ワイドショー ~オルテガの「大衆の反逆」を読んで

在宅勤務を始めてから、いろいろなことに気づきました。その1つがワイドショーから流れる情報です。自分から積極的に見ることはなくても、自宅にいるとワイドショーを見る機会があります。受動喫煙のようなものでしょうか。様々なコメンテーターと言われる人たちがコメントし、それがネットニュースで引用されます。そして世の中の太宗の意見のように扱われていきます。

その善し悪しはともかくとして、最近発刊された佐々木孝訳のオルテガの「大衆の反逆」(岩波文庫)に興味深い記述がありました。

オルテガはスペインの哲学者で、「大衆の反逆」はオルテガの代表的作品です。今回、佐々木孝氏の遺稿となる新訳が発刊されました。

オルテガは、「大衆とはあくまで『平均的なひとたち』のことを言う」とします。

大衆は、みんなと違うもの、優れたもの、個性的なもの、資格のあるもの、選ばれたものをすべて踏みにじろうとする。みんなと同じでない者、みんなと同じように考えない者は、抹殺される危険に晒される。そしてもちろん、この場合の「みんな」は、本当の「みんな」ではない。」

この「大衆」を「コメンテーター」と置き換えてみるとどうでしょうか。「平均的なひとたち」の代表者のようにコメントするひとたち。

オルテガは「平均人」についてこうもいいます。「平均人の『思想』は言葉本来の意味では思想でもないし、彼らの所有しているものも教養ではない」「彼は意見を述べたがるが、そのために必要な条件や前提を受け入れようとはしない。彼の『思想』が本来の思想ではなく、艶っぽい小唄のように、言葉に包まれた欲望であるのはそのためである」

読んでいるうちにワイドショーを想起してしまいました。







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