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「また来なくなるんでしょ」から「バイバイ」に変わったとき

2011年から児童養護施設に訪問して、子どもと一緒に学習をするようになって9年が経つ。最初は1つの施設に訪問していたが、今はKacotamという団体として活動するようになったので数ヶ所に訪問している。

2012年頃から、ある児童養護施設では、施設の要望によってテスト前だけ訪問していた。当時車を持っていなく、一般企業に勤めていたので、仕事が終わった後にチャリで40~50分くらいかけて行っていた。施設は坂の途中にあるので、そこまでの坂がかなりきつい。はーはー言いながら、やっとの思いで着いていた。

そこではテスト前3日間くらい訪問して、食堂に中学生が集まって一緒に学習をする。分からない問題を一緒に解いたり、こちらで問題を作ったりしていた。だから、子どもたちと会うのは、6月、11月、2月の3回と、施設のお祭りの1回の計4回だった。もくもくとワークの問題や施設にある問題集を解いている子もいれば、時事問題用の問題をひたすら覚えている子がいた。

いつも帰り際には、中学生Aさんと職員さんが見送ってくれていた。そのときAさんが「次いつ来るの?また来なくなるでしょ?」と言っていた。「今度のテストは11月だからまたそのときに来るね」と言って帰った。その次に訪問したときも、問題を一緒に解いたり、学校の話をしたりした。特に多かったのが、Aさん「テストのときにワーク提出があるから手伝ってよ」自分「えー、あと20ページくらいあるじゃん。なかなかきついね」というやりとり。

初めて施設のお祭り行ったときには、勉強していたときよりもはるかに一生懸命に出店でお菓子を売っていた。メンバーと一緒にAさんがいるお店に行ったら、隠れてどこかに行ってしまった。

訪問していくうちに呼び名が「高橋さん」から、「高橋」に、そして「ゆーぞー」に変わっていった。Aさん「ゆーぞー次いつ来るの?どうせ来なくなるでしょ?」「また来るよ。次回は2月だね」と言って帰る。それが2年半くらい続いた。

Aさんが中学3年生頃くらいに途中から呼び名が「ゆーぞー(勇造)」から「ガリ造」になった。自分がやせていることと、中学生のときにテスト2週間前から勉強しているのを話したことを受けてのガリ勉、その二つ合わさってそうなった。いつものように帰り際玄関で靴を履いていると、Aさんから「じゃあね、ガリ造。ばいばい」と言った。言葉が変わった。「ばいばい」に。嬉しかった。

高校生となってからは、その学習会には参加できなかったので、会う回数は減ったが、ときどき顔を出してくれて、高校で部活を頑張っている話とか、姉弟の話とかをしていた。

自分は特に何かをしたというわけでもないし、Aさんが自分と関わるなかで劇的に変わったというわけでもない。ただ6年近く同じ空間で同じときを過ごしていくなかで、何かを感じて、何かを得て、言葉が変わった。

Kacotamが行う学習支援というのはそういう関わり。


NPOの運営や子どもとの関わりなどを中心に記事を投稿します。サポートしていただいたお金は、認定NPO法人Kacotamに寄付をして、子どもの学びの場づくりに活用します。