レンズ豆(マニアックカメラ講座)

元カメラメーカーの写真レンズ&ファインダーレンズ&HMD設計者。カメラが好きでレンズ設…

レンズ豆(マニアックカメラ講座)

元カメラメーカーの写真レンズ&ファインダーレンズ&HMD設計者。カメラが好きでレンズ設計を始めたという趣味人。 最近は自宅でレンズのMTFを測定できる環境を構築し、さらに測定精度をあげられないかと検討中。Facebookでカメラ系グループを立ち上げて管理人もしている。

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ミラーレスカメラにフィルム時代のレンズを使う場合の留意点

 ミラーレスカメラはバックフォーカスが短いため、安価なマウントアダプターで昔の多種多様なレンズを使えることが利点です。このため、現代レンズよりもソフトな描写が欲しいときなど、古いレンズを使う人も多いと思います。  フィルムカメラの場合はレンズのあとにすぐフィルムがきますが、デジタルカメラの場合は水晶ローパスフィルターやセンサーのカバーガラスなどの内蔵フィルター類の後ろに撮像面があります。  平面ガラスなんだから画質に影響する訳ないでしょ!みんなレンズに保護フィルターつけてるし

    • 蛇腹フードの勧め(前篇/通常使用編)

      みなさんは蛇腹フードというのをご存知でしょうか? 蛇腹の長さを変えることで、色々なレンズに対応できるレンズフードで、かつては中判カメラでよく使われていたものです。 現在はCokinなどのフィルターメーカー製が主になっていて、最近のフィルター経が大きい大三元ズームなどでも使用できる製品が販売されています。多彩なフィルターワークをするときや、ギリギリまで不要光をカットしてフレアが少なくコントラストの高い画を撮りたいときに便利です。 逆光で、太陽光がレンズに入射して、こんなふうに

      • Nikkor Z50/1.2はビオゴンタイプ?

        ニコンの方々が、”このレンズはビオゴンタイプだ” と宣言されておりますが、本来のビオゴンタイプとはぜんぜん違うレンズ構成です。ここでは本来のビオゴンタイプとは何か、ビオゴンタイプのどのような特徴を取り入れたのか、どのような考えでこのレンズが設計されたと思われるかなど、このレンズのレンズ構成を見ながらレンズ設計者目線で語ってみたいと思います。     本来のビオゴンとは? この図は本来のビオゴンタイプにかなり近いもので、ニコンSシリーズ(1948年~)用広角レンズ21mmF4

        • あると便利な写真用品?? 汎用品流用

          本来、写真用品以外の商品でありながら、使ってみると非常に便利な商品がいくつもあります。当然ながら、本来の用途でも使えますので、1個持っていると非常に便利です。 本来はビンを開けるときのオープナー、、、ですが、軽くぶつけてしまって外せなくなったフィルターを外したり、軽修理のためにレンズを分解するときなどに非常に便利です。3サイズがセット販売されているので、1セット持っているとたいてい使えます。 本来は銃に付けて照準をつけるためのものですが、、、超望遠で鳥などの動きものを追う

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        ミラーレスカメラにフィルム時代のレンズを使う場合の留意点

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        • 引伸しレンズを撮影に使おう
          5本
        • 中華レンズの世界
          4本
        • カメラ関連雑感
          1本

        記事

          引き伸ばしレンズデータ集(フジ編)

          前回、ニコンの引き伸ばしレンズについて実測Fb値などを載せたデータ集をUPしましたが、その記事の続編(フジ編)です。 国産引き伸ばしレンズでは、ニコンとフジが双璧を成していたと思っています。 前編にあたるニコン編はこちら https://note.com/lensculinaris/n/n690192cd6ffc    撮影に使う場合に、どのくらいの長さのヘリコイドリングを使えば無限遠まで撮影できるかの参考になると思いますので測ってみました。     あくまで手持ちレンズ1

          引き伸ばしレンズデータ集(フジ編)

          フルサイズとAPS-Cで同じボケ・解像感を得るには・・・レンズ選びの参考に

          フルサイズからAPS-Cに乗り換えるとボケなくなって困る、撮像面積が狭いと解像度も出ない、、などと思っている人も多いかと思います。その対処法を解説するためには、理論的な裏付けが必要だと思いますので、まずは数値で追っていきます。 ★ボケ径の比較条件★ フルサイズの50mmF2.0とAPS-C、M4/3の例で計算していきます。単純化のためレンズは全て薄肉レンズ(厚さ0)の近似計算とします。 焦点距離=f、繰り出し量=⊿d、被写体距離(レンズ~被写体)=d とします。 フルサイ

          フルサイズとAPS-Cで同じボケ・解像感を得るには・・・レンズ選びの参考に

          中華レンズの世界 Vol.4 大口径レンズ

          以前、小型標準レンズの紹介をしましたが、今回は大口径レンズです。 大口径レンズでは、設計方針により描写の癖が違いますので、購入する場合、どういう性能を目指した製品なのかを見極める必要があります。 TTArtisan 50mm F1.4 ASPH (フルサイズ用) F1.4開放で撮ってみました。カメラはα7Ⅱ。 同じ構図で前ボケ、後ボケを見ていますが、ボケに変な癖や色味の有る輪郭も見えないきれいなボケをしていると思います。色収差と非点格差が少なく、各色の色コマ収差も揃ってい

          中華レンズの世界 Vol.4 大口径レンズ

          引き伸ばしレンズデータ集(ニコン編)

          引き伸ばしレンズを撮影に使う場合に、どのくらいの長さのヘリコイドリングを使えば無限遠まで撮影できるかが判っていたほうが便利だと思いますので、手持ちの引き伸ばしレンズのフランジ面~像面までの距離、外形寸法、重量を測ってみました。 あくまで手持ちレンズ1個の実測であり、Ver違いなどによりフランジバック長が違うこともあり得ますので、このデータと違う個体もあり得ますことを了解願います。 EL-NIKKOR 50mmF4N  (左:新タイプ) EL-NIKKOR 50mmF4 

          引き伸ばしレンズデータ集(ニコン編)

          中華レンズの世界 Vol.3 魚眼レンズ

           最近の中国製レンズの性能向上は目覚ましいものがある。 ほんの数年前なら、中国製レンズは低価格だけが売りの低性能で見かけも安っぽいレンズでしかなかった。しかし最近は事情が急変している。これには定年退職した日本人レンズ設計者が多数中国メーカーで働いていることも影響している。  中華レンズのオススメの分野として、魚眼レンズがあります。魚眼レンズは焦点距離が短いため、一眼レフ用の魚眼レンズは性能が出しにくかったのですがミラーレス専用設計の魚眼は簡単に高性能が出せるのです。 TT

          中華レンズの世界 Vol.3 魚眼レンズ

          中華レンズの世界 Vol.2 小型標準レンズ

          前回は小型広角レンズでしたので、今回はその続きとして小型標準レンズを紹介していきたいと思います。あくまで”小型”なので、APS-C用MFレンズの話です。 このグループはさらに2つのグループに分けられると思います。 ① 大口径・・・開放ではソフトな描写のものが多いレンズ群 ② 小口径・・・開放からシャープな描写のものが多いレンズ群 ①の群は35mmF1.2のような際立って明るいレンズで、多くの製品は非球面レンズを用いない設計なので大抵は球面収差が過剰補正タイプとなっています

          中華レンズの世界 Vol.2 小型標準レンズ

          中華レンズの世界 Vol.1 小型広角レンズ

           カメラと言えば日本メーカー製。日本製カメラは高性能で低価格。それが当たり前という感覚。一部の趣味人はライカなどドイツブランドを使っているけど、普通に使うならむしろ国内メーカーのほうが便利、、、というのが今のカメラ事情。  そして、ノスタルジックな雰囲気で撮りたい!!などと思ったら古いレンズを使ったりソフトン系フィルターで小細工したり、など小道具に凝ったりする人も多いかと思います。  その先にあるのが、実は中華レンズだったりします。中国製というと、”低性能な安物”、と思う人

          中華レンズの世界 Vol.1 小型広角レンズ

          旧ビオゴンレンズの性能改善番外編・・ライカL39マウントでも改善可能に!!

           前回の記事では、フォーカス駆動範囲に余裕があるコンタックスGビオゴン前提でしたが、今回は汎用性を考慮したライカL39マウントのレンズでの記事になります。ただしカメラはフランジバックが短いニコンZマウント機前提です。(残念ながら。。。薄型M42ヘリコイドのEマウント版が見当たらないので。。。)  前回でも、なぜクローズアップレンズで画質改善するかを解説しましたが、今回も軽く述べておきます。カメラ内のローパスフィルター等の影響でビオゴンタイプの広角レンズでは、レンズから離れる

          旧ビオゴンレンズの性能改善番外編・・ライカL39マウントでも改善可能に!!

          旧ビオゴンレンズの性能改善・・手軽に周辺解像度Up!!

           フィルムカメラ時代に設計されたビオゴンタイプの広角レンズをミラーレスカメラで使う場合、カメラ内のローパスフィルター等の平面フィルターで像面湾曲が発生します。(前編参照)  像面が後ろに反るのだったら、像高の高い位置に行く光線を前側に引っ張れば良い=像高ごとの光線が違う位置を通る位置に凸レンズを入れれば良い、というわけで、レンズ前にクローズアップレンズを付けた場合を検討していきます。 コンタックスGシリーズ用AFレンズの場合、AFで動かす範囲よりもメカ的に動かせる範囲が広

          旧ビオゴンレンズの性能改善・・手軽に周辺解像度Up!!

          引き伸ばしレンズの利用☆最上級編  ♡ベローズのすすめ ニコンPB-4紹介

           この写真は150mmF4.5の引伸しレンズ+ベロースで撮影したものです。このような輪郭に色にじみがない、ボケの綺麗な画像は高性能レンズだからこそ得ることができるものです。(1500円くらいで購入したレンズですけど、、、) 150mmという長焦点レンズで接近撮影をしているので、レンズ~像面の長さは20cm程度になりますので、ベローズ必須と言って良い領域です。 はたして、ベローズって何?? 撮影レンズとカメラの間に挟む伸縮自由な蛇腹のことです。フィルムカメラ時代はどこのカメラ

          引き伸ばしレンズの利用☆最上級編  ♡ベローズのすすめ ニコンPB-4紹介

          安原一式の思い出。。。安原氏の訃報を聞いて

          安原製作所の社長さんがお亡くなりになられていたとのこと  同じ業界にいた身とは言え、、底辺の元設計者に過ぎないので情報を知る由もなくかなり遅れて知ることとなりました。その記事の中でこの本のことが紹介されていたので読んでみたのですが、いろいろと驚くことが多かったので書いておきます。  京セラを脱サラされて創業したのは存じ上げていましたので、あれだけ資本力がいることをされたのだから、そこそこご年配の方だったのかと思いこんでいました。。。しかし読んでみて、30歳代の初めに京セラ

          安原一式の思い出。。。安原氏の訃報を聞いて

          安価な高性能レンズ、その名は”引伸しレンズ“ 上級編

          望遠マクロレンズとして引き伸ばしレンズを使ってみたいっ!!という場合、、75mm、90mm、105mm、135mmなどの引伸しレンズを使うことになります。このときは長めのM42ヘリコイドリングを組み合わせることになります。長めのヘリコイドリングは可変範囲が大きいので連続的に接写ができて便利です。 しかし、、、この組み合わせで逆光の条件で撮ると、フレアでガッカリしてしまうかも知れません。でも、ダメレンズだなぁ!!と決して思ってはいけません。花などを接写でキレイに撮るにはやはり

          安価な高性能レンズ、その名は”引伸しレンズ“ 上級編