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墓守の男

この墓に眠るのは一人の少女

その少女の宝物と

少女が愛した愛玩動物


丘の上にぽつんと佇むその墓を

俺はいつも守っている


墓石を磨き

花を供え

少女が好きだった宝物を

守り続ける


ある朝ふと目を離した隙に

墓がすっかり暴かれていて

棺の中の大切な

少女の髪飾りを盗まれた


別にいい

もうあれをつける人はいない

別にいい

また誰かに愛されるなら

別にいい


別にいい…


墓を暴かれた事がばれ

俺は死刑を言い渡された

俺に死刑を言い渡したのは

あの髪飾りをつけた少女の母親


断頭台に首を乗せ

首が断ち切れる前に叫んだ

少女の母親の罪を叫んだ

だけど誰にも聞こえなかった


俺の墓が造られた

首と身体が離れたまま

棺に入れられ埋められた

埋められたのは

あの小高い丘の上


俺の墓を守る者

それはあの少女だった

俺の墓には俺の大切な

銀の剣が入っていた


ある朝少女が目を話すと

俺の墓は暴かれて

銀の剣を盗まれた


少女は死刑を言い渡された

少女に死刑を言い渡したのは

あの髪飾りをつけた少女の母親


少女の首を落とすのは

俺の大切な銀の剣

それを振り下ろしているのは

外でもない俺だった


墓を守り

墓が暴かれ

殺され

墓に入り

墓を守られ

墓を暴かれ

人を殺す


俺はいつからこの輪廻にいたのだろうか

どうかもう開放してほしい

どうかもう墓を荒らさないでほしい

どうかもう墓を守らないでほしい

どうかもう静かに朽ち果てさせてほしい

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