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海浜公園【怪談】

割引あり

これは私が中学校にあがり、新しく出来た友人達と近くの海浜公園まで遊びに出掛けた時の話です。
家から公園までは2駅と程近く、海開きに合わせて出来たレジャー施設の事もあってそこに行くと決まりました。何処まででも続きそうな海岸線と小さい子供も遊べる遠浅が目玉で、毎年と言っていいくらいテレビで報道されていました。
私達は海に着くなり必要無さそうな浮き輪とカラフルな水鉄砲を取り出して、宿題も学校のあれこれも忘れ笑いでお腹が痛くなる程遊びました。


日が傾き始める頃には流石に疲れてしまい、プカプカと波に揺られながら学校や惚れた腫れたの恋模様について、あれやこれやと論じていました。女3人寄れば姦しいと言いますが、7人もいれば最早暴走族の様です。
そうやって白熱する最中、隣のクラスの子が突然
「あれ、あれってなんだっけ」
と言い出しました。突然あれと言われても分からないので、どれ、と聞き返すと遠くを指差し、またあれと言いました。昼に比べれば多少疎らにはなってきたものの、それでもすぐに数えられないくらいの人の数。特徴を言わなければ全く分かりません。
「ほら、あれ、スコップとかでアサリとか取るやつ」
「なんだっけ」
「何狩り?」
「潮干狩りでしょ」
「あー、それそれ」
答えが出た事で更にキャッキャと盛り上がる私達。その潮干狩りの人が分かろうが分かるまいが、話のネタは何でも良かったのでしょう。疲れも相まって、しょうもない事でも時間を忘れ笑ってしまいます。

いつしか太陽の端が水平線に被り始めた頃、またしても隣のクラスの子が
「あれ、潮干狩りの人こんな近くにいたっけ?」
と言い出しました。私達は辺りを見回しましたが、どこにも見当たりません。と言うより、指す方向には誰もいないのです。人も減り、海に入っているのは私達とその他数人。その数人もレジャー施設がある付近にしかいません。
「えー、何、見えてんのー?怖ー」
と私はおどけました。隣のクラスの子はムードメーカーな所があるので、ふざけているのだとしか思えませんでした。しかし彼女は居ると言い張るのです。

茶摘み衣装の男女数人が並んでこっちに歩いてくる。

そう、言うのです。
私を含めて他の5人にも見えてなどいません。本当に居るのならそんな目立つ格好を見逃すわけがありませんし、周りの人達の話題に上がっているのを耳にしてもおかしくないと思うのです。
やっぱり盛り上げる為の嘘か……
「ちょっと!本当にいるんだってば!」
しつこいくらいに嘘をつき続けるその子を他所に、私達は海を上がりました。疲れもあって付き合うのが面倒くさかったのもありましたが、時間も時間ですし、タイミング的にも丁度良かったので 帰宅する流れになりました。
「楽しかったねー」
「今度どこ行くー?」
「てか明日も遊ぶー?」

なんて青春らしい青春を送ろうとしていた時でした。

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