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なぜ日本のデザインは時代遅れに見えるのか【海外記事メモ】

今日はこの記事を取り上げたいと思います。なお画像も以下から引用します。

前回からの続きで2回目の記事になります。内容的には前回の記事を読まなくても多分面白く読める内容かと思います。

筆者は日本のウェブデザインの異常性が以下の要素により引き起こされていると話していました。

・フォントやフロントエンド側の開発上の制約
・技術の開発と停滞
・制度上のデジタルリテラシーやその欠如
・文化的影響

本日は2番めの「技術の開発と停滞」以降からメモしていきたいと思います。少しウェブの話とは離れて、文化的側面から切り込んでいく面白い内容です。
後半へいくに従ってどんどん英語の読解難易度があがり、四苦八苦しながらところどころいつにもまして大胆に意訳してたりするのでご了承ください、。

本日もよろしくお願いいたします。

技術の開発と停滞 / 制度上のデジタルリテラシーやその欠如

もし日本への興味が出てきたのなら、同時に最先端技術と完全に時代遅れの技術とが共存する特異な環境を目のあたりにすることでしょう。
人工島であるお台場の上に等身大のガンダムが立つようなロボット技術における世界的リーダーであるという側面と、未だにフロッピーディスクやFAXマシーンを使い、2022年においてはInternet Explorerのサポート終了にパニックを起こすようなローテクな側面を持ち合わせています。

https://thenextweb.com/news/japan-loves-fax-machine-techno-orientalism

ドイツのメルケル元首相は2013年に「インターネットは未知の領域だ」などと発言し世界から嘲笑されました。
一方で日本のサイバーセキュリティ担当大臣であった桜田義孝氏は2018年、彼自身がコンピューターを一度も使ったことがないと発言し、USBドライブについて国会で質問されてもうろたえてしまうほどでした。

この事実はとても奇妙に思えることかもしれませんが、日本では未だにテクノロジーのリテラシーの発達が遅れている現状があります。

これらの要因が日本のウェブデザインを時代遅れにしている原因と推測することもできます。
一方で、日本のポスターデザインをGoogleやPintarestで検索してみてください。グラフィックデザインのレベルはウェブデザインのそれとは全く異なるものとなっていることに気づくでしょう。

日本の展覧会ポスター:レジェンド・オブ・メカニカルデザイン大河原邦男 (Tetsuya Goto "Out Of Office Project")大河原邦男 2013


文化的影響

文化的慣習や傾向、バイアスなどは多種多様なデザインから選択を行う際に見過ごせない要素となります。
それでも「これは文化だ」と言い切ってしまうことは、この議論を過度に単純化させ、日本のデザインを推し量る上での弊害となりかねません。
そして私たちは、自分自身が持つバイアスを取り除くことはほとんど不可能なことです。

我々西洋人から見れば、このウェブサイトの特異性を感じることは簡単です。

LOFT Japan(https://www.loft.co.jp/)

デザインの圧力に圧倒され、このデザインは駄作だという刻印を押してしまうでしょう。誰がこのような煩雑なウェブサイトを使うのでしょうか?

そしてこれは無知によって興味深い洞察が無駄になってしまう場所でもあります。現在、私は実際に日本文化がこの種のデザインに対してどのように影響を与えていたのかに関して教えることができる立場にありません。
しかし私は幸運なことに、日本人たちと会話する機会があります。
さらに日本に在住し、働いた経験もあります。

ある会話の中で、YouTubeのサムネイルが話題にあがりました。これらもまた、非常に過度な圧力のあるデザインになっています。

最悪なアメリカのCMに関するビデオ by Kevin's English Room(https://www.youtube.com/watch?v=6Ye2MEP_L8A)

多くの欧米のチャンネルにおいては、ワンタイトルで統一された色調と少ないフォントで、ミニマムなデザインを実現させています。しかし上のサムネイルは非常に煩雑です。
私は日本人の知人へ、なぜ日本の人気チャンネルのサムネイルはこのように非常に見にくいサムネイルになっているのか尋ねました。

彼はサムネイルはビデオに対して興味を喚起し、注意を引くような情報のチョイ出しを行うことで、このビデオが視聴者にとって面白いかどうかの判断をしやすくしているのではないか、ということを述べました。

そこで私はイギリスのビデオのサムネイルを彼に見せたところ、彼は漠然としていて退屈だと感じたようでした。

そしてこの日本人が情報を求める姿勢にこそ、私達との認識の差異を生んでいる根本原因となっているのかもしれません。
日本においては、リスク回避やそのためのダブルチェック、そして早急な判断を行うことへのためらいのレベルが欧米と比較して非常に高いと言われています。

これは集産主義的な社会のマインドセットと密接に関わり合っています。
例えば、関係会社へ資料を送る前のダブル(ときにトリプル)チェックすることは少々時間がかかることになりますが、一方でミスを犯すリスクが格段に下がり、関係者のメンツを潰すことを防いでくれます。

ウェブデザインに話を戻しましょう。このような文化的な側面が、ショッピングやニュース、政府関連のウェブサイトが外国人にとって最悪なものとなっていることに影響を与えています。
大量にあふれる"詳細情報"が、適切な購入決定を下すこと、効率的に最新の情報を収集すること、または特定の手順に関する必要な情報といったものへのアクセスをしづらくさせているのです。

アメリカ人と中国人や日本人との間にある情報の知覚における違いに関する興味深い調査もあります。
いくつかの研究によると、日本人は情報をより全体的に知覚しようとするのに対し、アメリカ人は特に気を引く1点に集中して知覚する傾向があることがわかりました。(情報元
このことが、日本語の熟練度の高い西洋人であっても日本のウェブサイトを使いこなすのに多くの時間がかかる原因のひとつとなっているようにも感じます。

そして実はこれはWEBに限った話ではありません。
パンフレットから雑誌、地下鉄の広告に至るまで様々なメディアでこのような小さいスペースに情報を詰め込んだようなレイアウトが使われています。
そして皆このようなデザインに慣れているため、誰も疑問を持つことがありません。

プロのリーフレットデザインにおいても似たようなデザインアプローチがされていることがわかる

最後にまとめると、これは「なぜ日本のWebサイトは他と異なるのか?」という当初の問いに対する絶対的な答えを探すことでも、"日本人論"というような日本人の特異性を強調するようなものでもありません。
絶対唯一の答えはないものの、私は今回技術的、歴史的、文化的な側面からこのような日本の特殊なデザインについて議論をしました。


感想:"自分たちのデザインが世界標準ではないことを自覚する"価値

今回の後編は前編にも増して、様々な研究を参照した上でのさらに深い考察がなされていました。著者自身の言語能力の高さ故か、英文の難易度が非常に高く読み進めるのに何度か挫折しかけました。。

この記事を通して我々、特に自分のように広告系のデザインを仕事にしているような人にとっては、筆者が主張するような意識を念頭に置いておく必要はあるのだろうと思いました。
もちろん大抵の仕事は国内向けであり、日本人ナイズドされたデザインによって大きな損害を被る場面は少ないかもしれませんが、時代の流れが早まりグローバル化が加速する中で、ある日突然海外マーケット向けのクリエイティブを制作することになってしまうという可能性もあるかもしれません。
こういう、「グローバルな視点を持とう」という主張は、私の大好きな中西元男さんの著書にも記述があった内容だったりしました。

もちろん外国人から批判されているからと言っていきなり西洋的なデザインに舵取る必要性はまったくないとは思いますが、あくまでも自分たちが制作しているデザインは国際標準的なものでなく、民族的な特殊性をはらんでいるという部分は何となく頭の片隅に置いておき、広告やWeb制作を進める意識が必要だなぁと思いました。

また一方で、筆者はガンダムの広告を取り上げて、決して日本のクリエイティブの品質が世界的に見て劣っているわけではない、ということも付け加えていました。

Webサイトや商材紹介のチラシのようなものばかりを作ってしまうとどうしても視点や技術が凝り固まってしまう恐れもあるため、時にはあのようなグラフィック要素の強いクリエイティブに挑戦するような姿勢もクリエイターとして大事なのだろうなぁと思いました。仕事でなかなかそういう機会はなくても、コンペなどに挑戦して技術を磨く機会を意識的に持つ必要性を感じました。

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補足:記事の筆者が丁寧に記事の参考文献も載せていたため、以下にまとめておきます。

引用元や参考文献

フォントについて
Interview with Font Designer Akira Kobayashi: https://www.smashingmagazine.com/2015/04/interview-with-akira-kobayashi/

A detailed breakdown of the creation process behind a Chinese font: https://qz.com/522079/the-long-incredibly-tortuous-and-fascinating-process-of-creating-a-chinese-font

An example of a Japanese font including glyph count from Adobe Fonts: https://fonts.adobe.com/fonts/source-han-sans-japanese#fonts-section

CJK Fonts: https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_CJK_fonts

日本と技術について
An article on Japan’s fading hi-tech image and where it came from: https://thenextweb.com/news/japan-loves-fax-machine-techno-orientalism

Bloomberg on the effects of the Internet Explorer shutdown in Japan: https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-15/end-of-internet-explorer-era-spells-trouble-for-japan-businesses#xj4y7vzkg?leadSource=uverify%20wall

The Guardian on the 2018 statement made by Japan’s former Cybersecurity Minister: https://www.theguardian.com/world/2018/nov/15/japan-cyber-security-ministernever-used-computer-yoshitaka-sakurada

Reading up on the Lost Decades: https://en.wikipedia.org/wiki/Lost_Decades

文化的側面について
Wired on several studies about perception differences: https://www.wired.com/2008/03/japanese-more-s/

A study on the same topic:

https://www.researchgate.net/publication/11645680_Attending_holistically_vs_analytically_Comparing_the_context_sensitivity_of_Japanese_and_Americans_Journal_of_Personality_and_Social_Psychology_81_922-934

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