2-3.
研修事前課題の内容:計8点
 点数内訳)
 *自分なりに何かを調査したと認められる内容:+5点
 *自分の言葉で、研修に臨むにあたっての心構えを表明したと認められる
  内容:+3点
※事後課題の提出はなし

*3.
研修教育プログラム終了後に実施する研修参加者間の匿名性360度相互評価:4点
 点数内訳)
 *研修中のパフォーマンスが四位であった者:+4点

*4.
研修教育プログラム終了後に実施するアンケート結果:6点
(研修参加者自身による理解の度合いの自己評価)

 以上より、一日目のみに参加した「研修受講者」であるAさんの「研修目的達成点」は、49点となります。もともと今回実施した研修教育プログラムは、二日間の日程への参加をもって、「研修参加者」となり、「研修目的」を達成することを企図していたところ、残念ながら二日目への参加が叶わなかったことなどから、このような結果になりました。ただし、「研修欠席者」とは位置付けが異なるものとして、AさんならびにAさんの上司・上長など、関係者へのフィードバックは必ず行うようにします。

 さて確認しておく必要のある論点として、Aさんのケースの場合、匿名性360度相互評価と、「研修参加者」自身による理解の度合いの自己評価を、二日間の研修教育プログラム終了後に行ってもらうべきかどうか、という見方があります。筆者は両方とも、Aさんに入力をお願いするよう、手配すべきと考えます。

 まず匿名性360度相互評価については、Aさん自身が入力をするにしても、Aさん自身のグループ内の評価を考える際、控えめな評価を行う可能性が高いということ、またその他の同一グループのメンバーが、意識的に、Aさんは一日目のみしか参加していないので、相互評価を行う上で、少し劣後するのはやむなし、という判断を行う可能性が高いです。これらのことから、事務局が安易にAさんを相互評価の機会から排除するよりは、あえて全員に分かるよう入力のお願いをして、それぞれの判断を仰ぐ、という体裁にした方が、公平性・公正性を担保し、潜在的なトラブル防止にもつながりますし、意外と客観的な結果が表れるものです。

 続いて「研修受講者」となったAさんに、理解度の自己評価を行ってもらうことについては、もともとこの「評価手法」が、「研修参加者」に持ち点を10点付与している、という性質上、一日目のみしか参加していなかったとしても、Aさんが一日目の研修に参加したことは揺るぎない事実なので、10点の範囲内で、一日目の研修教育プログラムの内容を中心に、自己評価を行ってもらうことは認められるものとします。


第七章:課題1. 『実行した研修教育プログラムの投資対効果測定をどのように実施し、各プログラムの恒常的洗練・峻別を実行すべきか』の対処法 Step6. 測定およびフィードバック

 いよいよ最後のStepです。投資対効果測定の計算方法については、第一章で解説した内容を改めて説明するとともに、フィードバックの方法について新たに解説します。
 
 まず事例として、下記の研修教育プログラムである場合について考えます。

                           投資対効果測定方法の計算式(再掲)

社外コンテンツベンダーを利用した場合:
・研修費用:330,000円
・講師交通費用:11,000円
投入研修費用は、計341,000円(税込み)となります。
 
・研修目的達成率:0.9 (90%) です。
341,000円×0.9=306,900円となります。
 
・研修時間(h):3時間
・研修参加者数:20名です。
計算すると、3時間×20名=60時間となります。
 
分子÷分母の計算を実行した結果、
 
306,900円÷60=5,115円となります。

自社所属社員の平均年収ベース1時間あたり人件費:
自社所属社員の平均年収が600万円であるとします。
600万円÷(8時間(一日の勤務時間)×5日(一週間の勤務日)×4週間(1か月)×12か月)
=600万円÷1,920時間
=3,125円となります。
 
左項≧右項の場合、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値があったものとして測定します。
 
左項<右項の場合、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値がなかったものとして測定します。

 
 結論として、本事例の場合、5,115円>3,125円となり、「研修参加者」の1時間あたりの人件費に比較して、今般研修は投資した価値があったものとして扱います。
 
 上記の投資対効果測定の結果とあわせて、次に掲示する「研修目的達成状況報告シート」を活用して、社内関係者宛に研修成果のフィードバックを実施します。

                               研修目的達成状況報告シート

 アンケートへの回答が未回答であった場合など、データが取得できない結果、適正な評価が叶わない場合があります。その際は、”N/A” として、シートの所定欄に記入します。
 
 この「研修目的達成状況報告シート」の数値等入力の際は、社員のHRデータ管理の適切な取り扱いにコミットする、という観点から、シート中「氏名(敬略)」となっている欄については、原則本人以外の箇所は全て ”n○” という表記で匿名化処理を施します。すなわち、今回の研修教育プログラムの事例の場合、少なくとも「研修目的達成状況報告シート」は計20枚発行される、ということになります。この匿名化処理は、必ず実行するようにしましょう。
 
 また細かな話になりますが、第五章で説明したように、アンケートは任意のwebアンケートフォーム作成プログラムを活用して実施することをお薦めしましたが、収集したデータをスプレッドシートの形式で出力した後、当該データを、「研修目的達成状況報告シート」に転記する作業が生じます。この際、ヒューマンエラーの回避という観点から、なるべく2人以上の人員が本転記作業に携わることを強く推奨します。
 
 数値間違いや人名間違い等、誤入力による混乱を他者に与えることは、多くの期待・信頼を一瞬で失うことに即つながります。私たちは、特にビジネスパーソンの能力開発という、大変センシティブな仕事に参与しているのだという高い意識を常に忘れず、業務に臨むようにしましょう。なおアンケート結果のシートについても、参考までに掲示しておきます。

                             アンケート結果シート(1枚目)
                             アンケート結果シート(2枚目)

 最後に、研修成果のフィードバックを行う相手ですが、研修に参加した社員と、当該社員の所属職場の管理職(課長から部長)を対象に実施します。
 
 人は誰しも、新しい仕組みや考え方に接した時に、善意の?と、悪意の?を、アイデアの発出者に質問してくるものです。これまで説明してきた内容を十分にご理解いただいた上で、読者の皆様の所属企業・組織でご展開いただけることを祈念しております。


第八章:課題2. 『社員に対して投資実行した研修教育プログラムの学習内容を、果たしてどのように定着させるべきか』の対処法の全体像:※執筆中

 第八章からは、課題2.『社員に対して投資実行した研修教育プログラムの学習内容を、果たしてどのように定着させるべきか』の対処法について、解説していきます。すなわち、研修教育プログラムに参加したビジネスパーソンの「学習内容定着」の方法について、説明するものです。下記に掲げる表に基づいて順番に説明していきます。

                               学習内容定着支援計画シート

※以下、読者の皆様からの反響が一定程度ありましたら、執筆を再開したく 
 思います。(8/15(木)最終更新)


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