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自分が牛だと思った日。

「牛はヒト、ヒトは牛」

牛の妊娠期間がヒトと同じだなんて、なんだか私たちって、似ている。
感情もあるし、意思表示も出来る、表現力もある、ただ牛の姿をしているか、ヒトの姿をしているかの違いだけなんじゃないかなと思ってしまう。

人間の欲は、勝手に不安を掻き立て、周りの人を苦しめることがある。


子牛が生まれてきた後、性別でこの先の生き方が変わってしまうことがある事が心に響いて、自分も同じ事が起きたのを思い出しました。

私は、二人目を妊娠した時、まだ初期の段階にも関わらず「男を産んで」と、同居していた義父に言われました。
跡取りがほしいという欲をぶつけられ、私の人権や母子の健康面などは無視され、自分自身の存在が何なのかを見つめるきっかけになりました。
一生忘れない言葉かもしれない、なかなか私の心の中で消えずに残ったまま、息子が生まれ8年経っても一緒に過ごすことに違和感があり、今まで誰にも話すことなく、ずっと一人で抱えていた出来事を旦那に話して、家族4人バラバラになることなく、その地を離れることにして、縁あってずっと憧れていた場所に住むことになり、今は自由にのびのびと生きています。

男を産んでと言われて、その通りに長男が誕生したが、息子は軽度の知的障害と発達障害を持っていて、自立すら難しい状態なので、長男として後を継ぐなどは、息子の人生には関係無い。そう思って、新たな地でのびのびと育てていこうと決めて、現実と向き合い、息子がどうやって自立して生きていくかだけを考えています。

自然をより感じる新たな土地に思い切って移り住んでから、今までの暮らしを見直そうという気持ちが生まれ、不思議なことに現実と向き合いながら自然と共に生きる人たちに会う機会がすごく増えました。



一番すごく衝撃だったのが、森川さんとの出会いです。


地産地消と畜産農家の有機飼育に興味を持ち始めた頃に、SNSで偶然「森川畜産」の存在を知り、牛にストレスを与えないように自由に動き回れる飼育環境や、地域で採れる安心安全の野菜や米ぬか、竹炭などの素材をエサとして与える取り組みに感動し、素晴らしい取り組みをおこなっている畜産農家が、私が選んだ新たな土地に存在するんだ!!という喜びと、森川さんの家畜に対する思いに共感して、この地にやって来てくれてありがとう!!という気持ちでいっぱいになりました。


牛の生き方を知る機会に恵まれて、私に起こった出来事と似てるなぁと気付くきっかけにもなりました。雄で生まれるか、雌で生まれるかで役目を果たせない状況にもなる牛の世界、「あなたも同じなのねぇ」と思うことがあります。
でも、森川さんは、雄であろうが雌だろうが関係なく「ひとつのいのち」として向き合って育てています。
私はきっと、牛になるはずが、間違って人として生まれてきたんだろう。
いのちに向き合って育てている人に出会って、話を聞いて心が軽くなりました。


牛の一生を考えながら人と同じように育て、通常の畜産業の飼育期間(2〜3年)よりも、長期(15年ほど)に渡り人と過ごしながら、役目を果たす時が来たと感じ取ったら出荷へと向かい、私たちのいのちを繋いでくれるお肉になる「循環」をおこなっている。


一頭一頭、名前があります。

牛を愛情いっぱい育てた後に、出荷する流れを可哀想だと思う人もいるかもしれません。
私は、その可哀想だという感情を通り越して、消費者側として決して量を欲張らずに、必要な分を大切に無駄なく食べることを全うしたいと思い、1年前に初めて森川畜産のお肉を購入しました。

食べた瞬間、価値観がひっくり返った。

雑味が無く、滋味深くて本当のお肉の味がした。
噛めば噛むほど、旨味が出てきて「美味しいね〜」と思わず言葉が出てしまうほど感動するお肉。これまでの生きた証がしっかり残っているような感じ。


森川畜産のお肉で作ったローストビーフ

人の心を動かす不思議なお肉と森川家に出会って、たくさんの発見と学びをもらっています。

「循環」を目指すには、時間とお金もたくさん必要で、シンプルな飼育に見えますが、なかなかチャレンジ出来ることではないので、ピンチと隣り合わせなのですが、すぐ行動に移してやってのけてしまう森川家の凄さに、応援しているみんなが自然と笑顔になる。
共に支えている人達も魅力的で、それぞれ自分の得意な事や知識を持っていて、それを持ち寄って共有して生きているところも初めて見る光景で、たくさんのエネルギーが集まっているので、毎回凄いなぁ〜と驚きの連続です。

先日、森川畜産主催の「お肉を食べる会」に子供達を連れて参加してきたのですが、ゲストに凄い方が来られて、私が少し気になっていた「出荷された後、お肉になる時」の部分を知ることが出来ました。


ゲストの方は、熊本在住の「元食肉解体作業員」の坂本義喜さん、「いのちをいただく」という絵本の原案者でもある坂本さんが、食肉解体作業員であった時に実際にあった出来事やどういうお仕事なのかを包み隠さずに語ってくださいました。
食肉センターへ出荷された牛を預かったあと、「いのちを解く」「血抜きをする」「皮を剥ぐ」「食肉にしていく」これらの作業をしていくそうです。
「いのちを解く」とは、食肉センターへ出荷されたあと食肉解体作業員の手で、いのちを絶つということです。
血や糞を浴びたり、内臓の処理などもされるので、とても辛く大変なお仕事で「いのちを解いた後で、いのちを繋ぎなおす」方達であり、私たち消費者にとって大切な存在であり、この方達のおかげで私たちは、食卓でお肉が当たり前に食べられるのです。


森川畜産Instagramより

食肉解体作業の内容を世間に発信することは、ずっと昔からタブーだとされていたそうで、坂本さんがこの仕事を小学校の子供達に伝え始めた時は、仲間内でもひどく批判されて辛い時期もあったそうですが、家族の応援もあって伝えることを止めずに活動されてきて、縁あって森川さん主催の「お肉を食べる会」で出会い、ずっと続けてきた坂本さんの活動の一部に、我が家も加われたことに喜びを感じ、本当にすごく貴重なお話が子供達と一緒に聞けて、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

改めて、いのちの大切さを学ばせてもらいました。

坂本さん原案の絵本を娘が去年、学校の道徳で担任の先生が読んでくれて知っていたことも後で分かり、行くべき会だったんだなぁ〜と、子供達を連れて行こう!と決めた自分にも感謝。


参加者の皆さんと「いのち」を大切にいただきました。

一つ一つのいのちを大事に育てている生産者の森川畜産と、いのちにきちんと向き合いながら食肉解体作業員として最後の大事な仕事をして、消費者である私たちの食卓に繋げてくれる。点と点が繋がって線になった素晴らしい出会いの日でした。


坂本さんがお話しされている間、ずっと落ち着きが無かった息子は、ちゃんと話を聞けていたのだろうか、、、と思っていたら、学校に行った時に担任の先生に坂本さんの話をしっかり伝えることが出来たようで、先生から連絡ノートを通じて「素晴らしい機会でしたね」とお返事がありました。きちんと息子に伝わっていて嬉しかった。

人間の身勝手で、動物や作物などのいきものを扱う人達を苦しめている今、出回っているたくさんの情報に振り回されているのではないでしょうか。
不安になったり、焦りや怒りなどの感情が溢れることがあると思います。
振り回されないようにするには、自分できちんと確かめてみることが大切なんだと思います。お気に入りの商品はどこで作られているのか、生産者はどんな思いでつくっているのか、どういう環境でつくられているのか、自分で確かめたり試してみると、きちんとした情報を選択することができます。

自分でたどって、選択していく時代なんだと感じています。

子供達には、自分で判断して行動する力を身につけてほしいので、興味を持ってたどる、知らない情報を受け取りに行く、行動する(家族や仲間に伝えるなど)、勉強以外の大切なことをたくさん経験させていきたいです。

どんどん便利な時代へと進み、子供達が大人顔負けでPCなどを使いこなすので、時々子供から学び助けられることもあります。便利なものをどんどん使っていくのは、とても大切です。進化が必要なものは世の中にはたくさんあるので、進化していくものを知り、受け入れていきながら、大切なものは残していかなくてはいけないと感じます。

私は、自然も感じられる場所に住みたいと思い、住まいを選ぶのに長い時間かけて探しました。今住んでいる場所は、海があり山もあり自然を感じられる良い環境です。


ですが、地域の方達の高齢化が進み、畑や田んぼがどんどん使われなくなってしまい、手入れをするのにも体力やお金が必要なため、放置され荒れ果てている農地があります。
一定期間耕作・管理を行わずに放置された農地のことを耕作放棄地といいます。

森川畜産は、耕作放棄地を活用して、牛の放牧飼育をおこなっています。

耕作放棄地には、人工肥料や農薬などを使用していないため、自然な草が生えている環境も整っているため、放牧のための牧草が十分にある場合もあります。
これらは、地域や条件によって異なりますが、耕作放棄地がある地域では、畜産業者と地元住民が協力して有効利用しています。


牛がストレスなくゆったりと過ごしています。

昔のような暮らしを大切にして、次の時代へ残していきたい。という地域の方々の思いと、森川畜産の放牧飼育法が結びついて、ヒトも牛も幸せで豊かな環境が築き上げられています。荒れ果てていた土地に牛が放たれ、草を食べ、土を踏み耕し、土地が生き返る景色はとても美しく、人々を笑顔にします。誰もが手を付けないものこそ、イメージすることの大切さを知りました。

草が生い茂った荒れ果てた土地は誰も手を付けず買い手がなかなか付かないのですが、その荒れた土地を誰かが買い、その状態を整備していくと、視界が広がっていろんな可能性が広がり出し、一気に魅力的な土地に変身します。

イメージする力と行動力がある人は、どんな場所でも魅力的に創り上げることができる。と、家探しをしていた時に聞いた言葉を思い出しました。


長崎県西海市は、自然豊かなまち

土地や環境を守り、自然の力を活用していく暮らしに必要なことは、人や動物、植物、昆虫、土、水、風などの一つも欠けてはいけない「いのち」を大切に思うことです。

食材もバランス良く選び、欲張らずに必要な分だけ食べていけば、どれかを排除せずに済むのだと思います。食材の選択肢が増えることは、日々進化しているのだから当たり前のことであって、それを選ぶか選ばないかは自由なんだと思います。

一つ一つの「いのち」に向き合って感謝しながら、なにげない日常が豊かだと思える日々がずっと続くために、自分に出来ることをやっていきたいと思います。

出会った人々に感謝、美味しい食材をそれぞれつくってくれる愛ある生産者の人々にもいっぱい感謝です。


サポートしていただいたものは子供達の活動費として使わせていただきます、活動内容は記事にして報告させていただきます。