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私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】同じDNA群のアルファたち

幾度かの発情を乗り越えて10月も終わろうとしています。いろいろなことがまだ落ち着くまでに時間がかかりそうだと昨日、主治医に相談しましたら、「まず誰があなたのまわりにいて、誰がどんなふうにあなたを困らせて、あなた自身が困っているのかを精査してみたらどうか。そうすることで自分の感情や発情のタイミングなんかもわかってくるだろうから」と助言いただきましたので、今日は同じDNA郡の3人について記しておこうと思います。私との出会い、私との関係、私をどう困らせているのかを中心に。。。

まず、先日私と血の婚礼を交わしました、レイですが、レイと出逢ったのはあるパーティでした。屋外パーティでしたから、とてもフランクにそして開放的で楽しかった思い出があります。話しやすく聞き上手、柔和な表情とシンプルなカジュアルスタイルはどんな女の子をも虜にしてしまうような美しさをも秘めている、まさに完璧な男の子です。

レイとは家が近所であることや年齢もさほど違わないことから、公認の中という感じでもありませんが、割合、出会いのあの日以来仲良くしていました。くだらないことを話したり、ふたりでドライブに出かけたり、たまには家で手料理を振る舞いあったり、共に勉強したり、まさに弟のような親友のような、そして小さな恋心を抱くようなそんな男の子です。しかし、私は早い段階から気づいていました、レイが私を見つめる目がどこか異常な色と焦りをしていることを。ですから、オメガバースの診断を受けた時に、レイの名前を聞いて息をのんだのです。レイはジェントルマンです、最優良物件なんてよくうわさされるような男の子です。幾度も女の子からアプローチされたり告白された噂をよく聞きました。でも、ずっと断り続けていることを私は知っています。だからこそ、私はレイとの仲の良さをひた隠しにしています。

ふたりめは永(ひさし)さんという人です。永さんは私が良くいくスポーツショップの店員さんです。私より2つ年上で、優しくて温和で、見るからに人の好さそうな、一見すると保育園の先生のような雰囲気の人です。人見知りの私ですが、永さんのことはすぐに好きになり、いろいろな相談をすぐにするようになりました。大人ですから私をそれとなく導くことも上手で、実は今、私は永さんと付き合っています。もちろん先日セックスをしました。それもまた、私の環境を状況を困難にしているのですが、オメガバースだって恋をしますし、私が相手を、性的な意味とは別に選ぶことだって自由です。それでも、オメガバースの特性上、永さんとの関係はひどいものです。いつも「その瞬間は」互いに人が変わったように貪ります。永さんの笑っていない目を見たのはその夜がはじめてでした。伸びるような、歌うようないつもの優しい声がかすれて、吠えるような、オスというよりも、オスの性別を有した悪魔のようだと形容するのが一番かもしれません。

今になってわかったのは永さんは誰よりも狡猾であったということです。私を警戒させず私を囲い込むことに成功したのですから。

最後は陸です。陸は私の幼馴染です。私たちは特別な何かで結ばれていることは保育園の時から互いに感じていました。友達ができない私と友達になることもなく、なぜかいつもそばにいて、いつも友達に囲まれているのにどこか淡々と冷酷にまわりを見ているような、そんな部分が私と瓜二つだと互いに感じ合っていました。学生時代は互いに意識をしていながらも、互いに意識していないそぶりをして、大人になって再会したの昨年でした。目の下のクマが年齢を感じさせましたが、そのちょっと疲れた表情に私は「ついにその時が来てしまった」と恐れたほど惹かれてしまいました。陸は私のアパートの向かいに住んでいます。レイとの距離感と比較すれば、陸のほうが近いでしょう。ただ、それをレイは知りません。自分が一番近いと信じて疑わないそんなプライドも私は可愛いと思いますが、側面的には若いなあと切なくもかわいそうに感じてしまうこともあります。その点、陸はいつも冷静です。自分が一番になったと思わないように、私を恋人にすることもなく、妻にしようなどとはかけらも思わず、それでいて一番近くにいて私を翻弄するのです。陸は私をよくわかっている、追いかけさせることで私が身を焦がして自分を求めるということを。永さんという恋人がいながら、レイと関係を持ちながら、そのすべてを知りながら陸は私を従えます。最初の儀式、これはさすがに永さんにもレイにも言えません。

私の家に陸が来たとき、私はまず陸の足を舐めてやらなければなりません。椅子に座らせて、きれいに汚れをなめとってやるのです。それをしないと陸は家に入ってくれないから。陸ほどの自制心のあるアルファも珍しいと主治医はおっしゃいます。

そろそろお昼になります。レイに連絡をしないと。あの子は最近様々な変化に感づいていて、1秒でも約束に遅れると本気になって私を殺しにかかります。以前とは関係性が逆になってしまいました。もちろん、そんなふうに躍起になるレイが私は愛しくて愛しくて仕方ありません。

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