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RIPPLE〔詩〕

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2019年6月の記事一覧

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喋るのは苦手です。

詩集『組曲/巡る風花』
「レイニー・アンダーパス」

普段は使わない地下道へ 逃げるように駆け込んだ
迫る喧騒に遠ざかる雨音 見渡せば若者たちばかり
人混みの会話に耳を傾け 大衆に紛れた振りをして
濡れた肩のおもみだけが ぼくに安心を与えている

雨がやんだときには
虹を求めたりしない
微かな 光で いい

永遠を求めてうしなった一瞬や 他人に譲った笑顔は
きっとモラルや常識

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暁の下

暁の下

あなたと時間の両輪が
いつの間にか共に廻り出し
よく私を連れて出かけた
未だ知らない私のところへ

宇宙のような小箱のような
暗いばかりの秘密の場所で
悦に顔をほころばせたダリア
背のびをやめないサルスベリ

時の散りばめられた堆肥に
合わずに枯れゆく芽もあれば
徒に増え
手に負えなくなった花々も見た

–– 園の主?––
あなたじゃないし私でもない

ひとり 立ってみる
背にした陽から放たれる粒

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知らぬ恋

知らぬ恋

恋をするたび思い知る
恋を知らなかったということに
恋というものがもし
身の内に 湧き出す泉でも
心の内に 膨れる煙でもなく
誰かと誰かの間に
とつぜん生まれる
色も形も違う 宝石 だとしたら
目の捉えない
手で掴めない
 輝き が
あるところに留まらず
あらゆるところに満ちてゆくのを
止めることができず
ただ口を閉ざすだけ

四行詩 20.

四行詩 20.

  かの眩さに粉々に散る雲の真下で

  千切れたがったこの身がひとつ

  つなぎ止めている宿命ひとつ

  許されたのは内に広がる時の空だけ

四行詩 19.

四行詩 19.

  嵐の去りて凪いだ日常、
   恋の名残が陽だまりに沈む。

  激しい渦に羽を裂かれた、
   鳥の群れは大海へと墜ちた。

  幸運な雛がただ一羽、
   天を突き抜け帰れなくなった。

  嵐の上で声なく暮らし、
   微かに届くのは福音の羽音。