セクシャリティの見立てについて⑤

セクシャリティについてカウンセリングで扱う場合は、大きく分けて二つに分かれるかと思います。1つは、セクシャリティそのものについて悩みを抱えている場合。もう一つは、セクシャリティについて二次的な悩みを抱えている場合。

セクシャリティについての悩みは、トランスジェンダーなのか、ホモセクシャルなのか、バイセクシャルなのか、あるいはアセクシャルなど他のセクシャリティなのかによって、大きく異なります。

主訴として明確にクライエントが訴えているならば、そのまま率直に取り上げるのが良いでしょう。主訴として書けているということは、そのこと自体がアセスメントの材料にもなります。しかし、多くの場合は主訴に記されません。根底にあるのは、その人にとって「普段の日常の、当たり前な感覚」だからです。

本人が自発的に話す雰囲気ではなければ、慎重に取り扱わなければなりません。無理に引き出すの不本意なカミングアウトにもつながり、不信感や傷付き体験にもなりえます。また、わかったような気配りや、誤った知識をもとに確かめていっても、やはりそれは不誠実でしょう。

もし確かめるなら、人それぞれに体感や経験の背景は異なること、またそれを教えていただくと言う姿勢が土台として必要かと考えられます。そして、そのような姿勢は、細かな話しぶりや態度によっても現れます。安心感や安全感を作り出すことが、支援の土台となります。

例えば、社会資源としてパートナーについて尋ねるとしても、彼氏や彼女と聞くのではなく、「パートナー」や、「お付き合いしている方」のように、中立的な言葉で聞くのが良いでしょう。

また、自尊心にも関わる質問となりますので、直接ではなく「普段の暮らしで、支えてくれる人や、いざという時助けてくれそうな人で言えば、どんな方がいるでしょう」というように間接的に聞く方が、聞かれる側の負担は少ないです。確信に直面させられず、どのように回答するかを選ぶ権利が与えられるからです。

また、より直接的にであれば、「これはもし答えたくなければ答えなくても全く構わないのだけれども、今お悩みの事について、もしかしたら恋愛に関することや、いわゆるセクシャリティに関することがもしかしたら関わっているのかなぁ、なんて想像をしまして。その辺は、どのように思われたりくださりますか」というように、むやみな直面化を避ける工夫も出来るでしょう。

もし確かめるとして、カウンセラー自身が、どの程度の理解があるかを示すのも一つ良いでしょう。セクシャリティについて、どのようなトレーニングを積んだのか、これまで相談を担当したことがあるか等。しかし個別性の高いものですので、「人それぞれに全く同じ人はいない」という前提で、「教えていただく」姿勢でいる方が、信頼関係をむしろ構築しやすくなるように感じます。

セクシャリティに関連した二次的な悩みについても、大きな取り扱いの違いは無いとも思われます。しかし、「悩んではいるがカムアウトしたくない」という場面もあり、その場合、何かパズルのピースが足りないような相談のような展開になったりもします。

このように整理してみて思うのは、他の主訴とも大きな違いは無いということです。しかし、より全生活史にわたるセンシティブな内容でもあり、また傷つき体験にもなりやすいテーマです。加えて、本人の主観的感覚の要素が非常に大きく、「言わなければわからない」と言う不可視性も特徴としてあります。

しかし、本質的には誰しもにも当てはまる考え方であり、ある程度の支援経験を積んだ方なら、老若男女問わず、セクシャルマイノリティの方を担当したことがあるはずなのです。もっと広く言えば、対人関係全般で、必ず一定数の、セクシャルマイノリティの方と関わったことがあるはずなのです。

学校のクラス、会社の同僚、友人、知人、近所の人、などなど。

ただ、クライエントが支援の中で言わなかっただけです。しかし、言わなかった=支援として不十分だった、ということではありません。言わずとも安心感をクライエントが得る事はできます。

そして、セクシャルマイノリティの皆が皆、悩んでいるわけではありません。それはヘテロセクシャルや、シスジェンダーの方でも同じではないでしょうか。

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