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中編

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少し長めの怪談です。
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#心霊

線路脇の廃屋にて

線路脇の廃屋にて

 ある路線のすぐ脇に一件の廃屋がある。周りにある家々には住人がいるが、そこだけは長いこと誰も住んでおらず、解体される事もなくただ建っている。市や町が解体しようと試みたが、何故かことごとく失敗してしまうと言う。
 そこにはある女性の霊が出るのだそうだ。
 その霊は決まった時間になると二階の窓際に現れ
「ぎゃーーーーーー!!!!!」
 と叫び声を上げて倒れこむ。それから暫くして階段を這って降りて来て、

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彷徨える夕暮れ【怪談】

彷徨える夕暮れ【怪談】

「良い子にしないと夕暮れがやって来るよ。夕暮れはお前の影を飲み込んで、終いにはお前も飲み込んで、綺麗さっぱり消し去っちまうんだ。そうなるともう誰にも会えない、誰にもだよ。ママにもパパにもばあばにも会えないんだ。だから良い子にしてなきゃいけないよ」
というのが、幼き私を叱る時の祖母の決まり文句でした。何で怒られてしまったのかははっきりと思い出せませんが、初めて聞かされたのが確か年長組だったので言って

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ざくっ【怪談】

ざくっ【怪談】

私が住んでいる岡部マンションは築27年と地方な割に新しく、ファミリー向けな事もあって子連れの入居者が多い。近くには隣接する小中学校もあり、夜でも煌々と街灯が照らし続けているために、体感ではあるが、犯罪の数も少ないように思う。近所の噂好きのママ友たちに聞いても「だいぶ前に酔っ払いが道に飛び出した」くらいしか話に上がってこない。それほど平和な街だった。

このマンションに決めたのもその安心が理由だった

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人気のアパート

これは大学で出会った友人の話です。

県内にある大学へと進学して間もなく、サークル内で友人が出来ました。休日にはよく買い物に出掛け、互いの家で飲み明かすこともあるくらいに仲良くなり、親友と言っても過言ではありませんでした。

その友人は元々実家暮らしなのですが、何を思い立ったか一人暮らしを始めると言い出しました。別に止める理由も無かったので、そこそこに部屋探しを手伝いつつ、あーでもないこーでもない

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お化け屋敷

私が学生だった頃の話です。縁あって恩師の紹介でとあるバイトをする事になりました。

それがお化け屋敷のバイトでした。

昔ながらの博物館の一角にあるイベントスペースを改造して学校に見立てたセットを創り、そこに出るお化けの役、という事でした。主に二人でセットの仕掛けを回しつつ要所要所でお化けとして出てお客さんを驚かすバイトで、企画自体がその博物館や主催者含め初めての試みだったそうです。
お客さんはた

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地下鉄

 高校二年の夏、友達に連れられ茹だる暑さの街中を歩き回り、無駄に冷房の効いたビルを行き来したせいもあって気分が最高に悪くなっていた。
 元はと言えば私が買い物に行きたいと言い出したのだが、途中で話題のジュースを手に入れる為、炎天下の歩道で待っていたのも良くなかった。案の定日射病にかかり、買い物は中断。涼しい店内で休んだおかげである程度回復したものの、友達と帰る方向が逆だったので一人で帰る他なかった

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海浜公園【怪談】

海浜公園【怪談】

これは私が中学校にあがり、新しく出来た友人達と近くの海浜公園まで遊びに出掛けた時の話です。
家から公園までは2駅と程近く、海開きに合わせて出来たレジャー施設の事もあってそこに行くと決まりました。何処まででも続きそうな海岸線と小さい子供も遊べる遠浅が目玉で、毎年と言っていいくらいテレビで報道されていました。
私達は海に着くなり必要無さそうな浮き輪とカラフルな水鉄砲を取り出して、宿題も学校のあれこれも

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