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6つ離れたお姉さん

6つ離れたお姉さん

私は22歳の大学四年生
大学一年生の頃から、家庭教師のアルバイトをしています
当時中学一年生だった彼女たちは、この春高校一年生になりました

通常は週一回お家に伺い、テスト前は週三回ほどに増えます
勉強するのが嫌いな彼女たちは、いやいや言いながらもテストや受験を頑張ってきてくれました

家庭教師って家庭を訪問して1~2時間その子たちにつきっきりで教えるんです
塾と違って、家庭というプライベートな空間で時間を過ごすので、とても親密
双方がやりたいようにやっています
もちろん、お金をいただいているので規定の時間は勉強をします
時間内は勉強に関しての言いたいことを言い合うのです

彼女たちを教え始めてもうすぐ三年
彼女たちは私のことをとても慕ってくれている、と思います
いつも私にたくさんのお話をしてくれて、色々な気持ちを素直に出してくれます
学校のこと、趣味のこと、家族のこと
彼女たちは自分たちのことを話すのと同じくらい、私の話を聞きたがります
私も、かなり自分のことを打ち明けてきました
私は、彼女たちのことが大好きです

中高生の時代って記憶に鮮烈に残る期間です
彼女たちのその期間に私が関われていること、こんなに素晴らしいことがあって良いものか、と思います

十代の頃って、一つ歳が離れているだけでも、自分よりもかなり大人に見えたものです
高一から見た高三は大人びていたし、高一から見た大学生はもう大人だった

彼女たちはたまに私と6こも離れていることを強調し、自分たちは子どもで先生は大人である、というようなことを言います
私からすれば、高一なんてついこの前
今の自分は、当時の自分とひと続き
小学生の時の自分を振り返ると、当時と今は別の人間であるような気がしますが、高一ではそのようなことはありません

私たちは6こだけ
80代になったら同じようなものなんじゃないの、と私は言ってみます
そういうことじゃない、と彼女たちは言います
だよねー

その6こが、彼女たちにとってはどれほど大きなものなのか
彼女たちの目には、どれほど私がお姉さんに見えているのか
なんとなく想像はつきます
自分もそうだったから

彼女たちは、私に対して友達のように軽口を叩き、宿題を拒否し、夕飯に誘ってくれます
お互いに好きなアイドルの話や、恋バナもします


でも、やっぱり私はきっと彼女たちの中では「お姉さん」なのです
そうに決まっている

私は、できるだけ彼女たちの前では、綺麗でしっかりとしていて人生を楽しんでいるお姉さんでありたい

綺麗でしっかりとした「お姉さん」の姿を、彼女たちの栄光の十代の思い出の一つに加えてあげたい
そんな「お姉さん」の存在は、きっといつまでも思い出すことができる普遍の輝きを持つものになると信じているから

そして、大人になっていくこと、生きていくことって楽しいことなのだ、と私の姿をもって教えてあげたい
悩みが尽きない十代
大丈夫
私は今、こんなにも楽しい
大丈夫だよ、きっともっともっと幸せになれる
私がそうだから

私はなるべく丁寧にメイクを施して、そこそこ綺麗な洋服を着て、毎週彼女たちの家のチャイムを鳴らします
そして、楽しいお話をします
大学が楽しい、今が楽しい


彼女たちの前で、「綺麗でしっかりとしていて人生を楽しんでいるお姉さん」であること、これは十代の貴重な時間を共に過ごさせてもらっている私の義務だと思います

私は、彼女たちのお姉さん
いつまでも、記憶に残り続けるお姉さん
いつまでも残る記憶なら、できるだけ素晴らしいものに



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