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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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2022年1月の記事一覧

「認知症世界」を私はおばあちゃんと歩けるかな

見えないものが見えてしまう。いない人がいるように感じる。体が思うように動かせない。ネガティブになり、落ち込みが激しい。 最近の祖母と過ごしていると、そういうことを言われます。見ていてもわかるし、叔母や母の言葉を聞いていても、そういう症状なんだともう目をそらすことはできません。 おばちゃんの家に行くと、いつももうひとり誰かいるような気がするらしい。そう聞いていて実際に遊びに行ったら、たしかに「妹はどこにいったの、一緒に食べなきゃ」などと言うのです。おばあちゃんは日常生活で、

バリカタとワカメと鮭のこねたんに卵を巻き付けたやつ

家の近所には、大阪府最大級の図書館がある。本を好きなだけ読めるということで、現在の家に決めた。 図書館の隣には、狭すぎす広すぎずで絶妙にのどかな公園があり、ベンチに座って借りてきた本を読むのが僕の憩いだ。 否、正しくは憩いだった。 公園では、家から握っていったオニギリで1人ピクニックを開催する。 極端に水少なめで炊いたバリカタ白米をボールに移し、ワカメ&鮭を配合した生ふりかけ的な代物と混ぜ合わせる。そして、バリカタとワカメと鮭の混合物をこねくりまわし、見目好いトライア

ありがとうのチャンスを君にあげる

まだ私が恋を知らなかった頃、私はいくつもの恋を経験した友人の話を聞いていた。 彼女の好きなタイプは、「ありがとうとごめんなさいがきちんと言える人」だという。 その場では、ふむふむ、なるほどね、とわかったような顔を浮かべつつ、内心はそんな些細で当たり前のことが好きな人の条件になるのかと少し驚いていた。私も誰かと付き合うことになったら、その言葉の意味を理解できるのかなとぼんやりと思った。 友人とそんな話をしてからしばらく経って、私ははじめてお付き合いをすることになった。

私とK

 高校二年生のとき、夏目漱石の『こころ』の授業があった。現代文の先生が好きで、私はその先生の授業ではよく挙手をしていた。  『こころ』の導入の授業のときのことだ。 「主要登場人物は誰か、わかる人?」  誰も手を挙げない。私は挙手をして当てられたので、自信満々に答えた。 「『私』とKです」  すると、なぜか教室中がざわついた。私は急に不安になって縮こまり、上目遣いで先生を見上げる。 「そうだな。他に誰がいるかな? じゃあ……」  授業が終わり、クラスメートに「私何か変なこと言っ

僕の初変をキミに捧ぐ

嫁の実家に招待されてご飯を食べ終わり、お茶の間でくつろいでいるときの話です。小学一年生の娘が突然、こんなことを言い出しました。 「パパ、彼女ほしくない?」 なんてことを聞くんだ、と思わず石化してしまいました。ここは嫁の実家です。嫁の総本山です。当然ながら嫁も、嫁のご両親もその場でくつろいでおります。僕は目を白黒させながら 「いいいいいいいいいいいらないよ」 と毅然とした態度で答えましたが、娘は引きません。 「ほしいでしょ?かわいい彼女だよ」 とグイグイ押し通してきます。な

ひょっとしたら、“calling”かも知れない

「なんで、そんな体育会系の会社に入ったの⁉︎」 僕が体育会系とは程遠い性格をもち、驚くほど運動神経が悪いことを知る周囲からは、新卒で入社した社名を伝えると驚かれることがありました。 社名を聞けば、誰でも知っているような企業でした。体育会系のイメージは引っ越しや宅配便のような、物流という業種だったからでしょう。 単に興味があった、それだけの理由で、さんざん時間がかかった就職活動にケリをつけたかったのです。人よりも苦手なことだと自覚していたからこそ、事前の準備は早めにやった

ハンドル名に年齢を入れる理由

ハンドル名に年が入っているnoterさんはあまり見かけない。 2022年元旦の決意表明として、 なぜ私がハンドル名に年令を入れているか話してみたい。 ※ふつうの自己紹介はこちら↓ 2年3ヶ月前・・・困っていた今まで、守られて生きてきたと思う。 父母に、兄に、夫に。 路頭に迷うような目には、あったことがない。 とはいえ、半世紀以上生きてきたから、大変な時もある。 相続とか、お墓探しとか、自分の生き方とか、学びたいとか、介護とか、 (あらあら止まらない・・・) 2年と3

リッスン

娘のハトちゃんとお風呂に入るのが好きだ。 ちょっと前までは、二人で入っても泳げるくらい広かった湯船は、ずいぶん狭くなった。今二人で向かい合って入るとぎっしりだ。 そこで、ハトちゃんの内緒話を聞くのが大好きだ。 体を隅々まで洗って、つるつるツヤツヤの身体を温かいお湯に沈めた時、リラックスして話しやすくなるのだろうか、ハトちゃんは色んな内緒話をしてくれる。 バスタブは私たちの身体でぎっしりで、聞こえるのは窓の外の風の音とお湯がたてるポチャンという水音だけ。ほかには誰も聞いてい

freestyle 7 ミギーの愛

『寄生獣』は、今から約30年数年ほど前の漫画だ。  アニメや映画になっていて、存在は知っていたが、これまで読んだことは無かった。  息子がアニメ版を観ているのを観るともなく観ていた。なかなかにグロテスクだ。まあ『GANTZ』よりグロさはマシかも。そのうえ、どっかで聞いたような話だ。というか、これって弓月光の『エイリアン1/2』じゃない?  そんな風に斜めから観ていたのだが、寄生生物に寄生された女性教師が主人公の学校にやってきたあたりから、だんだん面白くなってきて、つい、

キジと極道妻と小4のワタシ

田舎道を通勤で運転中、 茂みからキジが急に飛び出して、車の前を走り抜けたので、急ブレーキを踏んだ。 轢いてしまいそうになったドキドキと、 もうひとつの理由でドキドキした私。 私は、キジをみるとドキドキする… あれは私が小4のころ。 帰りの会で担任が言った。 「明日、何か生き物を持ってきてね。みんなで観察しましょう」 犬とかネコはダメ。 昆虫とか、小さい生き物を持ってきて、と。 当時、私はインコを飼っていた。 しかし小1の時に、学校からそれはそれは重い朝顔の鉢を

みんな幸せであって欲しい

帰りが遅くなってしまった 仕事が終わっても家事がまっている 玄関のドアをあけて、散らかった靴たちをかきわけて進み、 かばんと買い物袋をどさりと下ろす やきもきしながらブーツを脱ぎ、 また荷物を持ち上げた 部屋のドアを開けながら 暗っ? 「電気つけっ、、」と言いかけて、 固まる 暗い部屋に 音楽が流れている 「ハッピーバースデー」だ 丸いスピーカーはイルミネーションのように 赤や緑や青といくつも色を変えている いつもはプリントや消しゴムが散らばっているテー

理不尽な社会の思い込みに 態度で「オカシイ」を示せるあなたへ。

note上で存じ上げているだけなのだが、林さんの文章をよく読んでいる。今日はこんなのがあがってた。有料だが話としてはこの無料でも読める部分で通じるので・・・(林さん、勝手に引用させていただきます、すみません。) さて、有料部分に書かれた林さんの優しい言葉たち、「なるほどな」がいっぱい詰まった文章もいいのでぜひ読んでほしいと一言付け加えさせてもらいたい。 一方でこの質問には(質問者さんにではなく世界に向けて)ちょっとため息をついてしまった。そして、もう大声でこのかたにエールを

しばえびの天ぷら

何げない日々のなかで、ふとうろたえる瞬間がある。 よく行くスーパーの鮮魚コーナーには、新鮮な魚介類が並んでいる。漁場が近いということもあり、朝水揚げされたばかりの地物などもおかれていて、日によって顔ぶれが違うので見るだけでもとても面白い。 今だったら、ホウボウやクロムツ、サザエなど。“旬”のものは、眺めるだけでも何かしらエネルギーをもらえるような気がするから不思議だ。 ただ、地物というのは調理法に迷ったりして、いざ買うとなるとためらうこともしばしば。 わたしにとって、

目と目を合わせて奏でるハーモニー

娘が好きなこども番組をみていた。 テレビでは、歌うおねえさんとカラフルで可愛いキャラクターが踊っている。元気いっぱい響く明るい音楽を彩るのはおねえさんのギター。 「ほんちゃんね、ギターひきたいのよ」 娘のその一言から始まった。 だいぶ前に100円ショップで買ったおもちゃのギターは音は鳴らないし、すぐに壊れてしまっていた。 どうせ与えるならちゃんと音が鳴るものを、と思ったが 大きなギターは3歳の娘には扱いきれない。 そこで小さくて手軽なウクレレはどうだろうかとお店へ見にい