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中学三年生の国語の時間に偶然出会った作家と友達になれたこと

私が中学三年生だったとき。この日の国語の授業は、新しい単元に入ることになっていた。

「ふーん、今日は小説か。・・・え、この作者、これ何て読む?」

教科書の目次にあった名前が、読めなかった私。

魯  迅 (ろじん)

「ろじん?なんか面白い名前!へ~、中国の作家か・・で、これどんな小説?」と、クエスチョンマークだらけになって教科書の本文を読み始めた。

『故郷』

他郷で知事にまでなった私は二十年ぶりに、故郷に戻る。母が住む古い家を人手に売るために。また、子どものころ知り合った少年、閏土(ルントウ)とは共に遊んだ仲。いろいろなことを知っている閏土の話は、とても面白く、いつもワクワクさせられる。そして再会を楽しみにしていた私に投げかけられた、「だんなさま・・・」という閏土の一言。その瞬間、私は二人の間に悲しむべき厚い壁を感じたのだった・・・

でも、私は甥の宏児(ホンル)と、一緒に来た閏土の息子・水生(シュイション)の心が通い合う様子を見て、私たちが経験したことがない、新しい生活を持つべきだと思う。

希望というものは、本来あるともいえないし、ないともいえない。それはちょうど地上の道のようなものだ。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。

『阿Q正伝・狂人日記』(松枝茂夫・訳 旺文社文庫 P58より抜粋)

この最後の部分は、あまりに有名なところ。

本当に、なんてすごい作家なんだろう!強いメッセージを感じて、思わずクラクラした。

15歳の私は、魯迅という作家の存在を初めて知ったこの日を境に、自分の世界が180度変わった。魯迅に出会った今日の自分と、魯迅を知らなかった昨日までの自分。自分の中で、はっきりと線引きされたから。

それから書店に走り、この本を買った。(あまりに古くて、変色している・・・でも、捨てられない・・・)

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『狂人日記』『阿Q正伝』などは、またしても私の心をグオングオン揺さぶった。文化背景や、独特の言葉遣いなんかがあって、わからないところもあったけど、魯迅という作家に出会えてよかったなあ・・という思いでいっぱい。

北京にいたときも、思わず新華書店で買ってしまった・・・

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こちらは、当然オール中国語で、全部読めてはいない。(わからないところも多い)でも、ページを開くと、魯迅が話しかけてきてくれるように思えて嬉しい。私が作品を原文で読めるまで、気長に待っていてくださいと、お願いした。

また今、日本の中学三年生は、ほとんどの学校で『故郷』を学ぶ。(少なくても、私が先日見た国語の教科書にはあった。)初めて魯迅と出会う中学生が大半ではないかな?その中で、一人でも作品や人物に、興味や関心を持ってくれたら、この中国の大作家も喜ぶだろうな。(日本留学もしているから)

遥か昔、異国の中学三年生の前に颯爽と現れた大作家。もうすでにいいトシになっている元・中学三年生は、今でも大作家のことを「よき話し相手・よき親友」だと思っている。一方的だけどね。

さて明日9月25日。大作家・魯迅の140回目のお誕生日だったりする・・







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