果物時計草

中堅に差し掛かろうとしている臨床心理士(公認心理師)です。仕事の上での体験を整理する場…

果物時計草

中堅に差し掛かろうとしている臨床心理士(公認心理師)です。仕事の上での体験を整理する場として、スマホの音声入力でつらつらと書きます。そのため、知識というよりは、体験ベースの内容が多いです。

最近の記事

職場での関わりについて

職場で心理職同士が関わる際、ある種特有の難しさが生じることがあります。これはもしかしたら、職種に限らない話なのかもしれません。しかし、ある面において心理職特有の関係の難しさもあるのだと思います。 例えば、自己愛の問題。自分自身に固執し優先しようとをする自己愛は、誰しもが持っているものです。ただし、心理職の場合、仕事に対する責任は大きい一方、その良し悪しの見極めが難しく、それが仕事へのこだわりに転化する人もいます。 ある程度、自分自身のことを適切に感じ取り、適切な自己評価が

    • 見立てについて思うこと

      スクールカウンセラーとして勤務する時、児童の見立てを求められることがよくあります。たいていは断片的な情報から、推測を交えながら見立てを行うわけですが、その際にある程度「当たりをつけていく」必要がある。 つまりある程度妥当性の高い見立てを行う。その際ある程度精度が高いイメージを持ち立てる必要があるわけだけれども、この際に自分自身の臨床経験の蓄積が役立つことが多い。 もちろん、例えば保護者や教員に対して伝える際には「あくまで想像まじにではありますが」などと、言葉を添えて伝える

      • セクシャリティの見立てについて⑤

        セクシャリティについてカウンセリングで扱う場合は、大きく分けて二つに分かれるかと思います。1つは、セクシャリティそのものについて悩みを抱えている場合。もう一つは、セクシャリティについて二次的な悩みを抱えている場合。 セクシャリティについての悩みは、トランスジェンダーなのか、ホモセクシャルなのか、バイセクシャルなのか、あるいはアセクシャルなど他のセクシャリティなのかによって、大きく異なります。 主訴として明確にクライエントが訴えているならば、そのまま率直に取り上げるのが良い

        • セクシャリティの見立てについて④

          カウンセリングでセクシャリティについて触れる場合、自分自身が様々な可能性に開かれていることが重要です。そのためには知識が必要であり、また自身の内なるバイアスを自覚する必要があります。 あえて簡潔に言うのであれば、「わかったつもりにならない」。人間誰しも、わからないことに囲まれながら生きています。普段はそれを自覚しないことで生きやすくもなっています。他人の内面、自然現象、自分自身の事。家電の仕組み一つ取っても同様です。わからなさと共に生きるためには、わからなさに気づかないこと

        職場での関わりについて

          セクシャリティの見立てについて③

          セクシャリティを見立てる練習には、自分自身のセクシャリティについて理解を深めること、自分自身のバイアスについて気がつくことが、準備段階として挙げられます。 自分自身のセクシャリティについて、と言うことで考えると、例えば自分のジェンダーはどのようなものか。性的嗜好はどのようなものか。ジェンダーをどのように表現したいか。身体的な性はどのようなものか。 いくつかの視点から自分自身を捉え直し、自分自身もグラデーション中に位置することを確かめる作業が有用です。様々な可能性に自分が開

          セクシャリティの見立てについて③

          セクシャリティの見立てについて②

          セクシャリティに関する感覚は、本質的に本人にとっては自明なものです。様々な感覚や体験からそこに意味づけがなされます。性別違和のように不快感を伴う場合もありますが、基本的に本人にとっては「なじみのある感覚」だと言えます。 そのため、仮に支援者自身のセクシャリティと著しく異なったり、支援者の価値観と大きくズレがあったとしても、本人にとってはそれが自然な感覚だといえます(快不快は別として、です)。 そのため、セクシャリティそのものが主訴となる事は基本的にありません。主訴として浮

          セクシャリティの見立てについて②

          セクシャリティの見立てについて①

          カウンセリングを行うときに、1つアセスメントの視点として持たなければならないものがあります。それはセクシャリティという観点です。これはいくつかのポイントがあります。 1つは、誰しもがこのセクシャリティの、グラデーション状の広がりの中に位置すると言うことです。 例えばセクシャリティについて具体的にアセスメントする際、性的指向、性自認、生物学的性、性表現といった、アセスメントの軸があります。 性的指向はどのような対象に性的欲求や関心を抱くか。性自認は自分がどのような性別だと

          セクシャリティの見立てについて①

          SVについて③

          費用的な問題はありますが、SVはやはり必要なように感じます。自分自身もちょくちょく受けていない時期があり、その時期は「果たして自分の支援がどの程度適切なのか」と、確かめる足場のないような感覚を覚えます。 でも、SVで何が得られているのか。 代わりの手段はないのか。 SVで得られるものについてまず浮かぶのが、他者の視点を獲得するということ。カウンセリングについて同業者と話していると「○○先生の言葉が降りてきた」みたいなことを聞くことがあります。 つまり、スーパーバイザー

          SVについて③

          SVについて②

          スーパービジョンについて、引き続き考えを言葉でまとめてみたいなと思います。 先日まとめた内容の中でも、受けられる地域さみたいなものがある、ということを感じました。関東近郊などの都市部では、比較的研修機会は多くあります。選択肢も多いです。 最近ではこうした地理的な壁はオンラインの手段が解消してくれつつありますが、やはりオンラインと対面となると、扱える情報量に差が生じる。 また、費用的な問題はかなり大きく、SVがサービスとして成り立つためには、ある程度の費用が必要となる。マ

          SVについて②

          SVについて①

          臨床心理士公認心理士といった支援職は、自分自身の支援業務について指導者に話し、支援の姿勢や関わり方、具体的技法などを学ぶことが推奨されます。これをスーパービジョン(以下SV)と言い、多くの場合は有料で、大体5000〜15000円位の相場を見聞きします。 SVを受けるとして、誰に指導を受けるか、どのように受けるかということが、大きなネックとなります。SVは単に知識や技法を伝授する場ではなく、支援者自身の内面を取り扱わざるを得ない。そこに焦点を当てるかはそこで扱われる内容の質や

          SVについて①

          キャリアについての徒然

          キャリアについて、徒然と考えたこと。 自分自身は仕事のモデルと言うものがない。それがかえって自由でもあるけれども、自由であると言う事は不安定でもある。不安定だからこそ安定を求めようと思考するけれども、いくら求めても安定など訪れる事はないし、まやかしみたいなものでもある。結果的に、倒れるような不安定さで前へ前へと進む形になる。 臨床心理士は、歴史が比較的新しいのもあり、キャリアのお手本となるような人物があまりいない。おそらくは、カウンセラー自身が自分のことを語ると言うのも、

          キャリアについての徒然

          フィードバックの重要性

          11月頃から読み始めていたトラウマに関する本を、ようやく読み終わりました。「身体はトラウマを記録する」。厚い本ではあったのですが、何より内容が濃く、自分の中に落とし込みながら読むのに時間を要しました。 トラウマに関する本なのですが、心と体のつながりや、それが癒えていく過程を丁寧に描いているような本でもありました。 トラウマは生命や生活に重大な影響を及ぼす出来事から、恐怖や、不安、恥といったような感情が適切に処理されず、神経系のレベルで学習され、反復されている状態だと、恐ら

          フィードバックの重要性

          カウンセリングの効果は何によるのだろう

          この最近、カウンセリングの効果が何によるものなのかと言うことを考えることが多いです。 臨床的な体感として挙げられるのは、何か憑き物が落ちるような、感情体験がカウンセリングの中で、得られた時です。この感覚は、自分自身の個人分析や教育分析にも当てはまります。 1人で歩きながら考えたときに、そういった感覚が得られることもありますが、何と言うのか、時間がかかる印象を受けます。孤独な作業で、伴走者や理解者がいないこの作業は、向き不向きがあります。 ポリヴェーガル理論では、どうやら

          カウンセリングの効果は何によるのだろう

          教育分析について③

          教育分析を受けて感じるのは、自分自身のカウンセリング体験としても、非常に役立っているという点です。 支援者は、常に純然たる支援者にはなりえません。支援者の当事者性と言うものが話題となりますが、支援者も自分自身の生育歴から培ってきた、パーソナリティーや病理を抱きながら生きています。 自分自身を知ると言う事は、支援のみならず、他の職種との連携や、スーパービジョンの受け方、職場での働き方など、多岐にわたって影響を及ぼします。 そうした、自分自身に向き合う体験を、カウンセリング

          教育分析について③

          教育分析について②

          最初の頃の、カウンセリングとして先生からサポートを受けていた時は、かなり先生も支持的にこちらに寄り添い、感情を受け止める関わりをしていたように思います。 当時の主な内容としては、その時起きていた職場との関係性が主なテーマでした。職場の構造と、自分自身の性質との相性が非常に悪く、当時は噛み合っていませんでした。 おそらく今当時の職場に戻ったとしても、前よりはうまく振る舞えるかとは思いますが、おそらく似たような葛藤は抱えるでしょう。 そうした意味で、当時の自分は自分自身の内

          教育分析について②

          教育分析について①

          年明け初の教育分析に行ってきました。月1回通っていて、かれこれ10年以上通っています。自分にとってのその意味、について、一般的な意味(と言ってもそもそもニッチなモノですが)について、言葉でまとめてみたいと思います。 そもそも始めたきっかけは、職場で勧められででした。当時支援職としての佇まいに好感が持てる先輩がいて、その方からの紹介。 しかし、そもそも職場の性質と自身の性質が合わない中で紹介されたので、少しこじれた形で教育分析に繋がった形でした。 今思うと、その点を先生は

          教育分析について①