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元気がなくても生きていくハック

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抑うつ状態の日々を少しでも快適に乗り切っていくための覚え書。 ぐうたら手抜き生活の手引きでもあるかもしれない。
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笑えなくてもいい

笑えなくてもいい

去年の今頃は、色々なことがあった。

研究のための調べ物と考察に追い詰められていた。
ひとりぼっちの時間の中、誰からも必要とされていないような寂しさを味わっていた。
そこから一転、自覚していた以上に大きな愛情を友人から注がれていることを知り、それを受け止めきれずにうろたえた。

心の中は、ずっと暗いままで、ずっと悲しくて、寂しかった。
きっと今も世界のどこかには、あの時のわたしと同じような気持ちで

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病む力

病む力

むかし、思ったことがある。
病むこともひとつの自己表現だな、と。

頭が痛い。
からだが重い。
気分が落ち込む。
そんな不調の奥底には、普段気付かずに、あるいは意識的に通り過ぎている体や心の訴えがある。

デスクワークし過ぎだよ。首や肩に負担がかかってるよ。
最近、睡眠時間足りてないんじゃない? そろそろしっかり休もうよ。
ずっと緊張しっぱなしで、ナーバスになってるよ。ちょっとほっとできる時間を作

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パッとしなくていい

「理想としてはね、人生の最後に『なんかパッとしない人生だったけど、まぁ悪くはなかったなぁ』と思うくらいの境地がいいんですよ」

どういった流れだったか、なんというかまぁそんな話になった。
そうだ、確かはじめは、気分について話していたのだ。
朝、目覚めた時の気分について訊かれて、「まぁ、ぼちぼち。訳もなく悲しいこともあるけれど、うっすら明るいこともある」と答えたら、彼が紙とペンを出してきて、グラフめ

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いつからか羊を数えなくなっていた ~睡眠障害~

いつからか羊を数えなくなっていた ~睡眠障害~

困っていること、という程でもないけれど、最近寝付きが悪くなった。

休職した当初は、よほど疲れが溜まっていたのだろう。
時には13時間寝続けるようなこともあって、日中も少し動くだけで疲れて、ほんの仮眠のつもりが、気づけば2時間も寝てしまったりしていた。
それが最近は、日の出とともに目覚めるようになった。
日中に感じる疲れも、だいぶ軽くなったと思う。
その代わり、というのだろうか、寝付きが悪くなった

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苦手な人の顔ばかりを思い出していた

苦手な人の顔ばかりを思い出していた

友人に会いに行くようになって。
もとい、精神科外来に通いはじめて、気づいたことがある。
苦手な人の顔を、思い出さなくなった。

正確にいえば、それはゼロになったわけではない。
けれど、メールのやりとりをしたり、研究についてふと思い巡らせた瞬間に立ち現れる表情や声は、さほど長続きすることなく、意識の流れとともに過ぎ去ってくれる。
翻ってこの 1 年ほどを思い返すと、過去の傷をえぐるその人の非難や怒声

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物語の弊害と効能と、情動粒度のはなし

物語の弊害と効能と、情動粒度のはなし

ゆったりと過ごし、徐々に体力を取り戻す日々だが、少し、困っていることがある。

本が読めない。
正確には、小説が、読めない。
人文系や科学系の一般書は、まずまず読める。
論文も、複雑な解析など含むものになるとまだ頭がフリーズするが、自分の専門から大きく外れない分野の臨床系のものなら、大意を流し読める程度にはなってきた。
けれど小説は、読めない。手が伸びない。

映画も、ドラマも、漫画も。
そこに人

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そこに写真があれば、わたしは眺める人でいられる。

そこに写真があれば、わたしは眺める人でいられる。

あれは抑うつの最中。
どこまでも沈んでいきそうな心地で、何もできずに座っていた頃。

ふと思い立って、本棚からのろのろと、一冊の写真集を取り出したことがある。
ばさりとページを開いて、また固まって。
再び動けなくなって座り込んだまま。
気づけば涙があふれていた。

わたしは、うつしいその景色を濡らさないように、自分の顔をそっと後ろにずらした。

あざやかな色が、目にまぶしすぎたのかもしれない。

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元気がなくても食わねばならぬ【うつ飯】

抑うつ状態になると、日常の色々なことができなくなる。
気力が枯れ果てているせいもあるが、そもそも頭が回らないのだ。

それでも生きねばならぬ。

夏には大切な友人の出産が控えているし、周りの人に迷惑はかけたくない。
何より「生きていてくださいね」と指切りした友人との約束を、簡単に違えるわけにもいかない。

そんなわけで、生きねばならぬ。
生きるためには、食わねばならぬ。

まぁ人間、一週間やそこら

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曇りの日には窓を磨こう

曇りの日には窓を磨こう

気分を変えたいとき、助けになってくれるのはどんなことだろう?

たとえば、深呼吸をする。
深く息をしようとすると、つい吸う方に意識が向ってしまうが、上手くいくコツは、しっかりと吐き切ることだ。
細く、長く、最後の一息までを絞り出した後。
力を緩めると、たっぷりとした空気が肺を満たしていく。
新鮮な空気が胸郭を押し広げていく感覚は、波立った気持ちをしずかになだめてくれる。

たとえば、水を飲む。

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