クスノキ陽菜

クスノキ陽菜です。 詩を載せられたらいいな。

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最近の記事

墓守の男

この墓に眠るのは一人の少女 その少女の宝物と 少女が愛した愛玩動物 丘の上にぽつんと佇むその墓を 俺はいつも守っている 墓石を磨き 花を供え 少女が好きだった宝物を 守り続ける ある朝ふと目を離した隙に 墓がすっかり暴かれていて 棺の中の大切な 少女の髪飾りを盗まれた 別にいい もうあれをつける人はいない 別にいい また誰かに愛されるなら 別にいい 別にいい… 墓を暴かれた事がばれ 俺は死刑を言い渡された 俺に死刑を言い渡したのは

    • 【詩】君の墓

      世界で一番好かれている君の事を 知りたいと思ったぼくは愚かだったね 世界の誰にも嫌われていない君の事を よく知っている唯一人のぼく ぼくは君の事を知る度に嫌いになった ぼくが嫌いだと言っても ぼくを好きだと言う君 世界で一番嫌われ者の ぼくを好きな君 君の事を知りたいと思ったぼくは愚かだった 君を嫌いになる度にぼくの事が嫌いになる ぼくを殺せよ、ぼくを跡形もなく ぼくの首を締めて、命を消せよ ぼくの命を、君にあげるからさ 君は生きろよ、醜く生きろよ

      • 【詩】きみのいる世界

        きみが幸せになったなら ぼくはとても嬉しいよ きみが夢を叶えたなら ぼくもすごく幸せだ きみが死んでしまったなら ぼくはとても悲しくて きみのために星が降る世界で ぼくは死んでしまう きみが生まれたことが きみが生まれた世界が とても美しいと思えた 醜いものだらけの世界で きみが生まれた世界 きみが生きる世界 きみが死んだ世界 どれも恐ろしくてたまらない きみに出会ってしまった ぼくの恐怖の源と きみを失う事が 恐ろしてたまらない きみ

        • 夢を見るには早すぎた 自分の事をわからないまま 突き進むのはあまりにも過酷だった 自分の命を投げ出してまで追う夢ではなかった 一番やらなきゃいけなかったのは 自分の中にいる もう一人の自分の存在を認める事だった 自分を慰めるものばかり作って そんなもので人を楽しませることなど できるはずもなかった 自分の表面を慰めるばかりでは 何も変わらないのは当たり前だった 私は一度中に入って もう一人の自分を表に出さなくてはいけない そしてそれを癒せたら いつもどこか

          【詩】私、ぼく、俺

          大丈夫 大丈夫 私はきっと私になれる 大丈夫 大丈夫 私はもっと強くなれる 大丈夫 大丈夫 ぼくはもっと正しくあれる 大丈夫 大丈夫 ぼくはもっと苦しめる 大丈夫 大丈夫 俺はもっと美しくあれる 大丈夫 大丈夫 俺はきっと俺になれる

          【詩】私、ぼく、俺

          【詩】肉体

          大人になる事を恐れた少女は 自らの身体に刃を突き刺した 死にそびれてしまった少女は 己の中にいる少年の姿を見た 少女は少年に恋をして 「あなたにこの身体をあげる」 そう言って隠れてしまったのだ ずっと隠されて生きていた少年は 嬉々としてその身体を乗っ取った だけど気づいてしまうのだ この身体は自分のものではないのだと この身体はやはり少女のもので 少年が入るには小さすぎた 苦しくなって元に戻ろうにも 少女はどこかへ消えてしまった 何をしても違和感

          【詩】がんばれ少年

          がんばれ少年 君は強くなれる がんばれ少年 君は大人になれる がんばれ少年 君は子どものままでいられる がんばれ少年 君はきっと恋ができる がんばれ少年 君の中にいる男も女もそれ以外も 全て蹂躙できる日が来る がんばれ少年 君は王になれる がんばれ少年 君は君として生きることができる 大人になりたかったらなればいい 子供がよかったらそれでいい 君は名前も性別も身体も 変えてゆく力がある がんばれ少年 君は強くなれなくても 生きる力を持

          【詩】がんばれ少年

          【詩】ひとつになること

          誰も理解してくれない そう言って泣く君のこと ぼくは本当に理解できないよ 当たり前じゃないか 人間なんて死ぬまで 一人なんだから 人間は自分の事しか理解できないよ 他人の事なんてわかるわけがないよ 君は自分の事すら理解してないじゃないか それを他人に求めるのは酷だよ ぼくは本当に君が理解できないよ 君の事きらいじゃないけど 君もぼくのこと理解できないでしょ 当たり前なんだよ 他人だから そんなに理解できない人が 許せないなら別れようか ぼくと君

          【詩】ひとつになること

          【詩】花

          俺は花は嫌いだよ そう言うあなたは この美しい山を殺したいらしい 俺に性愛を向けるお前が気持ち悪い そう言うあなたは やがてこの山に孕まされる運命らしい 己を女性にする山を殺したあなたは 本当の性を手に入れて 身体から溢れる花々の匂いにあてられて おかしくなってしまった あなたはこの花が散るように やがて朽ちてしまうらしい あなたは己の性に戸惑い苦しむけれど 俺は本当の姿を手に入れたあなたを美しいと思う 愛を求め散りゆくあなたは 俺の事は求めてい

          【詩】羊水

          私はずっとあなたを恐れていた どうしてそんなにも私を苦しめるのか わけがわからなかった ただただ、あなたに振り回される人形のような私を 「うまく操れない」と壊そうとしたあなたを 私はどうすることもできなかった 私が選んだ道は、私の羊水であなたを溶かす事 私の子宮を突き刺して、あなたを殺す事 あなたは私を孕ませて 無理やり私を作り変えた あなたを殺すために私は 大切な人も、自分自身も、我が子をも犠牲にした あなたを殺さなければいけなかった そうでないと

          【詩】透明

          透明な君はぼくがあげたぬるい水を 美味しそうに飲んだんだ 透明な君の中に透明な水が 流れ込むのを見てしまったぼくは 何か罰を与えられるだろうか 君の中に金魚が泳いだら綺麗だろうな 透明な君の身体を 自由に泳ぎ回る真っ赤な金魚 ぼくはそれになりたいよ 君の身体をビー玉やおはじきで飾りたいな きらきらしてきっと綺麗だ 君はそれをどう感じるのだろう 透明な君の中にぼくがあげた水が流れ込んで 君はもっと透明になった ぼくの邪な想いすらも 君は透明に変える

          【詩】ささくれ

          ささくれだったぼくの皮膚で 君の皮膚を傷つける 割れて硬くなった唇で 君に口づけをする 君は「痛い」とは言わずに 柔らかい君の身体で包んでくれた 鋭利な刃物で刺すように 君に触れるぼくを 君は許してくれた ぼくの皮膚は割れて血がでて やがて血ですらない膿が出る ぐずぐずになったぼくの身体を 君は洗ってくれたんだ 溶けていくぼくの身体に君は 柔らかな刃物を突き刺して 「なにもしてあげられなくてごめんなさい」と言った 刺された痛みもないぼくは 「

          【詩】ささくれ

          【詩】君の形

          毛布の中で息をする 吐いた息で満たされて ぼんやりしてやっと眠れる あの子は元気にしてるだろうか いつかあの子と約束した 大きくなったら一緒になろうと でもぼくは君の望む姿にはなれない ぼくの心も身体もぐちゃぐちゃで 君の見ていたぼくの姿はなくなっている 君の美しい髪 君の滑らかな肌 君の暖かい体温 今も思い出せるよ、全部 でも、もしかしたら君も あの頃の君ではなくなっているのかも いつか約束した時交わした口づけ 今のぼくにはできないな ぼく

          【詩】君の形

          【詩】君のこと教えてよ

          ねぇ君のこと教えてよ どんなことだっていいから 君はどんなことが好きなの? どんな時嬉しいと思うの? ねぇ君はどうしていつも 悲しい顔でぼくを見るの? ねぇ君のこと教えてよ なんだって受け止めるから 君の趣味は?君の夢は? 楽しい事は?幸せは? 君はいつも黙って ぼくの真似をしてる ねぇ君のこと教えてよ 君の事を知りたいんだ 悲しそうな君の顔 そうさせるものは一体何? 君の不安は何?君の苦しみは何? 君の悲しみは何?君のトラウマは何なの?

          【詩】君のこと教えてよ

          【詩】君の夢を信じてみたかったな

          君の夢を信じてみたかったな 君の事を信じてみたかったな ぼくたちの夢なんて叶うわけがないけど 信じてみたかったな 君の脳みそは大きくなりすぎて ぼくの言葉は届かない 君の肥大化した夢に ぼくは取り残された 君の力になりたかったな 君を応援したかったけれど 君の大きな大きな夢は ぼくには触れられない 君の夢叶ってほしかったな 君の大きな夢… 君の大きくなった脳みそは 風船みたいに萎んでしまった ねぇ ぼくの隣を 歩いてくれるかい? ねぇ

          【詩】君の夢を信じてみたかったな

          【詩】きみの世界

          きみの生きる世界は 鳥が飛んでいるらしい きみの生きる世界は 白い雲が浮かぶらしい ぼくの生きる世界は 鳥も雲もなくて ただ黒い太陽が ぼくの世界を陰らせる ぼくの世界に遊びに来た君は おかしくなって死んでしまった ぼくの世界はそんなにひどいところかい? 君の生きる世界に ぼくも行きたかった 君の世界には墓はなく ぼくの世界にひとつの墓が立った 花もない世界では 墓に供えるものなどなくて 君の墓には毎日 手を合わせるだけだ 君が死ぬような

          【詩】きみの世界