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鳥籠の中にいる鳥に抱っこされた鳥はよく寝る鳥


#わたしの習慣

自分の習慣がなんだろう。ふと思い返してみる。

三日坊主だらけのような自分が今のところ長く続けている習慣。

強いて言えば、娘と外に散歩に行くようになったことだろうな。(意外と普通)


仕事をしていた時の自分にとってはまるで想像もつかない立派で健康的な習慣だ。


結婚する前、全く外にでない内勤の仕事だった。
朝から夜まで、暑いのか寒いのか、雨なのか晴れなのか。
一日中ほどよく空調設備をされている室内で、仕事をする毎日。
そんな仕事場の高く天井に取り付けられた窓から空を眺めては、「鳥籠」のようだなと思い生活を繰り返していた。

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私は夫と結婚し自分の育った街を離れ、初めて聞く行った事もない街に住んだ。
知らない夕暮れのサイレン、見慣れない看板や建物、家族も友人も知ってる人は皆無な白い街。

夫と色んな場所に行っていたが、
娘が生まれてから、朝、昼、晩、余裕が段々と無くなり、小さい体、小さな息をしているか、寝ている時でさえ不安な時間をやり過ごした。
見えない未知のウイルスという外に出ることすら制限される日々も重ねて。

そんな時、ふと見上げたアパートの窓から見た空が
仕事の時みた「鳥籠」から見たような、そんな空だった。

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このままだと自分がしんどくなってしまう。
そう思った時、なぜか妙に甘いものが食べたくなった。
そういえば、ふと近所の和菓子屋さんを思い出した。駐車場もなく徒歩でしかいけない小さなお店。

ちょっと行ってみようと思い、どうしようもなくのびた髪を束ね帽子を被り出かける支度をした。
寝ている娘をベビーカーにのせて15分ほど歩いた。
けれどその日は和菓子屋さんはお休みだった。

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和菓子屋さんに行った日を境に少しずつ散歩に行くようになった。
最初はグーグルマップを見ながらの散歩が、道を覚えていくとあてもなく歩けるようになっていった。

毎日変わる天気に変化していく娘。
夏の暑さが和らいだと思って出かけたら夕立がきてびしょ濡れになったり、冬は寒いねと言いながら抱っこした娘から暖をとりながら帰ったりした。

意思疎通ができるようになりはじめると娘から散歩に行こうと伝えてくれるようになった。
帽子をもち、バッグを持ってきてくれて玄関のドアを指差してくれた。
歩く道も娘が好きなところを選んでもらい
どんぐりが落ちてる公園、変わった葉っぱがある道、ねこがたくさんいる屋根。娘のお気に入りがどんどん増えていった。


習慣のように外に出るとよく会うご近所さんと挨拶するようになり、
お散歩する娘を見かける度、お家からお菓子やお花を持たせてくれたり、
娘と同じ歳の子と仲良くなって遊んでもらったり。

あれだけ知らなかった街が段々と知ってる街に色づいてきた。


何気なく始めたと思った散歩は、たぶん娘が連れ出してくれたように思う。
自分の心の「鳥籠」のような場所から手を引き連れ出してくれてた。



習慣ももうすぐ三年近くなる。
今では、歌を歌いながら跳ねるように歩き回り、いろんな発見を娘が話してくれる慌ただしい散歩になった。


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