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【詩】花

俺は花は嫌いだよ


そう言うあなたは

この美しい山を殺したいらしい


俺に性愛を向けるお前が気持ち悪い


そう言うあなたは

やがてこの山に孕まされる運命らしい


己を女性にする山を殺したあなたは

本当の性を手に入れて


身体から溢れる花々の匂いにあてられて

おかしくなってしまった


あなたはこの花が散るように

やがて朽ちてしまうらしい


あなたは己の性に戸惑い苦しむけれど

俺は本当の姿を手に入れたあなたを美しいと思う


愛を求め散りゆくあなたは

俺の事は求めていなくて


本当に求めていたのは

あなた自身との交わりなのだと気付いた


ひとつになりたいと願うのは

あなたが殺した山も同じで


あなたを襲うあの山は

あなた自身だったんだ


本当は、山と交わらなければならなかった

それは子を作る事ではなく

本当の意味でひとつになる事


山を殺したあなたの足場は崩れ落ち

暴走するように花が咲き乱れた


あなたは崩れ去るしかない

あなたは朽ち果てるしかない


散ったあなたの跡に残った

小さな花びらを口にした時


あなたの感じた苦しみの

一片を知る事ができた

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