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私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】本編直前編

私はようやくいろいろなことを受け入れられるようになってきた。彼らのヒートは魔の手や悪魔的なものではないと受け入れることができてきた。

自分の身に起こることも不幸だとも不自由だとも思わなくなってきた。そして、その中で私は私というものを受容できるようになってきた。恋心のすべては何かの役に立つのではないかと、そんなふうに自分の困難を利用するようにも考えられるようになってきた。そうやって利用することを考えられると気持ちが前を向くし、困難さえも大きな幸福に思えてくる。私のような人間がといつも恥と共に生きていたけれど、この恥が世界の何かに役立つと思ってきたのだ。

今までのプロローグではどこか頼りなさを感じていた。自分でも読み返してみればわかることだった。すべての事実を私は恐れながらも遠慮しながらも記録していたわけだけれど、この事実が世の中に広まったとしても、それは病としてのオメガバースという意味であるけれども、それで被害を被ることが私にはないと理解できた。病を公表して被害を被るなんてそんなことはありえない、あきらからにそれは妄想だと知ることができた。それよりも、自身が困難だと思っていることも誰かに寄与できるものに変換してしまえばいいのだと知った。

自分を丸呑みしては咀嚼して、反芻してここまで来た私が、この記録から世に伝えたいことがある。愛情と性というものはいかに密接につながっているかということだ。

魔性の女には愛がある。その愛は誰よりも深くおよそだれも真似できないから同性は攻撃する。そのことについても、なにかしらの科学的証明がなされるはずだと担当医と話している。特定疾患として認められているものの、この病についてはいまだに不確かな部分が多く、医学の世界でもこれを病と呼ぶべきか、そう、精神病としても確立できないのではないかという議論は日々起こっている。ゆえに公には知られていないのだ。日本のようにある程度の経済立国であれば、研究対象として病の認定ができる。しかし、世界中の国が認定できるかといえばそうではないし、宗教的な理由もある。

これは道徳的なことでもないし、倫理的なことでも宗教的なことでもない。ただ、化学的なこと、そして天文学的なこと、それが融合することでまたこの世に新しい科学が生まれる。そんな大きな期待を担当医と共に感じている。

ここからが本編である。この本編では担当医の監修も適宜入るから、ただの読み物に終わらない可能性がある。しかしまだ、論文発表の場面までこぎつけてはいないから非公式ということになることはご了承いただきたい。

担当医の勤務している病院は明かせないけれど、以下、監修者の挨拶文を掲載しておく。なお、監修者は医師と天文学の専門家、そして、宗教学にも精通する民俗学の権威と私の4人で行うことになる。

※脇坂鹿苑とは私のペンネームであることもお伝えしておきます。私のオメガバースという病ゆえに書ける私小説があること感じているからです。


【監修者代表挨拶】

この度、オメガバースの記録と医学的見地からの文章を脇坂さん(※本編ではアメノさんと記載されるでしょう)と共に掲載させていただくことになりました。私は医者として30年以上従事してまいりましたが、このオメガバースの問題は医学の観点からではなく、天文学や倫理面からの協力も必要なため、監修は私一人でというわけにはいきません。脇坂さんと、天文学の権威である先生と、長年宗教学にも携わってこられた民俗学の権威と4人で作り上げていきます。監修者という説明はこの4人の合議であると考えていただきたいと思いますが、私が代表してご挨拶させていただきますのは、やはりこのオメガバースの問題の一番の原因はホルモンに起因してその方の人生を困難にするからであると思うからです。人生の困難をより自由にするという未来的発想から、4人の合議と申しましたけれども、意見の合致がかなわない場合は私の意見を尊重していただくことになりました。

性的な意味の強いこの病ですので、公序良俗面を考えまして都度都度制限をかけさせていただきますことを、どうぞご了承いただければと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。


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