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小説「北の街に春風が吹く〜ある町の鉄道存廃の話〜」

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北海道中央部に位置する小さな町に降りかかる鉄道ローカル線の廃線問題。街の衰退を危惧する役場では鉄道会社との交渉に追われる。そんな中、役場に勤める職員から語られた鉄道再興のアイディ…
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2022年12月の記事一覧

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-①

・第二話 列車のふたり  北海道の沼太町は朝日川市から西に車で一時間ほどの山あいにある小…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-②

・第二話 列車のふたり  僕が喜ぶそのテンションの高さに吉田さんの目じりが少しあがったこ…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-③

・第二話 列車のふたり 「どうしてこっちに帰ってらっしゃったの? 東京や札幌には楽しいこ…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-④

・第二話 列車のふたり  僕が落ち込んでいる傍らで彼女は老夫婦と話を続けている。列車につ…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-⑤

・第二話 列車のふたり 「春待食堂…」僕はもう一度チラシを眺めながら読み返した。北海道の…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-①

第三話 動物園でデートしよう  深河駅で降りて、朝日川行きの特急ルピナスに乗り換える。こ…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-②

第三話 動物園でデートしよう 「ありがとう、大吾。試しに北曙駅からレンタサイクルに乗ってみるよ」 「それにしても、お前んとこのお父さんすっげーよな?」 「えっ? うちの親父?」 大吾が話題を僕の親父に切り替えた。吉田さんのお母さんが駅で言っていたことが思い出された。 「お前の親父さんだろ? 瑠萌線の存続をHRに訴えたっていうのは」 「どういうこと? さっきも彼女のお母さんに同じことを言われて……、俺、全く何も知らないんだけど?」 「お前、親父さんが何をしたのか知

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-③

第三話 動物園でデートしよう 僕たちは朝日山動物園の最寄り駅である北曙(あけぼの)駅で初…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-④

第三話 動物園でデートしよう  色々な旗を確認しながら走ったこともあり、退屈もせずあっと…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-⑤

第三話 動物園でデートしよう                 * 「デートはどうだったの…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-①

第四話 存続協議会 その1 「以前はここらへんにも鉄道が走ってたんですよね」  吉田さん…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-②

第四話 存続協議会 その1 「ところで、あかりさんはどうして地元に帰ってきたの? 少し前…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-③

第四話 存続協議会 その1                 *  会議は沼太町役場で行わ…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-④

第四話 存続協議会 その1    沼太町長の横田はずっと沼太町で働いてきた。三年前に他の職員の勧めで町長に立候補し初めての選挙で当選を果たした。四十年近く役場で働いてきたこともあり、沼太町の住民のほとんどが、もはや鉄道を必要としていないことを把握していた。  しかし、深河市にある高校まで通う学生は少なくなく、また今後運転免許証を返納していくだろう高齢者のことを考えれば、やはり鉄道を廃線してしまうことが町の将来に遺恨を残してしまうかもしれない。とは言え、鉄道に未練があって