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小説「北の街に春風が吹く〜ある町の鉄道存廃の話〜」

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北海道中央部に位置する小さな町に降りかかる鉄道ローカル線の廃線問題。街の衰退を危惧する役場では鉄道会社との交渉に追われる。そんな中、役場に勤める職員から語られた鉄道再興のアイディ… もっと読む
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記事一覧

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道の話~」 プロローグ

プロローグ  北の小さな海辺町。昔からある駅前食堂のコンクリの打ちっぱなし床の中央に置か…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第1話ー①

第一話 列車に乗ってでかけよう 「明日のことなんだけど、十時に沼太駅前で待ち合わせでいい…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第1話ー②

第一話 列車に乗ってでかけよう  僕は札幌に本社を置く農作物を加工する会社にこの春から勤…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第1話ー③

第一話 列車に乗ってでかけよう  急ぎ足で改札を過ぎてホームに出ると、確かに三十人ほどの…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-①

・第二話 列車のふたり  北海道の沼太町は朝日川市から西に車で一時間ほどの山あいにある小…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-②

・第二話 列車のふたり  僕が喜ぶそのテンションの高さに吉田さんの目じりが少しあがったこ…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-③

・第二話 列車のふたり 「どうしてこっちに帰ってらっしゃったの? 東京や札幌には楽しいこともいっぱいあったでしょうに」 「いや、東京も楽しかったんですけど、とにかくなんでも高いんですよ。金銭感覚も性格的にもちょっとついていけない感じがしてました。このおにぎりと漬物食べて、ほっとしてます」 「わしらは足毛で食堂をやってるから思うんだけどね、結局人間って生まれ育った土地の食べ慣れたものが一番おいしいんじゃないかって思うよ」 「あ、わかります。東京でもしゃれたレストランとか

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-④

・第二話 列車のふたり  僕が落ち込んでいる傍らで彼女は老夫婦と話を続けている。列車につ…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-⑤

・第二話 列車のふたり 「春待食堂…」僕はもう一度チラシを眺めながら読み返した。北海道の…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-①

第三話 動物園でデートしよう  深河駅で降りて、朝日川行きの特急ルピナスに乗り換える。こ…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-②

第三話 動物園でデートしよう 「ありがとう、大吾。試しに北曙駅からレンタサイクルに乗って…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-③

第三話 動物園でデートしよう 僕たちは朝日山動物園の最寄り駅である北曙(あけぼの)駅で初…

ともひろ
1年前
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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-④

第三話 動物園でデートしよう  色々な旗を確認しながら走ったこともあり、退屈もせずあっと…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-⑤

第三話 動物園でデートしよう                 * 「デートはどうだったの?」 家に帰ったとたん、母からの質問攻めにあった。「昼ごはんは何を食べた?」、「どんなことを話した?」、「優柔不断な態度で彼女を怒らせなかったか?」「次はいつ会うことにしたの?」とか、高校まで彼女のいなかった僕を心配して何かと質問を受けた。僕は不思議に親心を理解していて、ひととおりの報告を母親にしてあげた。一応、手を握ったことは隠してはいたが。 「列車で出かけて結果オーライだったか