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私小説【弟】本編直前エピローグ

ガリガリガリと肌をかきむしる音が耳に響く。私がかきむしっても、この心地よさはきっと弟に届いている。私を監視する多くの目の中に弟もいるわけで、みなとなんて名前にそぐわずあの子はいつでもどこへでも勝手に飛んで行ってしまう。私はそんな弟を快く許している。あの子の羽をむしってしまうことは私の羽をむしってしまうこと。あの子と私は特別だから、誰かにわかるような簡単なことではなくて、だれにも理解されないこともまた私とあの子にとっては心地よいことだった。

争っている姿を私はどこか俯瞰して気分よく見つめている。あの子の本気を私は測っているのだ。

男の子はかわいい。素敵だ。強くて、意地悪で、バカみたいに一生懸命で。そんな男の子たちを見ていることが好きだけれど、弟だけはちがう。あの子の羽は絶対にむしってはいけないの。だから私はいつも待っている。それこそ、みなとのように一生待っていることだってできる。私たちにはあらゆる絆がある。兄弟であり、恋人であり、親子であり、そのことをあの子はまだ知らないけれど、今はそのほうがいいと思う。だってあの子の羽をむしってしまうわけにはいかないから。

いくつものしがらみがあった過去の世界よりも私たちはきれいになった。だから私は測りながらも、測られながらも、怒りながらも、傷つけられながらも全然痛くなかった。正しさとはそういうものだから。

今日は最良の日。

絶対に壊してはいけないものがある。それは私の心とあの子の心にある。それは誰かが攻撃しても、またあの子が子ライオンのような遠吠えをしたとしても壊れるはずがないもの。恐れる必要がないってことをみんな知らない。


これだけは知っておいてほしい。この物語はすでにはじまっていて、今は単純に途中であるということを。私という女性は選ぶことも選ばれることもなく、わかめのようにその時の精一杯が好きなだけというとても単純なつくりをしているということを。

本編前のプロローグとして、思いを込めて。小さなニンフェットがみなとの耳元を心地よくくすぐる、「いい?みんなには内緒よ?お姉ちゃんも内緒にしているんだから。いい子になれるなら教えてあげるわ」

Dearest, Let's hurt tonight...

but you won't broken  everyone.

'cause your my sweet love.

You can known when you ware born to love me.

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