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【詩】透明

透明な君はぼくがあげたぬるい水を

美味しそうに飲んだんだ


透明な君の中に透明な水が

流れ込むのを見てしまったぼくは

何か罰を与えられるだろうか


君の中に金魚が泳いだら綺麗だろうな

透明な君の身体を

自由に泳ぎ回る真っ赤な金魚

ぼくはそれになりたいよ


君の身体をビー玉やおはじきで飾りたいな

きらきらしてきっと綺麗だ

君はそれをどう感じるのだろう


透明な君の中にぼくがあげた水が流れ込んで

君はもっと透明になった


ぼくの邪な想いすらも

君は透明に変えるのだろう


君は太陽の光を浴びるときらきら輝く

君は木漏れ日の中を泳いでいる


君を照らす光になりたいな

君を包む影になりたいな


君の中に流れ込んだ水は

いつか濁ってしまうだろうか


透明な君はいつの日か

肉体を得てしまうだろうか


突き刺されても無傷の君は

肉体を得たら痛みを知る


温度を持たない君の身体が熱を帯びる時

ぼくは正気でいられるだろうか


君の中で泳いでみたいな

きっと君はぼくをも溶かす


金魚もビー玉もおはじきも

何もかも溶かしてしまうのだろう


無色透明の君は全てを溶かす悪魔で

君が知るのは清らかな水だけ


何もかも溶かした後に残るのは

美しい君だけなのだとわかった時

ぼくは君に触れたくなった


君の身体に触れたらぼくは

きっと溶けてしまうだろう


だけどそうすればぼくはきっと

君とずっと一緒だ


逃げ水のようにとらえられない君は

ぼくの手をするりと抜けて


日照りの砂漠の中を歩いていった

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