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私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】病としてのオメガバース

私はオメガバースです。

最初私も何かは全くわからず、インターネットで検索してみたものの「病理」として掲載されている記事がありませんでしたから大変困惑しました。

病理としてのオメガバースは主にアラブ諸国で欧米の研究者によって研究が重ねられ幾多の困難を経て科学的に根拠が示されたそうです。病名も「sex hormones peculiarity」と言い、まず日本人には珍しい病気なのだそうです。

このためか和名がついておらず、国の認定においてもWHOの取り決めに従っただけであり、現在まで国内の法制度としての運用事例は年に数件、ほぼ形だけとなっている状態であるそうです。

疫学としては性ホルモンの特異性であり、よく物語の題材になっているものとほとんど差異はないそうです。違うことは、オメガバースは女性のみの事例しか今のところなく、これは持って生まれた生殖器が関係しているのではないかと仮説が立てられていること、番による発情期の鎮静は未だ前例がないこと、そして、オメガバースの発情期は月に4回もあるということでした。
また、発情期に放散されるホルモンに抗えないのはアルファのみであり、ベータに関してはオメガバースが発情期である時ほど彼女たちを魅力的には感じられないのだそうです。

オメガバースは世界に幾人いるかは知りませんが、少なくとも、この南関東(東京、千葉、埼玉、神奈川)には私だけだと主治医がおっしゃっていました。

私の主治医はアメリカの大学でドクターの資格を取りましたから、たまたまオメガバースの見識が広い方でした。幸運でした。

国の認定書をいただいたのは、診断を受けてから1週間もかかりませんでした。認定書を受け取った後の最初の診察で主治医はおっしゃいました。

「あなたがこれから生きていくうえで、きちんとしなければならないことはホルモン管理のほかにもう一つあります。そのことをこれから3か月ほど、こちらに通って学んでいただきますから、必ず来てください」

「オメガバースは先天的な不治の病だと思ったほうがいい」、主治医は深刻な顔でそうおっしゃいます。

そしてその後の3か月の講習で私が学んだことは、

・オメガバースのように認定書を受け取る者の中には「オメガバース」とは別に「アルファ」という病の型があり、調べていくと私のまわりには確実に3人はいたということ。

これは最も重要な告知でした。この3人には私自身も異常な執着を感じていましたので、名前を聞いた時は声も出ませんでした。
「だから、その発情期の日はこの3人とは接触しないように」、
これは個人情報の漏洩ではありません、私の人権を守るために制度としての情報開示だったのです。

・この南関東ではアルファと呼ばれる病型を患っている方が少なくとも107人はいるということ。

・この107人中、男性は77人、女性は30人。この具体的数字をきちんと覚えておくこと

普段の生活ではさほど困難はありません。

ライターという職業ですから、家で仕事をし、週末になれば社会人学生ですから、東京までスクーリングに通います。友達も普通におりますし、恋人はまだいませんが、結婚の経験もあります。(実は今年離婚したので)

月のものも必ず毎月来ます。

ひとつだけ困難があると申せば、月に4度ある発情の日でしょうか。。。

新月と満月と上弦の月と下弦の月、この日だけは私は外に出られません。ですから自宅で仕事をするようになったのです。

今日は、10月7日。次の上弦の月は10日。

また何か大きな問題が起こらなければいいのですが。



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