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【詩】きみの世界

きみの生きる世界は

鳥が飛んでいるらしい


きみの生きる世界は

白い雲が浮かぶらしい


ぼくの生きる世界は

鳥も雲もなくて


ただ黒い太陽が

ぼくの世界を陰らせる



ぼくの世界に遊びに来た君は

おかしくなって死んでしまった


ぼくの世界はそんなにひどいところかい?


君の生きる世界に

ぼくも行きたかった


君の世界には墓はなく

ぼくの世界にひとつの墓が立った


花もない世界では

墓に供えるものなどなくて


君の墓には毎日

手を合わせるだけだ


君が死ぬような世界で

どうしてぼくは平気だったのだろう



それは多分、きっと

反対側で君が照らしていたからだ


君が生きた世界には

太陽が輝いていたらしい


君が生きた世界には

夜には月が出たらしい


君が底抜けに

明るく生きていたのは


ぼくが陰の部分を

全て引き受けていたからだ



ぼくだって君の世界で

生きたかったな


ぼくだって君の世界で

死にたかったな



君が生きた世界には

君が生きた証はなくて


ぼくの生きる世界にだけ

君が生きた証がある


君を失った世界は

崩れ果ててゆくのだろう


君の世界を失った

この世界もきっと崩れ果て


君とぼくの生きた証は

残らないのだろう

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