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旧ビオゴンレンズの性能改善・・手軽に周辺解像度Up!!

 フィルムカメラ時代に設計されたビオゴンタイプの広角レンズをミラーレスカメラで使う場合、カメラ内のローパスフィルター等の平面フィルターで像面湾曲が発生します。(前編参照)

 像面が後ろに反るのだったら、像高の高い位置に行く光線を前側に引っ張れば良い=像高ごとの光線が違う位置を通る位置に凸レンズを入れれば良い、というわけで、レンズ前にクローズアップレンズを付けた場合を検討していきます。

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コンタックスGシリーズ用AFレンズの場合、AFで動かす範囲よりもメカ的に動かせる範囲が広く作られているため、弱い凸レンズを追加しても無限遠まで写せる可能性があります。

 カメラによって内蔵フィルターの厚さが違うので、薄め(1.5mm)と厚め(3mm)でどの程度のレンズ度数が最適かを追ってみました。この1.5mm&3mmという厚さは実際の製品を測定したわけではなく、あくまでこの程度ではないかという ”目安としての数値” です。またレンズデータも別なレンズの特許データを28.5mmF4ににスケーリングしたものなので、あくまで ”傾向” として見てください。

まずは①=元のMTF、②=像面前に厚さ1.5mmのフィルター入り、③=②の前側に+0.7Dのクローズアップレンズを付けたときのMTFです。

ビオゴンMTF元+15mm_+07D

 フィルター厚が薄めのカメラなら、+0.7Dのクローズアップレンズだとほぼちょうど打ち消せそうです。+0.7Dのクローズアップレンズはディスコンになっていますが、ヤフオクなどで探せば手に入れることができます。ニコンクローズアップNo.0という名称です。

 次に3mmのフィルター類が入っている時を検討していきます。①=元のMTF、②=像面前に厚さ3mm厚のフィルター入り、③=②の前側に+0.7Dのクローズアップレンズを付けたとき、④=②に+1.0Dのクローズアップレンズを付けたときです。低周波がほぼ元に戻るのは+1.0Dの時ですね。無限遠までピントが行くかどうかぎりぎりになるので悩ましいです。安全を見越すなら+0.7Dですね。+1.0Dのクローズアップレンズというのは、フィルターメーカーのクローズアップレンズNo1のことです。

ビオゴンMTF+3+07+1

実写テスト
さて、、、お待ちかねの実写テスト結果です。チャートは以下のものを用いて中心、対角5割、対角10割位置を切り出しました。

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上=ニコンZ6+ツァイスGビオゴン28mmF2.8 中心、対角5割、対角10割
下=上記カメラ&レンズにニコンクローズアップNo.0を追加。

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 ニコンは自社H.Pでフィルターをできるだけ薄くしたと書いているだけあって、5割まではなかなか高性能でしたが隅で急落していました。それがクローズアップNo0を追加すると隅までかなり良好です。シミュレーション結果に近いため、フィルター厚1.5mmで製品にかなり近そうです。


 次にα7での結果を見ていきます。
上=ソニ-α7+ツァイスGビオゴン28mmF2.8 中心、対角5割、対角10割
下=上記カメラ&レンズにニコンクローズアップNo.0を追加。

A7+Biogon_中央0510

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 こちらはフィルターが厚めなのか、素の状態では5割位置からかなり崩れています。クローズアップNo.0を追加すると5割位置はかなり解像度が上がりますが隅部の改善はまだまだです。No.1のほうが良さそうですが無限遠まで写せるかは微妙と思われます。。。これはデジタルカメラ用ではない旧レンズを付けた場合の話ですので、デジタル用レンズを使用する場合はきちんと隅まで写ります。


クローズアップレンズを付けた弊害はないの??

 ディストーションが少し+方向に変化します。しかし内蔵フィルターにより-方向に変化していたものに追加されるので、大半は打ち消されてミラーレス機でそのまま撮るよりもむしろ改善されることが多いと思われます。以下の図は、①=元のディストーション、②=内蔵フィルタ3mmのカメラで撮った場合、③=②のカメラにクローズアップNo.0を付けたときです。あと、倍率色収差も変化しますが、像面湾曲を直したほうが大抵はよく映ると思います。

ビオゴンDist元+3mm+NikonNo0

 焦点距離が、ごく僅かに短くなりますが、このシミュレーションでは28.5mmの焦点距離が+0.7D追加で28.32mmに変化、+1.0Dなら28.24mmに変化した程度ですので気にならないと思います。
  
 フランジバックは、f=28.5mmの例では+0.7D追加で-0.18mm変化、+1.0Dなら-0.26mm変化しています。手持ちの28mmGビオゴンと+0.7Dのクローズアップレンズでは無限遠を行き過ぎる程度の余裕がありました。しかし個体ばらつきの範囲を把握してはいないので無限遠が出ないこともあり得ると考えています。
   
 元の収差に完全に直したわけではなく、内蔵フィルターで発生した+方向の像面湾曲(+その他の収差)に対し、クローズアップレンズによって発生するー方向の像面湾曲(その他の収差)を加えることで打ち消しあった結果ですので、打ち消し合わずに残っている収差はいろいろあります。そのためフィルムで使ったときの収差状況に完全に戻ったわけでは有りませんが、そのままミラーレスカメラで使うよりも改善されていると考えております。

凸レンズ参考資料
ケンコー、マルミ 等
クローズアップレンズ No.1  +1.0Diopter(f=1000mm r=517/∞?)
クローズアップレンズ No.2  +2.0Diopter(f=500mm)
ニコン(ディスコン)
クローズアップレンズ No.0  +0.7Diopter(f=1429mm r=738/∞?)
クローズアップレンズ No.1  +1.5Diopter(f=667mm r=345/∞?)
シグマ光機(枠なし)高価ですが高精度品です。
球面平凸レンズSLB-50-1500PM r=778.5mm(f=1500mm)
球面平凸レンズSLB-50-2000PM r=1038mm(f=2000mm)

Nikon Z6 Gビオゴン28mmF2.8+ニコンクローズアップNo.0での実写例。どちらも絞りはF2.8開放です。

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 当方はGビオゴン28mmでしか検討/確認しておりませんので、G21mmでどうなるかについては不明です。また無限遠でピントが合うか合わないかは、レンズ、マウントアダプターの個体差により変わってきますので無限までピントが合うかは保証いたしかねます。自己責任でお願いします。

GシリーズのビオゴンにニコンのクローズアップNo.0を付けるときに使用

フィルター厚が厚めのカメラならクローズアップNo.1ですが、無限遠まで撮れる保証はありません。Φ46なのでGビオゴンに直接付けられます。

52mm径はこちら。

52mm径ワイドレンズ用フード


46mm径ワイドレンズ用フード



前編はこちら

続編はこちら


ペンネームのレンズ豆とはこんな豆です。昔のカメラ帝国ドイツでは、ソーセージやジャガイモと一緒に煮てスープにします。レンズ豆スープ(レンズンズッペ)ですね。




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