樹雨

詩、言葉、心

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アクシュウ

朝、台所に立つ 立ち昇る生臭さが おまえはナニモノなのだと 今日も僕を詰る きっと綺麗にピカピカに 苛性ソーダならにおいもなくなる 魔法のようにまっさらに 生まれ変わってまっさらに あ 詰まった 部屋中に 僕の悪夢が 溢れ出る

    • 下に

      腕時計を気にしながら 階段を急ぎ足でくだる 地下鉄の生温かい風がふく 一段降りるごとに薄暗くなる 一段一段 ぬるりとした闇の中を いちだんいちだん 腕時計が闇に溶けていく はて この先に なにかあったのだろうか 私は なにを降りているのだろうか

      • 灰色の世界で 君の後ろ姿だけが色鮮やかに 君を彩る蝶が ひらひらと舞う ああ とても とても会いたかったのだよ だのに 生温かい絶望が 喉の奥にずるりと張り付いて 声が出ないのだよ 君はパッと それこそ魔法のように パッと消えてしまうのだ 君はもうどこにもいないのだった

        • ココニイル 

          一歩が その一歩が たとえ僕に 地球から飛び出すほどの勇気が あったとしても あったとしても 踏み出せないんだ その一歩が とてつもなく とてつもなく 僕の足はもう動かないのだよ 僕はもう息ができないのだよ こぼれ落ちるあなたの涙を僕は こぼれ落ちるダレカのナニカを僕は ボクハココニイル

          ぽっかりと 取り残された静寂のなかで ただ寒さに凍えるようなこの世界で 瞼が重たい 目を瞑ってしまおうか ぼんやりと願う私のすぐ横を ついっと魚が 通り過ぎていく 頬にざらりとした痛みを感じた 指先が触れた頬が 赤く赤く熱をもつ