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渋谷ノスタルジック書店(棚番:158)棚主/元・サブカル女子、現・中学生男子の母/「あ…

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渋谷ノスタルジック書店(棚番:158)棚主/元・サブカル女子、現・中学生男子の母/「あの頃」と今とを行き来しながら書いています。

最近の記事

2024年になってから、ここではない場所で毎日、日記を更新しています。URLはお問合せくださった方にお知らせします(ページ下部の「クリエイターへのお問合せ」ボタンから)。このnoteでは、これまで通りコラム的なものを書いていきたいと思っています。Thanks!

    • きっと忘れてしまう

      別居のための荷造りをしていた元夫が「こんなのが出てきたよ」と苦笑しながら渡してきたのは、私の20代の頃の手紙や日記が詰まった箱だった。 日記には、元夫と出会った日から付き合った日、初めての旅行についてなども詳細に書かれており、「こんな時もあったんだね」と言いながら読み上げた私の心はその時、やっぱりどこか壊れていたのかもしれない。 そんな中でも心が動いたのは、元夫の前につきあっていた恋人についての日記だった。2年ぐらい付き合っていたと記憶していたけれど、実際の交際期間は、なん

      • 図書館に閉じ込められたかった

        どんな憂鬱な日も、図書館で本を借りた瞬間にたちまち元気になる。 貸出カードをスキャンした司書の方が「あ、予約の本がきていますね」と、半年ほど予約待ちしていた本を後ろのカウンターから持ってきてくれる時など、思わず「待ってました!」と心の中で大向こうをかけてしまう。返却棚に置かれている本を眺めるのも好き。もう数冊借りられるという時には、さっきまで誰かが借りていた本をそこからセレクトすることも多い。 貸出冊数の限界まで借りた13冊を、ほくほくしながらリュックに詰めると、それぞれの本

        • 「振り返らず 錆びた風は続くだろう」

          何せ、切なさ大好き女なので。 今あるものを失ってもいいと思う狂気を飼い慣らせずにいた。 昔からセンチメンタルな話が好きだし、 好きになるのはロマンチストばかりだ。 私はリリイに、ルーシーに、ジェニーになりたかった。 でも、決して簡単に喪失するな、 その手にあるものは、絶対に手放してはいけないんだと。 だってこの世界はリアルで無様で、だからこそ切なく、 それはとてもロマンチックなことなんだと。 そう、教えてくれたのは、センチメンタルな曲を書く、 ロマンチストのあの人だった。

        2024年になってから、ここではない場所で毎日、日記を更新しています。URLはお問合せくださった方にお知らせします(ページ下部の「クリエイターへのお問合せ」ボタンから)。このnoteでは、これまで通りコラム的なものを書いていきたいと思っています。Thanks!

          生きる理由とかけがえのない人生

          昨日、まるで妊娠が夢の終わりのきっかけだったように書いたけれど、今の私をこの世に繋ぎとめているのは間違いなく息子の存在だ。その価値は失った可能性や夢よりずっと大きく、息子を産まなければ私は無傷でその先の人生を生き抜くことはできなかったと思う。 その答えは「何かを成して、何者かにはなれたかもしれないが、間違いなく壊れていた」。 そんな結末を考えずに思い描く華やかな世界は、ただの甘い妄想でしかない。私は今、生きている。生きていなくては何も意味がないのだ。 私はずっと、消えた

          生きる理由とかけがえのない人生

          ありふれた人生と夢のあとさき

          夢の断絶は、満員電車のにおいがダメになるところから始まった。こみあげる吐き気に何度も電車を降りてホームでうずくまる。出社した後も姿勢を正していられなくて、会社の会議室を借りて仕事をする日々が続いていた。 ある日、駅の救護室を案内してくれた駅員さんからマタニティマークのキーホルダーをもらったその足で、思い切って編集長に妊娠を打ち明けた。彼女から返ってきた言葉は「別にいいけど担当ページは減らせないし、今のうちの会社じゃ産休育休もとらせることはできない」。 ずっと関わることを夢

          ありふれた人生と夢のあとさき

          渋谷ノスタルジック書店(棚番:158)

          昔から誰かの本棚を眺めるのが好きだった。友達の家でも、仕事で訪れた研究室やデザイン事務所でも、まじまじと見てしまう。本棚にはその人の脳内が詰まっていると思う。並んでいる本を見て親近感を持ったり、意外な趣味嗜好を知ってその人のことが気になり出したり。自分の部屋に友達が家に遊びに来るときにはアピールしたい本を面出ししたり、少し背伸びした本を目立つ位置に置いてみたり……。 このたび、シェア型書店の「渋谷〇〇書店」に入居できることになった。書店のコンセプトは「偏愛」だという。私にと

          渋谷ノスタルジック書店(棚番:158)

          親密な「知り合い」

          10年以上前からTwitter上でやりとりをしている人がいる。会ったことは一度もないけれど、長い間フォローし合って言葉を交わしてきたので、お互いにこれまでどのようなことがあったのかなど、旧知の友達より熟知している。先日、彼女のことを人に話す際に迷った。顔も本名も連絡先も正確に知らないのに「知り合い」ではないだろう。それに、この関係性は間違いなく「知り合い」以上の親密さだ。でも、Twitter以外での交流はないから「友達」でもない気がする。仕方がないので「Twitter上でやり

          親密な「知り合い」

          伊達眼鏡を買った

          先日、伊達眼鏡を買いにメガネ屋へ出かけた。 もともと自分に似合う大きめの丸メガネが欲しかったのだけど、いろいろ眺めているうちに、ブリッジとつるに入った繊細な細工が美しい、見ているだけでうっとりする華奢なメガネを買うことにした。 私の視力は1.5。もしかしたら2.0以上あるかもしれない。幼い頃から暗いところで本を読んでは「目が悪くなるよ」と母に叱られてきたが、全く悪くならないまま、大人になった。同じく目の良い父親の遺伝だと思う。 昔から自分に不要なメガネというものに憧れ(メガ

          伊達眼鏡を買った

          前世のことみたい

          年々、できなくなることが増えていく。朝まで飲んでそのまま仕事するとか、カップラーメンを完食するとか、青春十八きっぷを使ってオール鈍行で北海道へ行くとか。そうしたことができなくなるのは、体力的な衰えによるものが大きい。 一方で、生理的に無理だと思ったり、どうしてあんなことができたのだろうと思い返すこともある。 例えば、手の届く高さで鳴いている蝉を人差し指と親指でつかんで捕まえること。幼い頃に掴んだ蝉の体の油のべたつきと、震える振動を今でもこの手のひらに覚えている。 昨年の夏

          前世のことみたい

          ジンを飲む夜

          家ではあまりお酒を飲まない。たまに飲むのはお酒にあうおかずをつくった時。これはもう、酒と一緒に食わずしてどうする、というような一品。ありますよね。ガッツリ系のおかずの時はビール、料理によっては白ワインやハイボールの缶をあけたりする。 それから、気持ちが浮かなかったり、センチメンタルな気持ちになった時。ほどよいアルコールは、カチコチになった思考と体を解放してくれる。 今日は朝から気分に加えて体調もあまりよくなく(そんな時に飲むなって話だが)、気晴らしに何か飲もうと冷蔵庫を開

          ジンを飲む夜

          夜中のコンビニ

          夜中のコンビニが大好きだ。 あの、圧倒的な店内の明るさ。レジには昼間の店員さんより覇気のない男の子がぼーっと立っており、昼間の店と同じ放送が元気に響いている。部屋着姿の人が店内をうろついている非日常感にワクワクする。 飲んだあとに立ち寄るコンビニ。お茶を買いに寄ったつもりがいつの間にかアイスやデザートも買い物かごに放り込んでいる。朝起きたらゴミ箱に食べた覚えのないチョコモナカジャンボのごみが入っている、ということがこれまでに何度もあった。 「買い出し」に向かうコンビニ。仲

          夜中のコンビニ

          呪いからの解放

          先日、自分についてインタビューをしていただく機会があった。 これまで様々な人にインタビューをしてきたけれど、インタビューをされたことは一度もなかった。インタビューを受けることで、「取材される側」の気持ちがわかるのではないかと思った。 ここ数年、在宅勤務が主になり、飲む機会が減り、人との日常会話が減っていく中で人生の輪郭もぼやけていくような気がしていた。そんなぼんやりとしていた線が今回、様々な質問を投げていただいたおかげで、またくっきりした気がする。 しかし10年後につい

          呪いからの解放

          本を捨てる

          捨てることが苦手だ。必要なくなったものでも、自分に何かしらの縁があったものをこの手で処分するということが辛くてたまらない。いっそ、無理に奪われてしまう方がマシだとさえ思う。 食器を割ってしまった時など、粉々になった破片を眺めてホッとする自分もいたりする。特に、使い古したコップや似たようなものが増えて使わなくなっていた皿は、やっとこれで捨てられる、と。 今年の春先に引っ越しをした。転居先の2LDKの家に息子の部屋を作るため、家具や本棚をいくつか処分する必要があった。そこに入

          本を捨てる

          唇に革命を

          普段からあまり、口紅というものをつけない。 食事をしたらすぐに落ちてしまうし、落ちた後の顔とのギャップが恥ずかしい。塗りなおすために化粧直しに立つ時間があるのなら、その分、相手と話をしていたい。ずぼらな私は「それなら、最初から何もつけなければ、ギャップも生まれずに良いのではないか」と思ってしまう。 ……というのと、なぜかまったく似合わないから。 子供の頃は、母がファンだった荒井由実の「ルージュの伝言」を聴き、私も大人になったらペン代わりに口紅を使うぐらい当たり前に持ち歩く

          唇に革命を

          大学時代の恋の話

          彼と出会った場所は、大好きなロックがたくさんかかる六本木のクラブだった。「初恋の人に似ている」と言った覚えがある。一目惚れだった。今思えばかなり失礼な言葉だが、彼はその言葉を前向きに受け取ってくれ、それから何度か顔をあわせるうちに良いムードになった。会えば会うほど好きになっていく。 実はその直前まで音楽フェスをきっかけに彼の友達と付き合っていたのだが(いわゆるフェスハイというやつだ)、私からすぐに別れを切り出してしまい、応援ムードだった仲間内でちょっと気まずいことになってい

          大学時代の恋の話