高橋勇造

認定NPO法人Kacotam理事長。主に北海道で子どもと学習を通して関わるNPOを運営…

高橋勇造

認定NPO法人Kacotam理事長。主に北海道で子どもと学習を通して関わるNPOを運営しています。「自己の意思があるところに価値がある」

マガジン

  • かんがえる・こうどうする・たのしむ カコタム

    • 234本

    Kacotamのメンバーが、思いおもいに活動に関わるアレコレを書いていきます。

最近の記事

拠点型学習支援の限界とアウトリーチの展開

これまでの動き世の中の動き   Kacotamが活動し始めた当初(2012年)は、ひとり親世帯の子どもを対象とした学習支援や、生活保護世帯の子どもを対象とした学習支援が試験的に行われ、少しずつ行政からの委託を受けて、NPOが学習支援を展開してきた。その後、生活困窮者自立支援法が施行され、生活困窮世帯の子ども(主に中学生)を対象とした学習支援がNPOや民間企業に委託され、全国的に行われるようになった。  一方で子どもが無料あるいは低価格で食事をすることができる子ども食堂が約7,

    • 児童養護施設等で暮らす子どもと学習を通して関わったこれまでの10年間

      学ボラとは  学ボラとは、児童養護施設や母子生活支援施設など、社会的養護に関わる児童福祉施設に訪問して学習支援を行う活動である。基本的に週1回程度訪問し、子どもと1対1で学習を進めていく。母子生活支援施設は、拠点型の学習支援と同様に、複数人で訪問して子どもと、1対1で学習をしている。 学ボラで大事にしてきたこと 「約束通りに行き、一緒に過ごす。それだけでも意味がある。」  学ボラで関わる子どもは、様々な背景で施設に入所しており、親などから十分な愛情をもって育てられなかっ

      • 一時保護所からつながる学びの場

        これまでの子どもとの関わり  民間の一時保護所での学習支援を開始して約1年が経過した。経緯や活動については参照していただきたい。  これまでに小学生~高校生32名の子どもと関わってきた。子どもたちは退所していくことが前提にあるため入れ替わっていくが、活動しているメンバーも年度が変わり、ほぼ入れ替わった。4月からお互いにとって初めてであり、最初はぎこちなさがあったが、約4ヶ月が経過し、少しずつかたちとなってきている。しかし、子ども一人ひとりの関わりの中で試行錯誤しているのは

        • 子どもの意思を尊重するということ

          意思を尊重するって難しい 子どもの意思を尊重すること、子どもと関わるうえでよく出てくる言葉だと思う。これは突き詰めれば突き詰めるほど難しいし、よくわからなくなってしまうことでもある。  Kacotamでも「子どもの意思を尊重する」ということを子どもとの関わりで大事にしている。メンバーが活動していくなかで、「意思を尊重するって何だろう?」の壁にぶつかる。  拠点型学習支援の場合、学習に取り組める環境づくりという枠があり、他の子どもやメンバーがいて、それぞれに感情があって、関

        拠点型学習支援の限界とアウトリーチの展開

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        • かんがえる・こうどうする・たのしむ カコタム
          234本

        記事

          施設を転々とさせられる子どもたち

           自分のなかでショックであった。親と一緒に暮らせない、親戚も頼れない、受け入れ先の児童福祉施設もなく、一時保護所と施設を転々とさせられる子どもがいる。こんなことがあって良いのだろうか。社会的養護とは何なんだろうかとも思った。  子どもは、関係性と声掛け一つで反応が大きく変わる。同じ言葉を言っても、人が変われば、反応も変わる。だからこそ、子どもと関わるうえで、発する言葉は気を付けなければいけない(自戒を込めて)し、その子との関係性がどのようなものなのかも意識する必要がある。た

          施設を転々とさせられる子どもたち

          「非認知能力が発揮できる環境」という視点から活動を考える

          『私たちは子どもに何ができるのかHELPING CHILDREN SUCCEED』を読んで、非認知能力が発揮できる環境という視点からKacotamの活動を少し考えてみました。  様々な逆境にある子どもにとって、粘り強さや自制心、楽観的に考えるなどの非認知能力は重要であるとされている。非認知能力は、読解や計算のように教えられてできるようになるものではなく、「環境」によって非認知能力が発揮できるかどうかが決まる。その環境には、子どものモチベーションを高める要素でもある「有能感」

          「非認知能力が発揮できる環境」という視点から活動を考える

          一時保護所の学習支援を始めて2ヶ月で思うこと

           9月8日より他団体が設立した民間の一時保護所で、学習支援を開始し、2ヶ月ちょっとが経つ。その学習支援を通して思うことを書いてみる。 そもそもの経緯 児童養護施設柏葉荘を運営している社会福祉法人扶桑苑からの依頼により開始した。もともと児童養護施設柏葉荘には学習支援で訪問していたこと、地域の子どもたちを対象とした学習支援を協働で行っていることから、「学習と言えばカコタムでしょ」ということで、有難いことに依頼をいただいた。その依頼があったのは、7月頃。開始前の2ヶ月前だ。話があ

          一時保護所の学習支援を始めて2ヶ月で思うこと

          子どもとの日常2‐進学の壁‐

          住宅街にある公園を通り、少し歩くと、地域小規模児童養護施設がある。階段を上がり、インターフォンを押して、中に入ると、職員さんとフクロウが迎えてくれる。ちんたらしていると、フクロウに警戒され、羽を広げて、今にも飛びかかろうとする。 洗面所で手を洗い、食堂で勉強するときもあれば、その子の部屋で勉強するときもある。いつもは「こんばんは。」と言って、入って良いかどうか確認をして入る。この日は、「こんばんは。」ではなく、「こんばんわんこそば」と言ってみた。その日よりももっと前に、担当

          子どもとの日常2‐進学の壁‐

          子どもとの日常1

          午前中。パソコンの電源を入れ、LINEWORKSを立ち上げる。こっちから「準備OK?」と送ってしばらく待った。 5分後に「つないで良いですか」と来て、ビデオ通話にする。 「おはよう。すごい、眠そうだね」 「さっき起きたから」 「昨日も遅くまで部活だったの?」 「そう。マジねむ」 今は施設に訪問することができないので、オンラインで話をしている。高校生になってからは、普段は学習よりもお話がメインになり、テスト前は学習がメインとなる。学校、部活、バイトと毎日くたくたになりなが

          子どもとの日常1

          非日常を少しずつ日常に

          夕方、自宅から車で30分くらいかけて地域小規模児童養護施設に向かう。車を停めて、ピンポン鳴らして、「Kacotamの高橋です」と言う。 インターホンから、背景から子どもの声が聞こえる中「はいどうぞー」と職員さんから声があり、鍵が開く。 ドアを開けると、「こんちはー」と走って、担当のする子どもがやってくる。「おう、こんにちは。お邪魔します。」と言って、中に入る。 その日は「今、休憩中」と言って、施設職員さん手作りのゼリーを食べつつ、コップにジュースを入れていた。 「先生

          非日常を少しずつ日常に

          NPOでKacotamではたらくこと

          NPOのイメージNPOではたらくということに対してどのようなイメージを持っているだろうか。恐らくそもそも「はたらく」というイメージを持っていないことが多いのが大半ではないかと思う。自分自身も「はたらく」イメージが全くなかった。だから、お菓子の卸会社にはたらきながら、Kacotamという活動をしていた。 NPO業界ではたらくことは、経済的な面や世間の信頼度など、厳しい現実がある。NPO法人=ボランティア、非営利=お金を稼いではいけないというイメージが根強く、人件費にお金を使う

          NPOでKacotamではたらくこと

          「はたらく」と自己実現のあいだ

          今のKacotamという活動を開始してから、もうすぐ9年が経つ。最初は、お菓子の卸会社に勤めながら、休日や仕事終わりに活動していた。 その頃、Kacotamという活動は趣味であり、ライフワークであり、興味のあるものでもあり、会社ではたらくことは、お金を得るもの、学ぶところであった。 はたらくことは、自己実現という、自分のなかに明確になっていたり、もやっとしていたりして、でも無意識・意識的にありたいと思っているもの、それを構成する一部だと思う。 生活を送るなかで、自己実現

          「はたらく」と自己実現のあいだ

          CafeBlue×GelateriaWHITE×Kacotamの期間限定寄付付きメニューができるまでの話。

          連絡したのが今年の3月頃。たいていコラボの提案の連絡をしても無視されることが多い。相手にとってはよくわからないNPOからの連絡だからしょうがないかもしれない。でも、CafeBlueに連絡した際に、すぐに返事が来て、会う機会をいただいた。内心「おおおー」とワクワクする気持ちでいっぱいだった。 NPOの役割の1つに、既存の行政サービスではまかないきれない、そもそも制度としてないということに対して、社会課題ととらえ、解決に向けて活動していくことが挙げられる。その活動には、社会全体

          CafeBlue×GelateriaWHITE×Kacotamの期間限定寄付付きメニューができるまでの話。

          子どものやりたいことをカタチにする環境に。

          子どもたちと学習を通してかかわっていくと、子どものなかで何かやりたいことが出てきて、それをやろうとするときに見えない”壁”が出現してくる。それは、経済的な理由であったり、親にこれ以上負担をかけたくないという気持ちであったり、親の価値観とのずれ、「無理だよ」「できないんじゃね」という気持ち、遠慮、一歩踏み出せない気持ち…と様々である。 でも、その見えない”壁”は、第三者から見ると意外と薄く、壁をジャンプする気持ちと周りの人に話しをする勇気があれば、乗り越えられることもある。だ

          子どものやりたいことをカタチにする環境に。

          8年後、ふと思い出す「からんこえ」に。

          学び支援事業の「つながりができる環境づくり」の一環として、児童養護施設内における居場所カフェ「からんこえ」を6月より始めた。Kacotamを中心に札幌市内で子ども・若者支援をしている3団体が協働で行い、児童養護施設にいる子どもたちとアナログゲームを通して関わる。 活動背景社会的養護に関わる児童福祉施設にはいくつかあり、その一つに児童養護施設がある。以前は孤児院と呼ばれ、両親がいない子どもが多かった。今は主に虐待によって、入所しているケースが多い。多くの子どもが高校卒業ととも

          8年後、ふと思い出す「からんこえ」に。

          「学習支援」から連想されるものとは?

          Kacotamの活動を紹介するときに、なぜKacotamが活動するのかという話をするなかで、進学率や塾・習い事の環境による格差を示すことが多い。また、学ボラやスタサポの活動だけを見ると、塾の代替手段として学習支援をとらえられやすい。それもあって、進学が大事だから、そのために学習支援をしているととらえられることがある。 でもそうとは考えていない。Kacotamは、「すべての子どもが学びの機会に出会い、自己実現に向けて挑戦できる社会」を目指している。子どもそれぞれで自己実現の在

          「学習支援」から連想されるものとは?