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小説・「アキラの呪い」

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「俺にはろくでなしの姉が一人いる。姉は俺の呪いであり、俺は姉の呪いになりたい」 姉の自殺未遂をきっかけに変化する義理の姉と弟の危うく奇妙な関係を描く。
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#連載小説

小説•「アキラの呪い」(13)

小説•「アキラの呪い」(13)

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 朝飯は予定通り目玉焼きにウィンナーを添えた。両親の分も合わせて作ってしまう。二人とも今日まで休みで明日から仕事らしい。昨日そこそこ呑んでいたから、もしかしたらなかなか起きてこないかもしれない。食パン三枚を焼きながら、一杯だけコーヒーを淹れる。姉は苦味を受け付けない。それでかつては毎朝甘いホットミルクを飲んでいた。朝食のセッティングを終えると、俺は2階へ「姉さん。朝飯食

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小説・「アキラの呪い」(11)

小説・「アキラの呪い」(11)

前話はこちら。

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予告通り帰省した姉をみて、俺はほっとため息をついた。正確には、その手首を観察していた。最近彼女のリストカット跡はかなり薄くなってきている。それでもよく見れば分かってしまう程度には残っていた。今、傷はリストバンドに覆われて見えない。どうやら隠す気はあるらしい。胸を撫で下ろしながら、ふと疑問が芽生えた。なぜこんな心配を俺がしているのだろう。バレて困るのは姉さんじゃないか

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小説・「アキラの呪い」(9)

小説・「アキラの呪い」(9)

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間話 「特異な関係」

 歩と初めて話したのは、小学校へ入学したその日だった。あいつは水無瀬歩で俺は槙原拓人だったから、席順が前後だったんだ。知り合ってすぐの印象は「すごい奴」だった。
 その日、配布されたプリントを前から後ろに回して配ると、一枚足りなかった。その事実に俺が気がついたのは、目の前の歩が手を上げて「おれのぶんがない」とでかい声で言ってからだった。本来なら、一番後ろの

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連続小説・「アキラの呪い」(8)

連続小説・「アキラの呪い」(8)

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 晶が高校を卒業してから俺が高校を卒業するまでの4年間は、俺達に一番距離があった時期だと言える。物理的にも精神的にも。俺が高校に入学してからは、特にそうだった。同じ家にいても、ほとんど会話もしないし、なんなら目も合わせないほどだった。なぜなら晶が、はっきりと俺を避けるようになったからだ。反抗期だったんだろうか。あれは。それまでもそれほど交流があったわけではなかったが、こ

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連続小説・「アキラの呪い」(7)

連続小説・「アキラの呪い」(7)

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 ところで校内での晶との交流は、俺の対人関係にも変化を与えた。平凡な奴に「ヤバい奴とやり合えるすごい奴」というステータスが追加されたのだ。だからなのか、幼なじみの拓人とこんな会話をしたりもした。
 「お前、噂になってんぞ」
 ある帰り道、拓人がひそひそと話しかけてきて、俺は怪訝に片眉を上げた。
 「はあ?」
 「お前の姉貴の…何だっけ名前…異名はすぐ思い出せるんだけど」
 口を歪

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連続小説・「アキラの呪い」(6)

連続小説・「アキラの呪い」(6)

前話はこちら。

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 中学生になると、俺は「あの」水無瀬晶の弟として扱われた。中高一貫校だったから余計にそういう目で見られた。小学校でもそんな感じだったからむしろ俺としては懐かしさすらあった。そもそもその程度のことで動揺してちゃ、あれの弟は務まらない。なので入学してから一ヶ月ほどは、周囲に水無瀬歩がいかに平凡な奴かを知らせることに注力した。まあ、実際俺は平凡な人間に過ぎないのでありのままで

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連続小説・「アキラの呪い」(5)

連続小説・「アキラの呪い」(5)

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第二章 「晶と俺」

ろくでもない姉との出会いを俺ははっきりと思い出せない。気がついたら晶は俺の姉で、俺は晶の弟だった。だから10歳の頃、親から実はお互い連れ子なのだと聞かされるまでは、普通の姉弟なんだと思ってた。けど、知らされた時もあんまり驚かなかったんだよな。だってさ、晶と俺は全然似てない。性格も見た目も全部。だから違和感みたいなものは昔からあったんだろ、多分。あいつと

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連続小説・「アキラの呪い」(4)

連続小説・「アキラの呪い」(4)

↑前話はこちら。

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 自殺現場を目撃した時の気分を思い出して、その場で吐いてしまいそうになる。体が揺らぎ、手にしたビニール袋を取り落としかけた。俺はいつまで平常を取り繕えばいいんだ?…永遠に?自分の弟がこんな気分でいることをあの人でなしが知ったところでなんとも思わないことはわかっていた。単に俺が知られたくないだけ。これは自己満足だ。
『あの日姉の住む安アパートへ向かわなければこんな気分を

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連続小説・『アキラの呪い』(1)

連続小説・『アキラの呪い』(1)

第一章 「水無瀬晶の弟」

 俺の姉について話しておきたい。
 水無瀬晶は厭なやつだ。無神経で傍若無人でニコリとも笑わない。性悪な女だ。
 姉といっても、血は繋がっちゃいないんだけど。ただうちの母親とあいつの父親が結婚しただけ。よくある話だ。晶と俺とは血が繋がっていない。ーーーそれを俺は喜ぶべきなのかもしれない。あんなに生きづらそうにしてる義姉を見ていると余計に。厄介な性質を、もしも俺も受け継いで

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