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「プルシアンブルー色の命」詩


ふるさとへ 戻ってきた。
天井の太い梁(はり)が
100年の 重みを 
ずっしりと 支えている。
かやぶきの 我が家は
いつも 笑いが 
小川の瀬音のように流れる。
「こっちに こられんけぇ」
「この菓子 ませるわか」
富山弁が 耳に心地よい。
電灯の光は、愛犬の肉球のように柔らかく
すべての物を やさしくタップする

風の強い日
広い仏間で 耳を澄ませば
遠い潮騒が 響いて来る。
海が 故人への
鎮魂歌を 吟じているようだ。

初夏の夜
窓を 開けると
カエルの 大合唱。
机の上にある 小石を
鳴き声の 真ん中に 投げる。

突然 歌声は止み
田んぼ 一面に
月明かりの 青白さが 広がる。
やがて 合唱が再開する。
カエルたちは 月に
恋をして 一晩中 
切なく啼き続ける。 

春の 新月の夜
海岸に 命の営みを 見に行く。
真黒の闇に 浜の一部だけが 
コバルト・エメラルドグリーン色に 
染まり 点滅する。

古代に 星くずから 作られ
海の底で 静かに 輝いてきた 
無数の 細やかな 蒼い玉石が
人魚の手を 借りたように
浜に 敷き詰められる。

ホタルイカは 浜辺に 自ら打ち上がり
短い命を 精一杯 燃やし尽くして 輝く。
自然の はかなく 悲しい 舞姿だ。

地元の人は「ホタルイカの身投げ」と呼ぶ。
プルシュアンブルーの
神秘の織物が 浜を 着飾る。

その神々しさには 都会のどんな 
イルミネーション・ショーも
ひれ伏すだろう。

透き通った 冷気が 
白い息を 作る季節がくると
家は 雪に抱かれる。
こたつを囲んで 今日の出来事を
熱い言葉で話す。
オリオンは 冬空で舞い上がり 
子供の心のように キラキラと 
燃え続ける。

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