【詩】ささくれ
ささくれだったぼくの皮膚で
君の皮膚を傷つける
割れて硬くなった唇で
君に口づけをする
君は「痛い」とは言わずに
柔らかい君の身体で包んでくれた
鋭利な刃物で刺すように
君に触れるぼくを
君は許してくれた
ぼくの皮膚は割れて血がでて
やがて血ですらない膿が出る
ぐずぐずになったぼくの身体を
君は洗ってくれたんだ
溶けていくぼくの身体に君は
柔らかな刃物を突き刺して
「なにもしてあげられなくてごめんなさい」と言った
刺された痛みもないぼくは
「殺されることすらできなくてごめん」と言って
排水口へ流れていった
君の最後の愛である柔らかな刃物の感触を
どうにか残そうとしたけれど
傷跡すら残せないほどに
ぼくはぐずぐずに溶けてしまっていた
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