連載:「新書こそが教養!」【第76回】『大絶滅は、また起きるのか? 』
2020年10月1日より、「note光文社新書」で連載を開始した。その目的は、次のようなものである。
現在、毎月200冊以上の「新書」が発行されているが、玉石混交の「新刊」の中から、何を選べばよいのか? どれがおもしろいのか? どの新書を読めば、しっかりと自分の頭で考えて自力で判断するだけの「教養」が身に付くのか? 厳選に厳選を重ねて紹介していくつもりである。乞うご期待!
人類が引き起こす「大絶滅」
約46億年前に「地球」が形成された。約40億年前に最初の「生命」が誕生し、約12億年前に最初の「多細胞生物」が出現した。現在の地球上に生息する生物種は約10億~60億と見積もられ、その数値は過去の地球上に表れた全生物種の1%と推定されている。つまり、これまで地球上に約1,000億~6,000億の生物種が誕生し、その99%が絶滅したとみなされているのである。
生物種の絶滅と新たな種の誕生は常に繰り返されているが、古生物学においては、「絶滅率」(単位時間あたりに絶滅する生物種数)が「種分化率」(単位時間あたりに種分化により誕生する生物種数)を遥かに上回るケースを「大絶滅」と呼ぶ。多細胞生物が出現して以来、これまでに5回の「大絶滅」が生じたことが地質調査や気候変動モデルの分析などから明らかにされている。
第1回の約4億4,400万年前(古生代オルビドス紀末)には、地球寒冷化により全生物種の85%が絶滅した。第2回の約3億7,500万年前(古生代デボン紀末)には80%、第3回の約2億5,200万年前(古生代ペルム紀末)には90%、第4回の約2億年前(中生代三畳紀末)には60%、第5回の約6,500万年前(中生代白亜紀末)には60%が絶滅している。第5回の大絶滅は、小惑星の衝突による大規模気候変動が原因で、恐竜やアンモナイトが絶滅した。
本書の著者・高橋瑞樹氏は1973年生まれ。筑波大学生物資源学類卒業後、東京大学大学院農学生命科学研究科・メンフィス大学大学院生物科学研究科修了。現在はバックネル大学生物学部准教授。専門は保全生態学・動物行動学。多くの論文の他、本書は初めての一般向け新書である。
さて、約1万5,000年前(更新世末期)にも、多くの「メガファウナ(巨大哺乳類)」が絶滅している。この時代までには、立ち上がると体長6メートルになるオオナマケモノ、20センチの長い牙を持つサーベルタイガー、3メートルを超える巨大な角を持つギガンテウスオオツノジカなどが存在していた。
ここで重要なのは、その絶滅の原因が、それまでのように大規模気候変動などによる地球規模の生態系への影響ばかりでなく、人類の狩猟の影響が含まれている点である。アメリカ大陸では、人類がマンモス狩りに用いたクローヴィス石器が発見される地層の時期以降、マンモスの生息数が明白に激減していく。フランスのショーヴェ洞窟には、人類によってさまざまな動物の壁画が描かれているが、その大部分は現在の地球上に存在しない絶滅種である。
2020年の段階で、地球上のコンクリートやプラスチックや金属加工品といった「人工物」の総重量が1兆トンを超え、「生物」の総重量を上回ったという。これは、20世紀初頭には「生物」の3%に満たなかった「人工物」が、指数関数的に増加した結果である。2040年の「人工物」は、さらに現在の約2倍になると予測されている。地球上が「人工物」で埋め尽くされていく……。
本書で最も驚かされたのは、現在の地球上で「毎日150種の生物が絶滅している」という国連生物多様性条約事務局の推定である。つまり、実は6度目の大絶滅が現在進行中であり、その原因は「自然」による淘汰ではなく、「人工物」で地球上を埋め尽くし、戦争や環境汚染によって地球を破壊し続ける全生物種の中のたった一種の生物すなわち「人類」にあるというわけである!
本書のハイライト
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