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一生ボロアパートでよかった

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#親

一生ボロアパートでよかった⑧

一生ボロアパートでよかった⑧

 マナちゃんは、小学校卒業と同時に引っ越していきました。お父さんが転勤になったと言っていました。たしか東京に行ったはずです。

 最後にマナちゃんにバイバイした日、アオイちゃんと3人で一緒に泣きました。マナちゃんが泣きながら「手紙書くね」って言ってくれて、「私も絶対書くよ」って泣きながら答えました。でも結局、手紙は一通も来ませんでした。私も、一通も送りませんでした。

 マナちゃんが実は、中学受験

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一生ボロアパートでよかった⑦

一生ボロアパートでよかった⑦

 学校ではアオイちゃんにもマナちゃんにも、自分の部屋を手に入れた事は話しませんでした。マナちゃんは「遊びに行く」と言い出しかねないし、万が一遊びにきて、アオイちゃんにまた「なんか臭いね」って言われるのも嫌だったので。同じ轍は踏みません。あの一件以来、友達は家に呼ばないと心に決めていました。

 自分の家に招く事ができない分、友達の家に遊びに行く機会は増えました。友達の家に遊びに行ける日はとてもラッ

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一生ボロアパートでよかった③

一生ボロアパートでよかった③

 自分の部屋が欲しいと言った時、父は「中学生になったらお前の部屋をあげようと思ってたんだ」と、ヘラっと笑いながら私に言いました。父はこの日もお酒を飲んでいて、帰宅後ずっとダイニングテーブルの椅子に座ってテレビを見ていました。テレビ前のソファに座れば良いのに、わざわざテレビから遠いダイニングテーブルの椅子に座って、いつもぼーっとテレビを見ているのです。
 母は眉間に深いしわをつくり、わかりやすく嫌な

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一生ボロアパートでよかった①

一生ボロアパートでよかった①

 私が幼稚園の年長になった頃、両親は家を買いました。新築の白い家です。今思えば大して広くもない、よくある40坪程度の分譲住宅の一つでした。しかし、当時の私にはお城のように広く感じられて、まるで自分がお姫様にでもなったかのような気分でした。太陽の光を浴びると白色の壁面がより輝いて見え、新しく美しい家は、幼い私に自信を与えてくれました。まさか、あの白い綺麗な家がゴミ屋敷になるなんて、誰も思わなかったと

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