樹雨

詩、言葉、心

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アクシュウ

朝、台所に立つ 立ち昇る生臭さが おまえはナニモノなのだと 今日も僕を詰る きっと綺麗にピカピカに 苛性ソーダならにおいもなくなる 魔法のようにまっさらに 生まれ変…

樹雨
9か月前

下に

腕時計を気にしながら 階段を急ぎ足でくだる 地下鉄の生温かい風がふく 一段降りるごとに薄暗くなる 一段一段 ぬるりとした闇の中を いちだんいちだん 腕時計が闇に溶け…

樹雨
9か月前
3

灰色の世界で 君の後ろ姿だけが色鮮やかに 君を彩る蝶が ひらひらと舞う ああ とても とても会いたかったのだよ だのに 生温かい絶望が 喉の奥にずるりと張り付いて 声…

樹雨
9か月前
3

ココニイル 

一歩が その一歩が たとえ僕に 地球から飛び出すほどの勇気が あったとしても あったとしても 踏み出せないんだ その一歩が とてつもなく とてつもなく 僕の足はもう動…

樹雨
9か月前
4

ぽっかりと 取り残された静寂のなかで ただ寒さに凍えるようなこの世界で 瞼が重たい 目を瞑ってしまおうか ぼんやりと願う私のすぐ横を ついっと魚が 通り過ぎていく 頬に…

樹雨
9か月前
2

アクシュウ

朝、台所に立つ

立ち昇る生臭さが
おまえはナニモノなのだと
今日も僕を詰る

きっと綺麗にピカピカに
苛性ソーダならにおいもなくなる
魔法のようにまっさらに

生まれ変わってまっさらに


詰まった

部屋中に
僕の悪夢が
溢れ出る

下に

下に

腕時計を気にしながら
階段を急ぎ足でくだる
地下鉄の生温かい風がふく
一段降りるごとに薄暗くなる

一段一段
ぬるりとした闇の中を
いちだんいちだん

腕時計が闇に溶けていく

はて
この先に
なにかあったのだろうか
私は
なにを降りているのだろうか

蝶

灰色の世界で
君の後ろ姿だけが色鮮やかに

君を彩る蝶が
ひらひらと舞う

ああ

とても
とても会いたかったのだよ

だのに
生温かい絶望が
喉の奥にずるりと張り付いて
声が出ないのだよ

君はパッと
それこそ魔法のように
パッと消えてしまうのだ

君はもうどこにもいないのだった

ココニイル 

ココニイル 

一歩が
その一歩が
たとえ僕に
地球から飛び出すほどの勇気が
あったとしても あったとしても
踏み出せないんだ
その一歩が
とてつもなく とてつもなく

僕の足はもう動かないのだよ
僕はもう息ができないのだよ
こぼれ落ちるあなたの涙を僕は
こぼれ落ちるダレカのナニカを僕は
ボクハココニイル

鱗

ぽっかりと
取り残された静寂のなかで
ただ寒さに凍えるようなこの世界で
瞼が重たい
目を瞑ってしまおうか
ぼんやりと願う私のすぐ横を
ついっと魚が
通り過ぎていく
頬にざらりとした痛みを感じた
指先が触れた頬が
赤く赤く熱をもつ