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大きな海、大好きな海、恐い海

私は、静岡市の清水区という、海辺の町で生まれ育った

清水の海は穏やかだ
そして、あたたかい

清水ではおいしいお魚がよくとれる
市場は毎日賑わっている
おいしいお寿司屋さんがたくさんある


清水には、海がある
海のおかげで様々な産業が発展した
いつも私たちのそばに、海はいる

小さな清水の町にある海は大きくて、私たちを包み込んでいる
大きな海のそばで私たちはごはんを食べて、寝て、遊んで、大きくなってきた

海は、大きい
逆らえない

大きくて、やさしい
何もいわないから
いつも、包んでくれるだけだから

私はこれからも海と一緒に生きていくのだと思っていた

だって、大好きだから
いつもそばにあるものだから
私は海を取り込んで成長してしまったから
海がない世界なんて考えられなかった


海は、大きい
逆らえない

それは、海が私を安心させてくれる理由の一つだった


2011年の3月11日、私にとってそれは脅威に変わった

テレビに映る大津波は、私が知っている海ではなかった

海は、街や人々をのみこんで、まっさらにしてしまった

多くの人が亡くなり、多くの人が被害を受け、多くの人が悲しんだ

何も悪くない人たちが

こんなこと、あってはならないと思った

ひどいと思った

海が、憎かった


そして、大きくて、逆らえない海のことを、恐ろしいと思った



清水は、海抜が低い

東海地震がきたら、なんて考えたくなくて、普段は皆あまり口にしない

テレビや新聞は、よく「危険」と言う
東海地震がきたら、〇〇万人が死ぬでしょう、って

絶対に嫌だ
大好きな土地、大好きな人たち

海のせいだ

私たちから、すべてを奪わないで

お願いだから

こないで



海を見ると、とても恐くなる

大きな海、穏やかな海、大好きな海

海は、きっと私たちを悲しませる

どうして、そんなにきらきらとして穏やかに、そこにいるの

やめて、あっちいって


もう大好きなんて、言えない

私は、海が大好きだった

大きくて優しい海のことが





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