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きょうのにき●
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本・新鮮な重力

本・新鮮な重力

あたらしい本を作りました。『新鮮な重力』というタイトルの本です。118頁B6サイズ。2024年5月19日(日)に東京流通センターにて行われる文学フリマ38で頒布します。価格は1000円。ブースは第一展示場のV-43です。この本と、ポストカード1種類だけもっていきます。文筆家の末埼鳩さんといっしょのブースで出展します。自分は一度だけ8年前に文学フリマに出たことがあります。そのときも鳩さんと参加しまし

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新鮮な重力

新鮮な重力

新鮮な重力

新鮮な重力は どこにでもある
あたらしい季節と古い季節の中心にも
ジャングルジムのうえのきつねの
口の中にも

新鮮な重力をうけて 立ちましょう
それか座ったり

川を流れるだるまを掴んだら
あなたがだるまに新鮮な重力を与えることになる
あそこにカモメがとんでいる
カメ アモメ カモモメ モメ
彼にも新鮮な重力がかかっています

わたしたちがりんごを抱きしめるとき
世界が回りだすけれ

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ぶどう畑の、砂の人

ぶどう畑の、砂の人

ロングになるのが待てなくていますぐ三つ編みをしたら毛が硬すぎて綱のたわしみたいになった。首に刺さって痛かった。

きょうはチャリで走った。きのうもチャリで走った。スマホのスピーカーからCoccoを流して走っていたら、自分は子どものころ見たあの謎の大人のひとりになってしまったんだなあと気づいて、でもすこし清々しい気持ちになった。
土日、どちらもドラム缶の見張りをした。誰かのドラム缶はすこしずつぼろぼ

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精神の穴ぼこ

精神の穴ぼこ

 雪に、傘で穴ぼこを開けてバスを待っていた。

 とてもさむく狂ったように食べてしまう。ごはんの時間のほかに、10じと15じに強烈にお腹が空く。それで帰宅するとそこら辺にあるものを手当たり次第食べてしまう。きょうはチーズトーストとスクランブルエッグを食べた。朝の気分になった、それから珍しく長く湯船に浸かったらすこし元気になったのでひさしぶりに日記を書くことにした。

 さいきんはドラム缶の見張りに

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窓窓(冬眠の短歌)

窓窓(冬眠の短歌)

都会の戸 都会の窓と わたしたち ふたつのあいだ 紫の風

この光 砂漠のひかり 忘れたら セルフレジでも まばたきばかり

どろどろの こぼしてもまだ 重スープ 地下まで垂れて 電車が止まる 

いちごあめ あったら食べる なかったら ところかまわず 貶しさえする

いつからで どこまでだったか わからない 蹴ったら飛んで 脳になる星

床を拭き メスティンを捨て 旅に出る 両端ひらいた ままの

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鈴たち(冬眠の短歌)

鈴たち(冬眠の短歌)

改札のないまちで待ち合わせするとき 一個だけ鈴を持つこと

でたらめに雪をすくって投げつける ボンボボンボン ラブレタがきた

くまのマグカップ倒してお茶を飲む 夜中いっぱい まっ白の床

わたしたち死んでもふたたび蘇る 小指の皮をむしりにだけ来る

ほんとうは便りがなくて何もない 夜ふかしばかりで奥歯がずれる

鈴の音が聴こえたらすぐダンクする 無音のバスケで年が暮れたよ

ここに光るものはなにもない 

ここに光るものはなにもない 

 十字架が光って、哀しいシーンを照らす夜。
 それは目の前にあるわけではない。どこをどう通っても誰かに怒られたり咎められたりすることもない風が、おなじように誰に止められることもなく際限なしに冷たくなった風が、光る十字架のうえから・誰もいない畑から・休む蝶の羽と羽のすきまから、とにかくあたり一帯を通り抜け自分のところまでやってくる。ただそれだけによるもので、実際には十字架どころか、ここに光るものはな

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古墳と光(冬眠の短歌)

古墳と光(冬眠の短歌)

街をぬけ ドーナツ持って 草原に ガラガラのこし 古墳で眠る

さむかった あたたかかった おとといの にきを書いたら 爪がとれたよ

アメリカを あめにかといい ザリガニを にゃりにゃりという 街灯がつく

起こしてね そう言うわりに 立ちつづけ 真っ赤なひとみで かもめをみるね

エメラルド グリーンたすと エメラルド グリーンになる 算数がある

左向き ねるとたいてい 夢を見る わたしと誰

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これからくる終末にむけて

これからくる終末にむけて

イラストのくまは茶色なのにニュースで見る熊は黒い、と言ったらそれはヒグマであれはツキノワグマといわれた。どっちがどっちか思い出せない。

さいきんなんだかすごく気分がいい。でもそれは悪いことらしい。自分の気分がすごく良いことが悪いことなのは哀しい。アンパンマンのくらやみマンもこんな気持ちなのかもしれない(くらやみはどこにでもある。とか言うブラックホールのキャラクタ)。詳しく言うと、すごく気分がいい

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歯の使者がくる

歯の使者がくる

またサナトリウム(と呼んでいるだけの何もないところ)に戻ってきてしまった。もう1ヶ月ちかく居る。夕方に水を500ml持って散歩にいく以外ほとんどなにもしていなくてからっぽになった。銀行口座の残高は1円で、仕事もなく恋人もいない。2016年以来の何もなさ。でも2016年はなぜか東京にいてしかもいまより7才若く10キロもやせていた。病気もここまでは悪くなかった気がする。7年かけて、ふりだしよりずっと前

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みずうみ

みずうみ

こころのふちから溢れる水の
うつくしいことばを あなたにかならず
それから こぼれた水の一滴を握って
窓辺の葉のうえに そっと垂らすと
ささいなきらめきを眺めていたあなたの
あたまのなかには 畑のあたらしい
芽のあたらしい 緑ときみどりと白と
透明がうまれる

夜がふける 川のほとりで
息をしているわたしたちのそばを
飛んでいった丸々とした鳥の
おなかの大きさは わたしの怖さの
ほんのすこしを形に

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2021

2021

●2021

2021年は目まぐるしい愛の年だった 起こるとおもっていなかった不思議なことがたくさんおきた 北海道にいった 精神病院に入院した いろいろな花のお花見をした 夏は朝の海に入った こころがあらわれた ドライブにでかけた 九州のあちこちにいった ウイルスはまだみんなのそばから居なくならなかった ナイトマーケットをした ほんとうにたくさんの方にみてもらえた 秋は恋人と旅に出た 2週間のお

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ちいさなくまのゆめ

ちいさなくまのゆめ

 この冷たい星のかたすみでしずかに朝がやってくるのを待っている小さな小さなくまがいた。くまは白く、まるでぬいぐるみのようにやわらかいはだをして、ひとみは葉のさきの朝露のつぶのようにぬれて光っていた。波の立つうみのそばの岩のかげにくらし、いつも凍えていた。この星は暗くとても冷たい星だったから。

 くまはひとりきりで暮らしていた。岩の上に打ち上げられた藻をたべて生きていた。くまはとても小さいままで、

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神さま

神さま

生きていることをよろこべる方法が、自分が枯らした花のミイラをながめることしかないのは空想ではなくそうなのだ。花屋に行っては花を買い、せっせと植えて水をやり、朝も昼も夜も雨の日も水をやり、それから自分が飲んだコップの水が余っていたらそれもやり、土が流れていっても構わず水を、やがてたぷたぷになった鉢のなかで花が腐ってしまうころ我にかえると、ぱったり水をやらなくなって、そうして花はミイラのすがたになって

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