【BL二次小説】 アイラブ珍獣①
所々に煌めく大小のカボチャ。
思い思いに仮装し練り歩く人々。
街は華やぎ活気付いている。
そう、今日はハロウィン。
荒北は初めての仮装に胸踊っていた。
誰も自分と気付かない。
その状況で電車に乗る。
スリル満点だ。
大学生になってから最初のハロウィン。
今夜は恋人である新開のアパートで一緒に過ごす約束になっている。
荒北は張り切って数日前から仮装の準備をしていた。
新開の驚く顔が目に浮かぶ。
彼は喜んでくれるだろうか。
帰宅ラッシュ時刻の電車内。
混んでいる筈の車両だが、荒北の周りだけは何故か人が寄り付かず空いていた。
しかしウキウキ気分の荒北はそれに気付いていない。
新開のアパートのある最寄り駅に着く。
駅前に出ると、賑わう人々が一斉に荒北に注目した。
と同時に、モーゼのようにサーッと荒北の前の道が空く。
「なにあれ」
「化け物?」
「ママー、あれ珍獣?」
「しっ!見るんじゃありません!」
荒北を遠巻きに見る住民達が警戒心を露にする。
そこへ会社帰りの中年リーマン2人組が荒北に近寄って来た。
「おっ!懐かしいコスプレだねオネーサン!」
「似合ってるよ。一緒に呑みにいかない?」
荒北はキッ!と睨み付け、威嚇する。
「寄ンじゃねェタコ!!」
それを聞いて喜ぶ中年リーマン達。
「うおっ!いいねぇ!」
「なりきってるねぇオネーサン!」
バシーーーン!!
荒北は持っていた竹刀を道路に叩き付けて怒鳴った。
「オレぁ男だ!!」
「ええっ?」
「あっホントだ!」
中年リーマン達はガッカリして去って行った。
ピンポーン。
新開のアパートに着き、インターホンを押す。
「はーい」
ガチャ。
新開が玄関を開ける。
荒北はおなじみのセリフを言った。
「トリック・オア・トリート」
「誰!?……えっ?やっ、靖友??」
荒北は驚く新開の顔に満足してニヤリと笑った。
「お菓子くんなきゃイタズラすんぞゴラァ!」
「うわああああ!」
荒北は玄関ドアを勢い良く開放し、固まっている新開を強引に押し戻しながら中へ入って行った。
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