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ハイネ「ぼくは恨まない…」(ドイツ詩を訳してみる 36)
Heinrich Heine (1797-1856), Ich grolle nicht (1827)
ぼくは恨まない 心がずたずたになっても
きみは二度と戻らない! ぼくは恨まない。
きみがどれだけ眩いダイヤで身を飾っても
きみの心のなかの闇を照らす光などない。
そんなのとっくに分かっていた。ぼくは夢できみを見たんだ。
ぼくは見たんだ きみの心のなかに巣くう闇を
ぼくは見たんだ きみの心をむ
ハイネ「ばらや 百合や 鳩や 太陽が…」(ドイツ詩を訳してみる 35)
Heinrich Heine (1797-1856), Die Rose, die Lilie, die Taube, die Sonne (1827)
ばらや 百合や 鳩や 太陽が
みんな 好きで 好きで しあわせだった。
でもそんなものもう好きじゃない、好きなのはただひとり
小さくて 繊細で 清らかで かけがえのないひと、
そのひとそのものが すべての愛のみなもとで
ばらであり 百合であり
マイヤー「ローマの噴水」(ドイツ詩を訳してみる 34)
Conrad Ferdinand Meyer, Der römische Brunnen (1882)
噴き上がった水が降りそそぎ
大理石の水盤の縁までひたすと、
水しぶきのヴェールの向こうで
二つめの水盤の底へこぼれ出る。
二つめの水盤も満ちあふれると、
三つめの水盤にうねる水を渡す。
こうしてめいめいが受け取りつつ与え、
流れつつとどまっている。
(山口四郎・檜山哲彦の訳を参考にした。)
ハイネ「きみはまるで花のように…」(ドイツ詩を訳してみる 33)
Heinrich Heine, Du bist wie eine Blume (1827)
(森泉朋子・山枡信明の訳を参考にした。)
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この詩には信じられないほどたくさんの作曲家が曲をつけています。主要なものだけを紹介します。
シューマンによる歌曲[楽譜](1840年、『ミルテの花』第24曲)
フランツ・リストによる歌曲[楽譜](1843年/1849年)
アントン・ルビンシテインに
格を気にするひと(訳者あとがき2)
このところ翻訳する中で、格を気にさせすぎない日本語にする、ということを気にしていることがある。
学校で習う英文法では
〈主格〉 I 私が
〈所有格〉 my 私の
〈目的格〉 me 私を/私に
というのがある。ドイツ語やフランス語にもだいたい同じようなものがある。日本語文法では「ガ格」「ヲ格」「ニ格」などと呼ばれていて、これも似たようなものだ。
しかし、ぼくらは普段それほど格を意