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児童養護施設等で暮らす子どもと学習を通して関わったこれまでの10年間

学ボラとは

 学ボラとは、児童養護施設や母子生活支援施設など、社会的養護に関わる児童福祉施設に訪問して学習支援を行う活動である。基本的に週1回程度訪問し、子どもと1対1で学習を進めていく。母子生活支援施設は、拠点型の学習支援と同様に、複数人で訪問して子どもと、1対1で学習をしている。

学ボラの学習風景

学ボラで大事にしてきたこと

「約束通りに行き、一緒に過ごす。それだけでも意味がある。」
 学ボラで関わる子どもは、様々な背景で施設に入所しており、親などから十分な愛情をもって育てられなかったり、虐待をされたりしてきた子が多い。そのような経験から、他人に対して不安感や恐怖心、不信感を抱いていることが多い。継続的に同じ時間を過ごしていく中で、「この人は自分に危害を加えないんだ」「自分の話を聴いてくれる」という感覚が生まれ、安心感を抱くことにつながるとKacotamでは考えている。ある子どもは他の子どもへの暴力や暴言が学ボラを開始してから、少しずつ収まるようになったり、2年半経ってようやくこちらの言ったことを信じてもらえるようになったり、学習意欲がぐっと上がったり、施設職員には話しづらい話をするようになったり…。学ボラのそうした学習を通した関わりは、子どもにとって何かしら意味をもつ。

10年間で関わった子ども

 これまでの10年間を通して、自分自身9名の子どもを担当し、団体全体では全24施設で324名の子どもと関わってきた。Kacotamを立ち上げる前に児童養護施設で一人でボランティアをしていた頃は、お休みの日や仕事が終わった後に週1回~2回程度訪問し、年間で1名~2名の子どもと関わっていた。決して一人では関わりきれない人数だ。これも代々ボランティアメンバーが、施設との信頼というタスキをつなぎ、その活動を支えるKacotamサポーターがいたからこそだと思っている。また、活動施設も児童養護施設のほかに地域小規模児童養護施設や児童心理治療施設、自立援助ホーム、ファミリーホーム、里親家庭など、少しずつ広がっていった。地域も札幌市・北広島市・室蘭市と少しずつ拡大している。

 この10年間で子どもとの関わりを通して、普段生活していくなかでは、決して考えることもないこと、感じたことが無い感情と出会うことが多くあった。そのなかでも、親あるいはそれに代わる人から愛情を受けて育つことがどれだけ重要なのか、それは今だけに意味を成すのではなく、その先にも様々なかたちで影響してくることがあるということだ。恐らく何となくそれは大事だろうというのは、誰もが知っている。でも、それがどう大事でどう日常とつながるのかということまでは分からない。それを活動を通して垣間見ることができたのは自分にとって大きかった。

学ボラでの個別的な話しは下記に記載している。

他活動へのつながり

 学習を通して関わる中でお仕事カコタムにつながるケースが多い。これまでに獣医、介護福祉士、フラワーデザイナーなどに話を聞きに行った。また、学ボラに加えて、もっと学習をしたいという子どもがスタサポの拠点に来て学習するケースも最近見られる。

 これまでに長い子どもで6年間関わってきた。一人の子とじっくりと関わり、子どもが成長する姿を長い年月にわたってみることができるのは、この活動ならではである。

他活動からのつながり

 一時保護所における学習支援「ポル」で関わる子どもが、学ボラを希望した場合、継続的に学習支援を実施することができる。現在、施設措置になった子どものうち、2名が学ボラを利用している。そのように別の活動を通して、カコタムのメンバーと一緒に学習するイメージができている子どもは、つながりやすく、メンバーと関係構築も早い。また、どのような学習状況なのか事前に担当メンバーに共有することもできる。

次の10年に向けて

 次の10年では活動施設の拡大を進めていく。北海道には児童養護施設だけでも、23施設ある。地域小規模児童養護施設を含めるともっと多いだろうし、先述したようにいろいろな種類の施設がある。どの施設に行ったとしても、学ボラを利用できる環境にある。そのような未来を目指している。
 各地域に支部をつくり、その地域にいるメンバーで子どもの学びをサポートする。地域資源が少ない地域では、オンラインによる学習支援を取り入れながら、学ボラを利用できる環境を整えていく。対面とオンラインを組み合わせもあるかもしれない。そして北海道全域で、地域に関係なく、施設で暮らす子どもと信頼できる大人がつながり、様々な学びの機会にもつながっていく。そんな学ボラの未来を想像している。
 そのためには各施設の学ボラへの理解、連携が必要だ。信頼を獲得するのにも時間が要するだろう。でも、始めた当初の何もないゼロの状態ではない。これまで積み重ねてきた事実・信頼、そしてメンバー・Kacotamサポーター、その他応援していただいている方々がいる。これからも多くの方の協力を得て、思い描く未来に近づいていきたい。


NPOの運営や子どもとの関わりなどを中心に記事を投稿します。サポートしていただいたお金は、認定NPO法人Kacotamに寄付をして、子どもの学びの場づくりに活用します。