フォローしませんか?
シェア
栗原ちひろ
2019年1月25日 21:05
「みはる~、助けてぇ、殴られた」「うん」 僕は小さくうなずいて、薄闇の中で光る液晶画面を見つめている。 安いノートPCの画面上にびっしり並ぶ文字の列。そこで展開するのは、この世で僕しか見たことのない、血湧き肉躍る探偵物語だ。 しかも今はとってもいいところ。 探偵が真実に近づいたかと思いきや、犯人の逆襲に遭ってピンチになるところだ。 そりゃあもう、指も胸も躍りっぱなしですって。
2019年1月25日 20:54
大まかに言うと東京のどこかの場末、バーの居抜き物件に住み着いたふたりの男の子が、探偵と助手という設定を使ったり使わなかったりしてダラダラ暮らすだけの短編連作です。設定だけ把握していれば、どれも一話だけで読めます。キャラ設定砂倉渓一(24)……さくらけいいち。探偵。前髪長めの黒髪、長身。手足が長く視線が鋭いので喧嘩に強そうに見えるが、実際には切羽詰まるとすぐ気絶する。失踪癖と流血癖がある。三
2019年1月11日 20:31
遺産管理人、ジャベール氏の目は死んでいる。おそらく、死んだ人の残したものばかり見つめているからだろう。「一度、ご自身でご覧になったほうがいいと思います」そう言って私を見つめてきた彼は、まるで夏場に路上で売られている魚みたいだった。窮屈なだけの黒いスーツは毛羽だって艶がなかったし、その隙間から見える痩せこけた肌の表面はすっかり腐敗の白い膜に覆われてしまっていた。もちろん実際は私の目が彼