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RIPPLE〔詩〕

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2020年12月の記事一覧

四行詩 30.

四行詩 30.

  戦友の姿が見えない
    ずっと傍にいたはず

  僕が戦うべきでなかったものを
    僕の代わりに

  掴み 拐い
    去っていったか 虚空へと

  息吹と笑顔を感じている
    歴史とは心のことだ





今年も大変お世話になりました!
どうぞ良い年をお迎えくださいm(_ _)m
#詩 #詩歌 #ポエム

海岸線の裸足【詩】

海岸線の裸足【詩】

 「海岸線の裸足」

 冬至の微光を追いかけて

 阻む海岸線には裸足

 線をなぞるように並ぶ裸足

 誰もが何かを待つ人だった

 去ってしまったひとを

 追いかけてくるひとを

 待つ人だ

 微光は薄雲に弱められ

 海鳥の群れに散乱されて

 ひとつ

 またひとつと

 内陸へと歩み出す裸足を見た

 海岸線が疎らになっていき

 わたしは

 目の届くところにいる人たちを

 勝手

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パトスの木(詩集『巡る風花』より)

パトスの木(詩集『巡る風花』より)

拙著、詩集『青い風花/巡る風花』より
一部作品を掲載させて頂きます。





  パトスの木

 祈り 涙に 変わり
 木が癒しではなくなった
 口にしたんだ 愛されたい と
 その前にあった 好き は言えずに

 その実 誰かの ために
 木が育ててきたわけじゃない
 もぎ取ろうとして 手を伸ばす
 触れられないよ 好き がこわくて

 誰にも さらわれないで ほしいよ
 誰のためにも な

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琴のつぶて声のしずく【詩】

琴のつぶて声のしずく【詩】

本詩作は仏教詩人アシュヴァゴーシャ(漢訳名:馬鳴)の伝説に基づいて創作したものです。彼の伝説について語る前に、インド古典文学史の簡単な解説をしておきます。しばし脱線をお許しください。解説なんて読みたくないよ〜、という方は退出ではなく是非スクロールでm(._.)m

昨今、インド映画・インド神話が流行を見せており、二大叙事詩『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』の名も広く知れ渡っていることでしょう。これ

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四行詩……か?

四行詩……か?

  「四行詩???」

 心臓に腕 腎臓に目玉 などと書かれた

 メモの旅立ちを見送る窓辺

 歳月に裁断される言葉たち 赤らんで

 ──歩み出す── 背を飾る花吹雪




#詩 #ポエム #詩歌 #文芸 #創作

四行詩(自撰3編・秋冬)

四行詩(自撰3編・秋冬)

12.ㅤ

 衣の裏でそっと抱きしめた

 薄紅のまま残された心

 くすんだ紅と秋の空色は

 今宵 別の色恋へと向かう



* 薄紅(うすくれない) 紅(べに)



14.ㅤ

 蜜も涙も溶けて溢れて

 小さい器を恨めしく見ていた

 月影も届かない窓下の長夜

 明ける頃には 海の一部でいたかったのに





9.ㅤ

 過ぎ去ったとて ここにあります

 高ぶるほどに留まる

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