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唐仁原昌子
2023年2月26日 19:13
僕の彼女はいつもマイペースで、のんびりしている。お休みの日なんて、放っておいたら本当に昼前まで起きない。仕方がないから、僕は一生懸命起こす。「ねえ、朝だよ。せっかくの休日なのにって、また言わなきゃいけなくなるよ」「…んー…」 僕の声が聞こえているんだかいないんだか、曖昧な返事を眠りの底から投げてくる。無防備すぎるこの顔を知っているのは僕だけだと思うと、起こすことも尊い仕事な気すらしてくる。
2023年2月19日 20:33
ある昼下がりのこと、森のどこかでドングリの落ちる音がしました。それはリスの耳にはっきりと届き、彼女は立ち上がりました。お腹が空いた気もして、すぐにでも行きその実を得たいと考えたからです。「どうしたんですか。今はじっと座る時間ですよ」 おっかない顔をしたフクロウ先生は、リスにそう言います。「先生、ドングリの落ちる音が聞こえたんです。私行かなくちゃ」「私には聞こえませんでした。そして何より
2023年2月12日 20:51
ーー人生は選択の連続です。あなたの人生は、あなたのものなのだから、まずはあなたが納得した選択をすることが、重要だと思います。ーー 魔女からの手紙は、そんな書き出しで始まっていた。 真島美代…それが魔女の名前だ。 高校のときお世話になった先生であり、名前を省略しただけの安直なネーミングでつけられた愛称で、私たちは彼女を「魔女」と呼んでいた。ただし、彼女は「魔女」と呼ばれていることは恐らく
2023年2月5日 23:52
「きみ、もう少し静かに歩きなさい。さもないと、せっかくここまでたどり着いた星たちが、驚いて散ってしまいますよ。そうそう、上手。」 ざあん…ざあん…と、波は一定の律動で行ったり来たりしています。その音に耳を傾け、その動きに足先を浸しながら、私は姉さまの言葉を胸に、よりいっそう気をつけつつ波打ち際を進みます。 姉さまは波の上を漂うように、ゆったりと私の少し先を美しく進んでいきます。何となく、その