フルサイズとAPS-Cで同じボケ・解像感を得るには・・・レンズ選びの参考に
フルサイズからAPS-Cに乗り換えるとボケなくなって困る、撮像面積が狭いと解像度も出ない、、などと思っている人も多いかと思います。その対処法を解説するためには、理論的な裏付けが必要だと思いますので、まずは数値で追っていきます。
★ボケ径の比較条件★
フルサイズの50mmF2.0とAPS-C、M4/3の例で計算していきます。単純化のためレンズは全て薄肉レンズ(厚さ0)の近似計算とします。
焦点距離=f、繰り出し量=⊿d、被写体距離(レンズ~被写体)=d とします。
フルサイズ50mm相当画角のレンズを付け、被写体距離1mの物体にピントを合わせて撮影、そのときの無限遠にある点光源の背景がどのくらいの大きさにボケるかで比較していくこととします。ボケの大きさは、対角がA4サイズの対角いっぱいになる大きさにプリントしたときの大きさで計算することとします。
繰り出し量計算
繰り出し量は以下の式から計算できます。
(1/d)+(1/(f+⊿d))=(1/f)
各条件での焦点距離、被写体距離1m を入れて計算すると繰り出し量は
50mmレンズなら⊿d=2.79mm (フルサイズ標準レンズ)
33mmレンズなら⊿d=1.17mm (APS-Cサイズ標準レンズ)
25mmレンズなら⊿d=0.66mm (M4/3サイズ標準レンズ)
ボケ径の計算・・・まずはフルサイズで計算
1mにピントを合わせた時に無限遠の点光源がどのくらいのボケ径(⊿φ)になるかを計算すると、
50mmF2なら入射時の光束径φは 50mm÷2=25.0mm
ボケの径は、この三角形の比例計算で計算できるので
50:25=⊿d:⊿φ
⊿φ=(25x⊿d)÷50=1.32
フルサイズからA4用紙にプリントすると、拡大率は8.41倍なので
プリント上のボケ径は11.09mmになります。
(対角がいっぱいにプリントされる倍率で計算)
ボケ径の計算・・・M4/3だとどうなる??
標準レンズの焦点距離がちょうど半分なのでこちらを先にします。
25mmF2なら入射時の光束径は 25mm÷2=12.5mm
⊿φ=(25x⊿d)÷25=0.32
M4/3からA4用紙にプリントすると、拡大率は16.81倍なので
プリント上のボケ径は5.5mmになります。。。。
25mmF1.0で計算すると、プリント上のボケ量は10.8mmとなり
35mmフルサイズと同じ画角、ほぼ同じボケ量で撮影できることになります。(微妙に違うのは画面の縦横比の違いなどから出ます)
ボケ径の計算・・・APS-Cだとどうなる??
なぜM4/3を先に計算したかというと、APS-Cの寸法が微妙に中途半端だったからです。35mm版の面積半分とは微妙にずれています。
33mmF2なら入射時の光束径は 33mm÷2=16.5mm
⊿φ=(16.5x⊿d)÷33=0.56
フルサイズからA4用紙にプリントすると、拡大率は12.9倍なので
プリント上のボケ径は7.12mmになります。
33mmF1.4のときはプリント上のボケ量は10.38mmで35mmフルサイズとかなり近くなります。ちょうど面積半分ならAPS-C35mmF1.4でフルサイズ50mmF2と全く同じと言えたのですが。。。
一言で言えば、、、
35mm版と同じボケ描写を得たいなら、APS-Cでは1段明るいレンズ、M4/3なら2段明るいレンズを買って、絞りを1段or2段開けて使いましょう!! ということです。
よく、APS-Cだと解像限界が低いから駄目!!と言うひとがいますが、ミリあたりの解像限界はFnoで決まります(Fnoに逆比例します)ので、明るい高性能レンズなら解像限界が上がり、APS-Cならフルサイズより1絞り開けて写せば同じ情報量が得られる(可能性がある)こととなります。ただし1段絞りを開けた状況で、1ミリあたりでの解像本数が1,4倍あるレンズというのはかなり厳しい条件ですが。。。
完全無収差のレンズの場合、完全平行光で作られる点像の径⊿は
⊿=0.61*(λ/NA)=1.22*λ*F
(NA=開口数、λ=波長、F=レンズF値)
で計算できるので、F値が倍になれば点像の径も倍になることがわかります。(完全平行光を考えているので、無収差レンズを使うなら幾何光学領域では直径ゼロですが、波動光学領域なら回折により直径ゼロではありません)
つまりAPS-Cはフルサイズと比べ長さ比で1/1.5程度の大きさなので、1段明るいF値でレンズを使えば同じ解像感を得ることが出来ることになります。
念の為に書いておきますが、明るいレンズは必ず高解像だという訳ではありません。高解像度に設計できる可能性があるだけです。明るいボケボケレンズも多々あります。(昔の上司で、レンズは全て理論解像度が出ていると思い込んでいた人がいるので念のため)
高名な大先生方でも理詰めで考えていないせいか、理屈と外れたことを書かれておられる方がおられますので、今回はあくまで理屈で追ってみました。
さて、実写で確認してみました。
最初、APS-Cに大口径レンズを使いたかったのでNeewer35mmF1.2、フルサイズはTTArtisan50mmF1.4で実写してみたのですが、Neewerのレンズがバブルボケ傾向が強く、それだとボケが大きく見えてしまうため比較になりませんでした。絞らないと解像度が出ないのも大口径での比較には致命的でした。
そのため、APS-Cは高解像度で癖が少ないレンズで撮り直すことになりました。
比較レンズ カメラは以下の機種
APS-C :FUJINON XF 35mmF2.0 ASPH Fuji X-E3
35mm : TTArtisan 50mmF1.4 ASPH Nikon Z6
APS-Cとフルサイズでほぼ同等な画角のレンズを使用し、ほぼ同じ位置から絞り値を変えて撮影しています。カメラ~こどもおみくじの紙までの距離は約1mです。
まずは APS-C 35mmレンズ でF2.0,F2.8、F4.0
次は フルサイズ 50mmレンズ でF2.0,F2.8、F4.0、F5.6
APS-Cの場合、フルサイズより1段絞りを開けて撮影すると、ほぼ同じボケ径になっていのが解るかと思います。
テストチャートでの比較もやってみました。
1枚め・・・APS-C 35mmF2.0 FUJINON XF 35mmF2.0 ASPH
2枚め・・・フルサイズ 50mmF1.4 TTArtisan 50mmF1.4 ASPH
3枚め・・・フルサイズ 50mmF2.0
4枚め・・・フルサイズ 50mmF2.8
よく見比べると、APS-CのF2開放はフルサイズのF2.8と同等の被写界深度と言えるかと思います。
今回の比較で使ったカメラ、レンズたちを紹介
絞り開放から高解像、癖の少ない描写。防水仕様のタフなレンズ。
インナーフォーカスなのでAFも爆速です。比較撮影で周辺光量の
多さには驚きました。
フルサイズで使ったレンズはこちら
8群10枚構成、低分散1枚、非球面レンズ1枚という豪華仕様レンズ。
フィルム1眼レフ時代の標準レンズとは比較にならない高描写力。
マウントはアダプター併用での汎用性が高いライカMマウント。
ニコンZマウント仕様&ソニーEマウント仕様
小さなAPS-Cレンズを使うときはこんなカメラのほうがお手軽で便利。
小型軽量でいつでも持ち歩けるというのも重要な性能です。
ボディー内手ブレ補正も付いているので非常に便利
フルサイズで使ったのはこちら
ボディー内手ブレ補正は他社MFレンズやオールドレンズを使うときにも非常に便利。画素数が多すぎない機種は暗さに強いという利点もあります。
やっぱり画素数は重要だよ、と言う場合はこちら
野生動物や飛行機を撮る場合など、トリミング耐性を必要とする場合は画素数が多いほうが便利ですね。
今回写したほかの写真たち
1枚め FUJI XF35mmF2ASPH 絞り開放
2枚め TTArtisan 50mmF1.4ASPH 絞り開放
1枚め FUJI XF35mmF2ASPH F2.0
2枚め TTArtisan 50mmF1.4ASPH F1.4
3枚め TTArtisan 50mmF1.4ASPH F2.0
4枚め TTArtisan 50mmF1.4ASPH F2.8
5枚め TTArtisan 50mmF1.4ASPH F4.0
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