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【詩】肉体

大人になる事を恐れた少女は

自らの身体に刃を突き刺した


死にそびれてしまった少女は

己の中にいる少年の姿を見た


少女は少年に恋をして


「あなたにこの身体をあげる」

そう言って隠れてしまったのだ


ずっと隠されて生きていた少年は

嬉々としてその身体を乗っ取った


だけど気づいてしまうのだ

この身体は自分のものではないのだと


この身体はやはり少女のもので

少年が入るには小さすぎた


苦しくなって元に戻ろうにも

少女はどこかへ消えてしまった


何をしても違和感があるこの身体で

生き続ける事は難しく


少年もまた命を絶った


残されたのはからっぽの身体

そこに入るのは行き場のない魂たち


その魂たちにもこの身体は扱いきれず

身体は捨て去られてしまった


魂がなくなった身体の心臓は

今でも血液を巡らせている


やがて身体自身が魂を生んだ

それは獣のような野蛮な魂


好き勝手生きるその姿を

誰もが醜いと罵った


何の役にも立たず

人に迷惑をかけ

誰からも嫌われ


そんな獣のような魂は

案外生きやすそうにしていたけれど

それもまた長生きはできなかった


残された身体はまた

新たな魂が宿るのを待つ

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