見出し画像

みんな幸せであって欲しい

帰りが遅くなってしまった


仕事が終わっても家事がまっている


玄関のドアをあけて、散らかった靴たちをかきわけて進み、
かばんと買い物袋をどさりと下ろす


やきもきしながらブーツを脱ぎ、
また荷物を持ち上げた



部屋のドアを開けながら


暗っ?

「電気つけっ、、」と言いかけて、

固まる




暗い部屋に
音楽が流れている

「ハッピーバースデー」だ



丸いスピーカーはイルミネーションのように
赤や緑や青といくつも色を変えている



いつもはプリントや消しゴムが散らばっているテーブルの上が
きれいに片付けられ
真ん中にケーキが置かれていた

ドーム型のケーキには
チョコレートでネコの顔が描かれていて
紙の耳がついている


4本の長いろうそくが立てられ
ゆらゆらとあたたかい光がともる


「お母さん誕生日おめでとう」

三男は少し照れくさそうに続ける


「お母さん遅いよ~、紅茶も入れてたんやで、
冷めたからもうなおしたよ。今から淹れるから」




私が子供のころに誕生日にケーキで祝ってもらった記憶はない

それがこんな歳になって子供に祝ってもらえるなんて、、

ネコのケーキはチーズケーキだった

ふわふわしっとりやさしい味

顔と反対の部分から切り分け、淹れたての紅茶と一緒にいただきながら、ゆっくり話を聞いた


何日も前からケーキ屋さんを調べていたらしい


私がうるさく小言を言っている間にも、ひそかに考えていてくれた

それから

ケーキが崩れるといけないので自転車に乗らず歩いて買いに行ったこと


買いたかったイチゴのケーキはお金が足りなくて買えなかったこと


店員さんに、長いろうそく4本と短いろうそく5本って言ったのに短いのが2本しか入ってなかったことを話してくれた


「お母さんの誕生日お年玉シーズンで良かったよー」と言ってから


ぽつりと
「僕、中学入ってからよく泣いてたから、、、」


その先の言葉はなかったけど

心配かけてごめん、ありがとう

ということかな


三男は小学生の頃は毎日元気で明るかった、
でも中学生になってから、クラスにいまひとつなじめず、自信をなくしていた

そのままの自分を出すことができなかった

イライラして私にあたることが何度もあった

それでもなんとか頑張ってもう少しで1年生を終える

春に新しいクラスになったら、気持ちの切り替えもできるかもしれない


これからも、いくつも困難があるけれど、ひとつひとつ越えて成長していくのだろう




そして

私が幸せにひたるこの瞬間も
世の中には
苦しんでいる子供がいる

やさしく可能性にあふれた子が
犠牲になることのないよう

残酷なニュースが流れることのないよう

力のない自分に何ができるのか
考えてみたい




読んでいただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?