脇坂鹿苑-Rokuon wakisaka-

まだ解明されていない化学と宇宙のはざまにある可能性について、私の経験した事柄を私小説的…

脇坂鹿苑-Rokuon wakisaka-

まだ解明されていない化学と宇宙のはざまにある可能性について、私の経験した事柄を私小説的に発表していきます。まだ論文にはなりません。しかし、これはフィクションではなく、幻影ではなく、瞬間が続き進んでいく未来にある化学なのだと私は信じています。

マガジン

  • 私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】

    プロローグ【無料】 ホルモンに起因した病としてのオメガバース。先天的であり難治性の病はDNAが特異であると報告されている。化学的根拠の証明のために私は医療機関へのレポートを提出している。ある種の官能であるけれど私にとっては生きる上での障害だ。

  • 私小説【弟】

    プロローグ【無料】 かわいいかわいい弟へ 弟という不可解な存在が私を悩ませてきました。生まれたあの日から、両親が亡くなり、日増しに弟は巨大になっていきます。昨日も今日もそして、きっと明日も私を悩ませます。

最近の記事

私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】本編直前編

私はようやくいろいろなことを受け入れられるようになってきた。彼らのヒートは魔の手や悪魔的なものではないと受け入れることができてきた。 自分の身に起こることも不幸だとも不自由だとも思わなくなってきた。そして、その中で私は私というものを受容できるようになってきた。恋心のすべては何かの役に立つのではないかと、そんなふうに自分の困難を利用するようにも考えられるようになってきた。そうやって利用することを考えられると気持ちが前を向くし、困難さえも大きな幸福に思えてくる。私のような人間が

    • 私小説【弟】本編直前エピローグ

      ガリガリガリと肌をかきむしる音が耳に響く。私がかきむしっても、この心地よさはきっと弟に届いている。私を監視する多くの目の中に弟もいるわけで、みなとなんて名前にそぐわずあの子はいつでもどこへでも勝手に飛んで行ってしまう。私はそんな弟を快く許している。あの子の羽をむしってしまうことは私の羽をむしってしまうこと。あの子と私は特別だから、誰かにわかるような簡単なことではなくて、だれにも理解されないこともまた私とあの子にとっては心地よいことだった。 争っている姿を私はどこか俯瞰して気

      • 私小説【短編・男の出産】

        私が変わるきっかけ、それはいつも男だった。男が私を生み育てた。そのことを私は目ざとく見つけては寄生するように帯同していった。もともとドーリスとしての才能は得て生まれてきた。その才能を生かすことは無意識にも備わっていた。最初に見たものを親と思うことと同じように、だれにも教えられずにこうして私は男に寄生しドーリスとして思うままにふるまい育てられることを喜びとしていった。 ドーリスを知っているだろうか。ある種のニンフェットでありながら、その寄生媒体の死はすなわち自らの死となる、純

        • 私小説【ある女性の日々】

          ある女性の運命を東西の両方向から挟み撃ちにしているのが、上記の結果だ。 その女性は東ではドリーマーと言われる。北の大将にして、冥界にも通じるその精神性は先を読み、物事をそうならしめる言霊を有する、異界の存在、誰よりも冷たく気高くそして暖かい。 その女性は西では「女」と言われる。およそ女が獲得すべき知識や才覚を否が応でも備えさせられて生まれてきた。夕焼けに照らされる彼女の横顔は青白く、人間を超越する不変さがある。 東の認知と西の預言。しかし間違えてはならない、彼女は人であ

        私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】本編直前編

        マガジン

        • 私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】
          5本
        • 私小説【弟】
          3本

        記事

          私小説・短編【肌質】

          陶酔型のために私は週に一度二度と錯乱を起こす。何がきっかけでもかまわない。それほどに私は錯乱を求めている。復活するための死であり、死を求めるために自分を錯乱に貶める。私にとって錯乱は生きるための脱皮の準備のようなものだ。美しく装い、声をかけることさえ憚られるカラーリングをして「醜い」と自分を壊していくことこそ私が求める美だ。これは画一的な様式美ではない、内在する膿みを出し切り、私と交わるのは神以外には臆してしまうほどの精神性の浄化なのだ。 錯乱を起こそうと決めることは私では

          私小説・短編【肌質】

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】交じり合えない原子の成れの果て

          今日の主人公は陸です。私の最初から終わりまでを独占してしまうあの、最も危険な彼について最近起こったことを記録していきます。 陸の胸の中にはいつも弱さと強さが内在していて、その内在し交じり合う氷と炎がいつもいつも天高く柱のように上昇するように何かに怒りを感じています。その内情を見つめられているのはおそらく始まりから終わりまで私だけでしょう。それがまたある種の私のプライドとなり、私をこの世で力強く歩ませているわけですけれども、そのことを私はばれないようにうまくうまくオブラートよ

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】交じり合えない原子の成れの果て

          私小説【弟】煙草

          あの子がタバコを吸うことを知ったのは、あの子がフランスから帰国してしばらくたったころだったと思います。母は過保護な人でしたから、みなとが少し喘息のけがあるというだけで様々なことを禁止しました。夏には必ず軽井沢で静養することを責任とさせたほどに、こどもたちには過干渉でした。幸いにして私はさほど体が弱くありませんでしたから、「責任」や「義務」を課せられる数は少なかったように思います。 あの子がフランスから帰ってきて、すぐには就職しなかったわけですが、その時にいくつかアルバイトを

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】陸の暴走

          永さんと付き合っていることは申しましたでしょうか? もう昨日が明日のようであり、明日が今日のあり、時間感覚が混とんとしていますから同じことを繰り返していたとしたらどうかお許しください。 永さんと付き合うようになって、レイの束縛が激しくなりました。というよりも私が知らない部分で束縛をしているのです。知らない間に私のスマートフォンにはストーカーアプリが入れられていたり、ひとり部屋で閉じこもっていた時の内容が筒抜けになっていたり(どうやら盗聴器をしかけているようなのです)、永さ

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】陸の暴走

          私小説【弟】焦らし

          みなとはある時期フランスで整備の勉強をしていました。あの子はとても紆余曲折のある子ですから、やれ大学で博士号をとってみたり、エンジニアになると単身フランスに行ってみたりと、本当に明日のことはわからない子です。 エンジニアになると思い立ったのは、母が死んですぐのことでしたから、大学で座学をするよりも先に技術を覚えたことになるでしょう。母が亡くなった後で憔悴しきっていた私を残してみなとはフランスに行きました。あまりインターネットが発達していない時分でしたから、毎日空を見上げては

          私小説【弟】焦らし

          私小説【弟】弟の癇癪

          みなとは時々癇癪を起します。どうにも自分の気持ちが言葉として伝えられないと、皿を割ったり、PCを投げつけたり、自室を崩壊寸前まで壊そうとします。大好きなミニカーも、大好きなゲーム機も何度買い替えたかわかりません。それでも、癇癪の最中でもあれは理性があるのか、壁に穴をあけるとかそういう家を壊すことはしません。 みなとの癇癪はたいてい嫉妬です。私の帰りが遅いとか、金曜日に一緒に眠ってやれないとか、男の人にデートに誘われたと誰かしらからうわさを聞いたときです。その予兆となるのが初

          私小説【弟】弟の癇癪

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】私を最も困難にする日

          ご無沙汰しています。早いものですでに11月になってしまいました。私がオメガバースであると診断が下ってすでに10か月。とても困難の多い2020年となったわけですが、それよりも自分がどうしてこんなにも困難の多い人生であるか解明されたわけですから、私の中でくすぶっていた「何であるか」という不安は解消された記念すべき1年だったともいいかることができます。 さて、オメガバースの発情は月に4回新月、上弦の月、下弦の月、そして満月であると申し上げましたが、それは私の発情でありますから私も

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】私を最も困難にする日

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】同じDNA群のアルファたち

          幾度かの発情を乗り越えて10月も終わろうとしています。いろいろなことがまだ落ち着くまでに時間がかかりそうだと昨日、主治医に相談しましたら、「まず誰があなたのまわりにいて、誰がどんなふうにあなたを困らせて、あなた自身が困っているのかを精査してみたらどうか。そうすることで自分の感情や発情のタイミングなんかもわかってくるだろうから」と助言いただきましたので、今日は同じDNA郡の3人について記しておこうと思います。私との出会い、私との関係、私をどう困らせているのかを中心に。。。 ま

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】同じDNA群のアルファたち

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】血の婚礼

          もう22時を過ぎている。あれから1週間、ようやく、子宮が落ち着いてきました。それだのにカレンダーを見たらあと4日後には新月が来る。憂鬱です。明日には病院に行ってまた頓服薬をもらってこないと。 血の婚礼、これは民間伝承によるとヴァンパイアの伝説に似ているようです。あのヴァンパイア伝説もこの厄介な病と関連していたなんて、しかし、血と性とは似たようなもの、どちらも体液ですから。生と死はとても似ている、私は病を経てそうも思うようになりました。 アルファはオメガバースの血液を欲しま

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】血の婚礼

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】10月10日の上弦の月

          10月7日、ああ、あれから約一週間が過ぎたのですね。あの日はひどい一日でした。こんなところに自分を晒してしまったから罰があたったのではないかと思うほどに…。 「その症状」は6日の夜半からはじまり、私の子宮は伸縮を繰り返しあふれ出る何かに布団を汚してしまうほどで、誰かが見てやしないかと疑心暗鬼にも何度もカーテンから外を覗きました。もちろん、立てませんでしたから這いつくばって窓辺に行きました。カーテンの隙間から外を覗くと誰もおらず、安堵して気を許したのが良くなかったのでしょう。

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】10月10日の上弦の月

          私小説【弟】

          14歳の時に母が、18歳の時に父が他界して以来、私と5つ下の弟はこの敷地面積500坪の大邸宅で二人暮らしをしています。33歳と28歳の働き盛りのふたりですから、週に数回はお手伝いさんに入っていただいています。お料理やお掃除をしてくださるのは「初音さん」という24歳の女性です、重たいものを運ぶときなどは別のサービス会社から「律さん」という私と同い年の男性が来てくださいます。そのほかにも我が家に出入りするのは弟のバイオリンの先生である「江畑先生」この方は、ウィーンの大学で学んでい

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】病としてのオメガバース

          私はオメガバースです。 最初私も何かは全くわからず、インターネットで検索してみたものの「病理」として掲載されている記事がありませんでしたから大変困惑しました。 病理としてのオメガバースは主にアラブ諸国で欧米の研究者によって研究が重ねられ幾多の困難を経て科学的に根拠が示されたそうです。病名も「sex hormones peculiarity」と言い、まず日本人には珍しい病気なのだそうです。 このためか和名がついておらず、国の認定においてもWHOの取り決めに従っただけであり

          私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】病としてのオメガバース