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一時保護所からつながる学びの場

これまでの子どもとの関わり

 民間の一時保護所での学習支援を開始して約1年が経過した。経緯や活動については参照していただきたい。

 これまでに小学生~高校生32名の子どもと関わってきた。子どもたちは退所していくことが前提にあるため入れ替わっていくが、活動しているメンバーも年度が変わり、ほぼ入れ替わった。4月からお互いにとって初めてであり、最初はぎこちなさがあったが、約4ヶ月が経過し、少しずつかたちとなってきている。しかし、子ども一人ひとりの関わりの中で試行錯誤しているのは今も変わらない。

活動当初からのねらい

 一方で当初のねらいであった一時保護所から、退所後に学びにつながるケースが少しずつ増えてきている。一時保護所を退所するときには必ずKacotamリーフレット、中学生の場合はゆるきちのカードも合わせて渡している。家庭引き取りの子どもにはスタサポ(拠点型学習支援)を利用できる旨を伝え、施設や里親への措置の場合は、学ボラ(訪問型学習支援)を利用できる旨を伝えている。

 たいてい学習ができる場所があるよと伝えても、措置先の施設職員から学ボラというのがあるよと伝えても、知らないところに行ったり、知らない人と学習したりすることに抵抗感を示して、ニーズがあっても利用につながりにくい子どもが少なくない。
 しかし、他の子どもとメンバーが一緒に学習して楽しそうに話をしている姿を見ていたり、ポルで実際に学習したりする経験があるのとないとでは、反応が違う。ポルで一緒に学習したり、遊んだりした経験は、Kacotamに対する信頼へとつながり、学習支援を利用してみようかなという一歩につながる。

学ボラにつながり始める

 先日、学ボラを利用する施設に、これから訪問を開始するメンバーと一緒に伺い担当する子どもと顔合わせをした。その施設にはポルで関わっていた子どももいたことから、施設職員に許可を得て、玄関で少し話をする機会をもらった。玄関で待っていると、その子が来て、手には一時保護所を出るときに渡した団体のリーフレットを握りしめていた。「Kacotamのリーフレット持っていてくれたんだね」というと、「ボロボロになっちゃったけどね」と言ってずっと顔を下げていた。その姿を見て胸が熱くなった。色々とお話をしたが、顔をあげたのは最後にお別れをするときだけであった。
 一時保護所を出るときに「もしここ(一時保護所)と同じようにKacotamのメンバーと一緒に学習したり、お話したりしたいときは、施設職員さんに、このリーフレットを見せて、利用したいことを伝えてね」と伝えていたが、なかなか思うように伝えられなかったようだった。でも、その子なりに伝えようと頑張っていたのをその後の話から推測ができた。この後、学ボラでメンバーと一緒に学習をすることで話を進めている。

 また、ある子は、ポルでの関わりを終えた2ヶ月後くらいから学ボラを開始した。ポルの時から少しだけ関わりがあったメンバーが担当することになったこともあり、関係構築を図るうえでスムーズに進められた。一時保護期間に比べて、格段に学習に取り組む姿勢が違っていた。Kacotamのメンバーと一時保護期間に過ごした時のことを施設職員に話しをしてくれていたようだった。
 学ボラにつながらなくても、他の用事で施設に訪問したときにお話をしたり、カードゲームをしたりすることもあった。そういった弱いつながりも持ち続けている子どももいる。

次に目指すこと

 現状、家庭引き取りになった際にスタサポ(拠点型学習支援)やゆるきちにつながったケースは残念ながら今のところない。学ボラにつながるケースがあったり、施設内で弱いつながりが維持されたりしていることを考えると、全くニーズが無いからというわけでもないと推察する。しかし、現状つながっていないことを考えると、一歩何かが足りないことを示している。
 家庭引き取りになった際に本人の中で少しでも何か求めるものがあるのであれば、児童相談所と連携して、一人ずつ丁寧につながりが維持できるようなことができないかと考えている。子どもだけに一歩踏み出すことを求めるのではなく、半歩こちらも近づき、子どもが半歩踏み出せばつながることができるような環境をまずは目指したい。そのような環境をつくるためには、見えない壁を乗り越えなければならない。なかなか高そうだ。

 原則2ヶ月以内という短い期間でも、子どもの中に何か残るものがある。一時保護期間は、子どもにとって安全が確保されている一方で、その先どうなるか分からない、いつ出られるかも分からない、見通しを持てずに過ごさなければならない期間でもある。そんなもやもややイライラと向き合いながら、過ごしている。
 私たちは、そのような状況下にある子どもと、学習したり、お話をしたり、遊んだりして過ごしていく。子どもがポジティブな気持ちを抱いた経験を1つでも多くもって、次のステップに行けるように。



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高橋勇造
NPOの運営や子どもとの関わりなどを中心に記事を投稿します。サポートしていただいたお金は、認定NPO法人Kacotamに寄付をして、子どもの学びの場づくりに活用します。